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bar bonoboのDJブース。

レポート

小箱クラブの現状 第2回

警察の立ち入りを経て、bar bonoboのオーナーは思う

クラブカルチャーから改正風営法まで

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古い一軒家を改装した独特の佇まいで、周辺の景観の中で異彩を放つ東京のミュージックバー・bar bonobo。連日DJや音楽好きが集い朝まで賑わいを見せるこの店は、春に警察から特定遊興飲食店の無許可営業で注意を受けた。この連載は、bar bonoboを拠点に約15年にわたり日本のクラブカルチャーを下支えしてきた店のオーナー・成浩一に、“小箱カルチャー”の現状や問題点、今後の展望などを聞いていくもの。2回目はbar bonoboが警察の立ち入り指導を受けた際の様子や、成も会員に名を連ねるミュージックバー協会の活動について伺った。

取材・文・構成 / 加藤一陽(音楽ナタリー編集部) 撮影 / 小原啓樹

ダンスをやめさせなさい

bar bonoboが特定遊興飲食店の無許可営業で警察から注意を受けたのは3月のこと。この件については「BuzzFeed Japan」などのメディアで記事が取り上げられ、音楽好きやクラブ好きの間に瞬く間に広まった(参照:https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/bonobo?utm_term=.ay9XzVzPrp#.gkKdgygRek)。それから遡って1月には老舗クラブ・青山蜂に摘発が入っており、こちらでは店の経営者が逮捕されている。

「青山蜂の事件は、報道の扱いが印象的でした。従業員がパトカーで連行される姿が映像で流されて、なんだか非常に重大な罪を犯したようだった。青山蜂は健全に営業していたのを知っているのでかわいそうだと思ったし、『さて、これからどうなるんだろう』『この流れは続いていくものなのか』という不安にもかられました。蜂が摘発を受けるのであれば、bonoboに警察が来てもおかしくないですからね。まあ大阪・NOONの件のあとで初めて風営法で逮捕者が出たということもあり、見せしめと言うか……警察の意思表示みたいなものを感じました」

NOONの件とは、2012年に“客に無許可でダンスをさせた”として逮捕された大阪の老舗クラブ・NOONの元経営者の無罪が、2016年に最高裁判所で確定した事件。多くのミュージシャンが法改正を望む意を表するために音楽イベントを開催したり、ドキュメンタリー映画「SAVE THE CLUB NOON」が制作されたりと、音楽ファンにとって印象深い出来事となった。そしてこの無罪判決と前後して“風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律”、いわゆる風営法は改正され、2016年に“改正風営法”が施行された経緯がある。ただし改正後も、クラブ営業が全面的に許容されたわけではない。青山蜂は風営法改正後初の逮捕者を出したことで注目を集め、そしてその直後の3月、青山蜂に続くようにbar bonoboにも警察が訪れる。

「そのとき僕は店にいました。私服警察の方に『フロアを見せてください』と言われて店の中に通したら、外国人のお客さんが踊っていたんです。まずは『あれをやめさせなさい』と。それですぐに外に出て警察の方といろいろと話して、指導を受けて、速やかに書類を提出しました。騒音に対するクレームで警察が来たことは何度かあって、そのたびに音量を下げたり防音を強化したりしてずいぶん状況は改善されていたんです。でも今回、初めて特定遊興のことで注意を受けました」

活気を出すのが難しくなっている

改正風営法は、主に深夜に飲酒ができる場所で店側が“無許可で客に遊興させる”ことを取り締まるもので、bar bonoboは“客にダンスをさせた”として注意を受けた。あくまで“注意”であり、摘発ではない。

「3月の件は警察からすれば“Warning”といった感じでしょう。ただ風営法の話をしていていつも思うのは、騒音や違法薬物の問題と一緒にしないでもらいたいということ。例えば騒音などはクラブに付いて回る問題です。店によっては違法薬物や暴力もそうかもしれません。それらは人に迷惑をかける反社会的なことですので、警察が動くのは当然。でも“踊ってはいけない、踊らせてはいけない”となると僕は理解できないし、そもそも騒音問題とは別の話だと思う。『クラブってうるさくて近隣に迷惑をかけるから、風営法で引っかかってもしょうがないよ』なんて意見が出ることがあるんですけど、それは騒音の問題としてみんなで話し合ってほしい」

営業許可を取得すれば、もちろん店を営業することはできる。しかし許可を得るにも人的、場所的、構造的にクリアしなければならない条件が多くあり、これまで通りの営業を諦めなければならないクラブやミュージックバーもあるそうだ。

「つまらないと思うのは、それで小箱たちが萎縮してしまうこと。法律だからもちろん守るんですけど、そうすると、僕自身以前よりもクラブシーンに活気を出すのが難しくなっている。それがつまらない。営業許可を取り、法律に沿って営業するお店はたくさんあります。だから東京にクラブは残っているけれど、つまらない形では意味がないですよね。そもそも“踊ってはいけない”なんて法律の正当性については疑問があるし、だからこそ抵抗したいし、『それっておかしいんじゃないか』って声を上げようと思っているんです。人に迷惑をかけなければ、どんなところでもいつでも踊っていい。僕からすれば当たり前のことが、今では理想になってしまっている状況です」

「ダンス、なぜ悪い」としっかり国に問うてみたい

踊ることを規制する法律は理解ができない。そう考えるミュージックバーやクラブの経営者は成だけではない。現状の法律に対して彼らの立場からの意見を表明するため、bar bonobo含む都内30のクラブや音楽バーの経営者たちが集い、業界団体・ミュージックバー協会(MBA)を発足させた。4月のことだ。

「ミュージックバー協会は、東京・GERONIMO SHOT BARの田中(雅史)さんが頭になって、TRUMP TOKYOで発足が発表されました。今は『これからどうやっていこうか』と考えている時期で、まずはMBAの考え方に賛同してくれるお店を増やせるように働きかけています。でも正直、今そこは苦戦しています。考え方は店の経営者によっていろいろだから仕方がないところもあるとは思うんですけど……できれば『俺たちは営業許可を取ったから、もういいや』ではなく、みんなもっとシーン全体を活性化させるにはどうすればいいかを考えられるクラブが増えてくれたらいい。あと、『踊ることはなぜダメなのか?』という問いに対して、僕らはまだはっきりとした説明は得られていないんです。聞けば『青少年の健全な育成に~』とかそういうことらしいのですが、みんなが楽しく踊っているだけのことがなぜ不健全なのか。僕からしたら、音楽の中で楽しく踊っているほうが精神が健全。だからみんなで協力して、『ダンス、なぜ悪い』ってことをしっかりと国に問うてみたいんですよね」

次回は現在の小箱カルチャーに抱く成の問題意識や、bar bonoboの今後の展望などについて触れていく。

<つづく>

小箱クラブの現状 連載一覧

成浩一

1963年、山形県生まれ。1990年代をアメリカで過ごし、バンド・のいづんずりのニューヨーク版のギタリストとして活躍した。帰国後の2003年12月に東京・神宮前2丁目にミュージックバー・bar bonoboをオープン。オーナーとして店の経営を担いながら、自らDJも行っている。

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