クラウドファンディング開始、目標は1000万円
そうは言うものの、もちろんライブハウスの立ち上げは容易なことではない。しかも会社の経営は、理想のみでは成立しないことも事実。大きな音を出せる物件を確保する必要があるし、防音工事や音響機器の購入も必須。他業種と比べても、自ずと開業資金は高額になっていく。スガナミが立ち上げるLIVE HAUSの場合は、開業資金として5000万円が必要で、金融機関からの融資では足りない部分を補うべく、2月25日にCAMPFIREでクラウドファンディングをスタートさせた。
「大きな資本の後ろ盾がない僕らにとって“音が出せる場所を作る”というのは、背筋が凍るほどハイリスクなことだと思い知らされました。ライブハウスを立ち上げるにあたって、防音工事と音響設備の導入はマスト。街と共存するためにも近隣住民や周辺のお店から理解を得ることが大切で、そのためにも防音はとても大事なんです。近隣トラブルは箱が潰れる大きな要因の1つですから。それと今の時代、音量や音響にこだわらなければライブ自体はどこでもできる。でもわざわざお金を払って箱でイベントをやるのって、音のよさを求めているからだと思うんです。その意味でも、やはり音響にはこだわりたいんです。
LIVE HAUSは、店のWebサイトで示したステートメントの通り、相場よりもかなり安い料金設定でレンタルをすることにしています。あのステートメントを公開した際、『安い理由は音響が弱いからでは?』といった懸念の声も上がりましたが、僕らはその不安を払拭できるような機材を備えるつもり。そのためにCAMPFIREで1000万円募ります。ただ箱を作るだけなら今の資金でも問題ないのですが、満足のいく設備にすることが重要。この記事を読んで興味を持っていただけたら、ぜひCAMPFIREのページも覗いてもらえるとうれしいです」
ライブハウス / クラブという場所の引力
内装工事の打ち合わせや資金調達など、LIVE HAUSのオープンに向けて忙しない日々を送るスガナミ。彼に、独立するとしても、ライブハウス以外の選択肢はなかったのかと尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。
「人が集まれる場所ってすごく大事だと思っていて、例えば去年、TRHEEでは台風の直後にチャリティを目的としたイベントを企画しました。お客さんも音楽を楽しみながら、気持ちよく募金に参加していただけていたと思う。そういうときに音楽の力というか、音楽が共にあることのよさを感じるし、こんなスピード感で人を集めることができるのって、場所があることの強みなんですよね。あとは単純に、アーティストが時間をかけて作った作品を見たり聴いたりするのが好きなんです。万人受けはしないかもしれないけど、濃い100人に刺さる音楽は確実にあるし、その価値に差はないと思います。そういったアーティストの活動の後押しをしたいという気持ちは強いですね」
THREEを離れて
そういうわけで、スガナミは2019年12月にTHREEを辞めた。それから約2カ月、独立を決断したことについて一切の後悔はない。ただ、辞めたからこその気付きはある。
「退職して3日後に気付いたことがあって、THREEでは自分から会いに行かなくても会いたい人が来てくれた。毎日誰かしらが顔を出してくれたり、イベントをやってくれていたんだなって。それはとても特別で幸せなことだったんだなと感じました。今、店の準備期間中で自分が会いにいく立場になって、友達がどこかでパーティをやっていると救われます。自分もそこへ遊びにいけば友達に会える、音楽を楽しめる。大人になって毎日友達に会えるなんて奇跡じゃないですか。すごくぜいたくな仕事だとあらためて実感しています」
記事公開日現在、オープンすることこそ決まってはいるものの、内装や防音の工事など、目の前にはやらなければならないことが山積みの状態だ。
「いざ独立に向けて動き出してみると、『ライブハウスやクラブが1つの街に集中する理由』とか『ホワイトだブラックだということで簡単に切り分けることができないこの業種の特殊性』とか、いろいろわかってきますね(笑)」
次回以降は頓挫したプロジェクトや物件探し、資金調達についてなどを詳しく聞いていく。
スガナミユウ
自身のバンドGORO GOLOでボーカリストを務める傍ら、レコードディレクターやイベントの企画などを行い2014年より東京のライブハウス下北沢THREEに在籍。2016年に店長に就任すると、チケットノルマ制の廃止、入場無料イベントの定期開催など独自運営方針で店を切り盛りしていく。2019年12月末をもってTHREEを退職。現在は自身が発起人の1人であるライブハウス / クラブ・LIVE HAUSのオープンに向けて準備に勤しんでいる。
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Gotch / Masafumi Gotoh @gotch_akg
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