現在、メンバーの山本啓太(B)が自ら監督を務め、バンドのドキュメンタリーフィルムを製作している台風クラブ。「身も心も」は映画自主上映貫徹のための“カンパ作品”としてリリースされ、デジタル版のみが500円から、ソノシート&デジタル版が1500円からという“カンパ制”の販売価格が設定されている。販売場所は東京・武蔵野公会堂で行われる単独公演と、レーベル・NEWFOLKのBandcampのみ。
「身も心も」リリースに際して、山本による手記と、ドキュメンタリーフィルムの特報パート2が公開された。手記はキュメンタリーフィルム製作に至るまでや撮影が始まってからの苦悩が赤裸々につづられ、「少しだけ、僕のわがままをどうか、許してください。完成した映画を、みなさんに見てもらいたいです。その日を考えながら、今も編集を続けています」と締めくくられる。ドキュメンタリー映画は来年公開予定。上映館、上映場所は随時募集されている。
なお、台風クラブは同日8月23日に新作「京都市南区」を配信とアナログでリリースする。
【特報②】台風クラブ ドキュメンタリーフィルム
台風クラブ「身も心も」収録曲(片面プレス)
SIDE A / 身も心も
台風クラブ「京都市南区」収録曲
SIDE A / 京都市南区
SIDE B / 遠乗り
「身も心も」山本啓太 手記全体
台風クラブをはじめて10年が経った。
バンドのドキュメンタリーを撮りはじめたのは5年前のこと。
僕はずっと、フィクション映画に憧れていた。でも、毎日自分にいいことなんてなくて、他人の現実に目を向ける余裕もなかった。だから、ドキュメンタリーはあまり好きじゃなかった。
自分で書いた企画や脚本では、商業映画は撮れない。
知名度も受賞歴もない自分に、お金を出してくれる会社なんてなかった。
「才能を信じて賭けてくれる人が現れるかもしれない」──そんな淡い期待も、結局は甘かった。
そもそも、自主でもなんでも、手段を選ばず撮っている人にしか、そういう運はまわってこないと悟った。
だからこそ、自分にはもう自主制作しか道が残っていない。
でも、日々の仕事と生活に押しつぶされて、自主制作を続ける気力さえ残っていなかった。
映画、MV、ライブ映像、CM。何を作っても、監督として目に見える評価を得ることはで きなかった。
「評価なんて気にするな」と言われることもあるけれど、僕はこれで飯を食いたい。
もちろん、お金を気にせず自主制作を続けることもできた。
でも、それは僕が憧れた映画とは違っていた。
どこか中途半端で、気持ちが乗り切らへんし、
もっと、身も心も削り尽くすような制作がしたい。
これは僕の人生で、最後までやりたい仕事だから。
30代半ばになって、もう映画監督としてのキャリアは詰んでるんだって自覚もあった。
だから、自分のこと、自分のバンドを撮るしかなかった。
本当は一番したくなかったこと。でも、それしか僕には映画を撮る方法がなかった。
本来なら、2年前のツアーで撮影は終える予定だった。
キネマ倶楽部でのワンマンの前に、「身も心も」は完成していた。
映画のために1曲、新しく作ってほしくて、石塚に頼んだ。
でも、映画は終わらなかった。
あれから2年。いまだに撮影は続いている。
映画の“結末”が見えず、どうしても終わらせることができなかった。
「バンドはまだ続く」──そんな安っぽい言葉では終われなかった。
いつまで続くかもわからない危うさもある。
人間の人生の一部を描くのに、「続くからいい」で片付けるのは、真摯じゃない。僕は、そういう人にはなりたくなかった。
最近は気を病み、体調も崩した。仕事も休んだ。
それでもようやく今、完成に向けて準備が整った気がしている。
作品は、人に見てもらって初めて完成すると思っている。
これまで未完で終わった作品たちや、ノートの中で眠ったままの企画たちには、本当にごめんなさいという気持ち。
だからこそ、これからの人生でもっと映像作品をかたちにしていきたい。
このドキュメンタリーは、その第一歩になると信じている。
映画をつくるには、どうしてもお金がかかる。
今回のソノシートの売上は、その一部を映画の制作費にあてさせていただきます。
少しだけ、僕のわがままをどうか、許してください。
完成した映画を、みなさんに見てもらいたいです。
その日を考えながら、今も編集を続けています。
2025年8月4日 山本啓太
関連人物
音楽ナタリー @natalie_mu
台風クラブ新作「身も心も」リリース
映画自主上映の“カンパ作品”として
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「僕のわがままをどうか、許してください。完成した映画を、みなさんに見てもらいたいです」
山本啓太の手記と映画特報も公開
#台風クラブ https://t.co/aeKNMQgvl4