第61回金馬奨で最多5冠に輝いた台湾映画「鬼才の道」(原題「鬼才之道」)が昨日3月14日に第20回大阪アジアン映画祭(OAFF2025)で日本初上映され、大阪のT・ジョイ梅田で行われたトークイベントに監督の
本作は人間を怖がらせることが評価される幽霊たちの社会を舞台にしたオカルトコメディ。若くして亡くなった、引っ込み思案な女の子の幽霊・同學は、人間を怖がらせないと消滅してしまうと知り、幽霊界での成功を目指し始める。しかし、人間として悲惨な最期を遂げたことにより“特技”を持つ幽霊たちに比べるとパッとせず壁にぶち当たることに。そんな彼女が出会ったのは、旬を過ぎた幽霊の女王キャサリンとそのマネージャーであるマコト。彼らは、自分たちの名を上げるためともに奮闘する。
満員の観客に拍手で迎えられたジョン・スーは「作品をご覧いただくことができてうれしいです!」と笑顔で挨拶。そして、本作の制作経緯に話が及ぶと「あれは5年ぐらい前になるんですが、前作『返校 言葉が消えた日』を撮り終えたあと、いったんお休みをしようと思った時期があったんです。ホラーに疲れてしまって(笑)、作品も観たくない時期がありました」と打ち明ける。「そんなとき、アイビーさんにとあるホラー映画のプレミア上映に誘われたんです。その作品の中では、人間が汚いトイレに潜む幽霊と遭遇して恐怖する姿が描かれていました。それを観ながら、あんなに汚いところでタイミングを狙って、人を脅かそうとするなんて、幽霊ってなんて大変なんだろうと、同情せずにいられなかったんです。そんなところから『鬼才の道』のアイデアが生まれました」と語った。
近年、ホラー映画が人気を得ている台湾。ジョン・スーは「ホラー作品はどんどん増えていて、お客さんは驚かされるために劇場に行くんです。でも『鬼才の道』が封切られてからは、観客がホラーを怖がらなくなってしまったようで(笑)。ホラー映画を撮っている友達には怒られましたね」と明かし、会場を笑わせる。アイビー・チェンは「(台湾で)ホラー映画は流行しているんですが、みんな似た作品になってきてしまっている。でも『鬼才の道』はまったく違ったタイプのホラー映画。じゃあやってみよう!と思いました」と回想した。
Q&Aのコーナーでは「本作に登場する幽霊が、瞬間移動や空を飛ぶなどの力を持たず、人間臭く描かれているのはなぜか?」といった質問が飛んだ。ジョン・スーは「まずこの映画で描き出したかったのは幽霊がどれだけ大変かということなんです。一般的なホラー映画に登場する幽霊のように、超自然的な力を持っているのではなく、そういった力を持っているように見せるためどれだけの苦労を重ねているかを表現したかった。映画を撮る際も同じで、スタッフは裏で大変な努力をしている。人を驚かせるために一生懸命練習したり、リハーサルをしたりする、そんな人間と近い存在として幽霊を描きたかったんです」と説明した。
イベント終盤では「返校」「鬼才の道」と2作連続でジョン・スーとタッグを組んだワン・ジンの話に。ジョン・スーは「『返校』のとき、彼女は20歳ぐらい。大きな役をやるのもほとんど初めてだったんです。私も彼女と同じく『返校』で注目されるようになりました。『鬼才の道』では、注目されるということが人にどんな作用を及ぼすのか? そして注目される中で成長していく姿を描いています。それは私自身が経験したことでもあるんです」と述懐。「注目される存在になるということ、またそういった状況の中で生まれるさまざまな焦りというものを、もっとも理解できる人はワン・ジンさんだと思いました」と続けた。
第20回大阪アジアン映画祭は3月23日まで大阪・ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館にて開催。
台湾映画「鬼才の道」予告編
第20回大阪アジアン映画祭(OAFF2025)
2025年3月14日(金)~23日(日)大阪府 ABCホール、テアトル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館
スペシャル・オープニング作品
- 愛の兵士 ※日本初上映
コンペティション部門
- バイクチェス ※アジア初上映
- バウンド・イン・ヘブン ※日本初上映
- 我が家の事 ※世界初上映
- 団地少女 ※日本初上映
- その人たちに会う旅路 ※海外初上映
- 朝の海、カモメは ※日本初上映
- ラスト・ソング・フォー・ユー ※日本初上映
- サバ ※日本初上映
- サイレント・シティ・ドライバー ※日本初上映
- トロフィー・ブライド ※日本初上映
- 私たちの話し方 ※日本初上映
- イェンとアイリー ※日本初上映
- 代々木ジョニーの憂鬱な放課後 ※世界初上映
特別注視部門
- 君と僕の5分 ※海外初上映
- そして大黒柱は…… ※日本初上映
- イケメン友だち ※日本初上映
- ブラインド・ラブ 失明 ※アジア初上映
- この場所 ※アジア初上映
- ヴィレッジ・ロックスターズ2 ※日本初上映
- ボクシングの日 ※海外初上映
- ヘンゼル:2枚の制服スカート ※日本初上映
- 愛に代わって、おしおきよ! ※日本初上映
- 屋上のレンピッカ ※アジア初上映
- 恐るべき自動運転 ※海外初上映
- 春二十三 ※日本初上映
- スズキ ※日本初上映
- 洗浄 ※日本初上映
インディ・フォーラム部門
- Good Luck
- 蒸発 ※日本初上映
- よそ者の会 ※「爽子の衝動」と併映
- レイニーブルー ※世界初上映
- また逢いましょう ※世界初上映
- 素敵すぎて素敵すぎて素敵すぎる ※世界初上映
- 爽子の衝動 ※「よそ者の会」と併映
- 蔵のある街 ※世界初上映
- V. MARIA ※世界初上映
- 桐島です ※世界初上映
- 天使の集まる島 ※世界初上映
- だからなに ※世界初上映
- サラバ、さらんへ、サラバ ※日本初上映
- 街に溶ける ※世界初上映
- To Be A Woman ※世界初上映
特集企画<タイ・シネマ・カレイドスコープ 2025>
- おばあちゃんと僕の約束
- 青春 2001 ※日本初上映
- ムエタイ・ハッスル ※日本初上映
- いばらの楽園 ※日本初上映
- タクリー・ジェネシス ※日本初上映
- 団地少女 ※コンペティション部門にも入選
- 私たちの愛しい旅路 ※海外初上映
特集企画<台湾:電影ルネッサンス 2025>
- 破浪男女 ※日本初上映
- 鬼才の道 ※日本初上映
- 我が家の事 ※コンペティション部門にも入選
- イェンとアイリー ※コンペティション部門にも入選
- ブラインド・ラブ 失明 ※特別注視部門にも入選
- 晩風 ※海外初上映
- 寂しい猫とカップケーキ ※世界初上映
特集企画<Special Focus on Hong Kong 2025>
- All Shall Be Well(英題)※日本初上映
- ラスト・ダンス <ディレクターズカット> ※世界初上映
- ラスト・ソング・フォー・ユー ※コンペティション部門にも入選
- 私たちの話し方 ※コンペティション部門にも入選
- 眩光 ※日本初上映
特別招待作品部門
- PAGTATAG!ザ・ドキュメンタリー ※日本初上映
- 6時間後に君は死ぬ ※日本初上映
芳泉文化財団協賛企画《映像研究助成》
- 真アジ ※世界初上映
- 不完全なわたし ※世界初上映
- 相談
- ヤキシムシズ ※世界初上映
- TEN EASY PIECES ※世界初上映
泉文化財団協賛企画《映像研究表彰》
- 金管五重奏の為の喇叭吹きの憂鬱
- 折にふれて
- 季節のない愛
特別上映 《VIPO Film Award の成果》
- 蒙古馬を殺す ※日本初上映
クロージング作品
- 桐島です ※インディ・フォーラム部門にも入選
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