小学生が東宝スタジオを見学!LEDパネルを擁するスタジオや効果音作りの体験に充実感

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子供向けの芸術文化体験企画「ネクスト・クリエイション・プログラム」(主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団)の一環である「映画と夏の7日間」が東京・東京都庁を中心に開催中。8月3日に行われた東京・東宝スタジオ見学ツアーの様子を、映画ナタリーが取材した。

東宝スタジオのメインゲートにある「七人の侍」の壁画 Ⓒ1954,2007 TOHO CO.,LTD.

東宝スタジオのメインゲートにある「七人の侍」の壁画 Ⓒ1954,2007 TOHO CO.,LTD.

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年間50~60本の映画・約200本のCMを撮影

「映画と夏の7日間」に参加する子供たち

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映画監督の是枝裕和を監修に迎えた「映画と夏の7日間」は、鑑賞・企画・撮影・編集までの一連の映画作りを体験することにより、表現する楽しさや工夫する面白さを学ぶプログラム。7月末から8月末にかけて全7回で完結する本企画には200通を超える応募の中から抽選で選ばれた小学4年生~6年生までの26名が参加している。

立松雄太郎

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この日、子供たちは9時に集合。案内を担当する東宝スタジオの立松雄太郎氏は、「東宝スタジオの歴史は1932年にこの場所で始まりました。ここでは1年間で50~60本の映画・配信作品、約200本のCM作品の撮影が行われています。また、撮影が終わったあとに映像を編集したり、アフレコや効果音を付けたりするポストプロダクションセンターという施設もあります」と説明する。そして「今日は皆さんに楽しんでいただける見学内容にしました。途中で気になることがあったらなんでも聞いてください」と優しく呼びかけ、見学ツアーをスタートさせた。

アフレコルームはピクサー仕様

ポストプロダクションセンター1の外観

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編集ルームでの見学の様子

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まず訪れたのは、ポストプロダクションセンター1。映像の編集ルームをはじめ、アフレコルームやMAルームなどを擁する施設だ。ポストプロ営業部の早川文人氏に先導され、編集ルームに入った子供たちは、さっそく「これってなんですか?」と機材に興味津々。早川氏は「撮影が終わるとまずこの部屋で撮った素材をつなぎ合わせ、編集された映像をみんなで通して観て、『ここは違うよね』となったらまた編集し直す。そういったことを延々とやっているお部屋です」と紹介する。また「今後映画業界でも、AIが編集をする時代が来るかもしれません。でも今は編集技師という専門の人がいて、監督たちと話し合いながら映像をつないでいます」と話した。

アフレコルーム

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続いて、主に実写作品で使われているアフレコルームへ。静けさに包まれた空間に対し、子供たちが「なんか気持ち悪い」と感想を口にすると、早川氏も共感しつつ、手をたたきながら「こうやって響かないお部屋にすることで、周りの不要な音は入れずに役者さんの声だけを録れるようにしているのです」と解説する。また立松氏は「ここはピクサーという会社のアフレコルームを参考にして作りました」と明かし、「監督たちがいる部屋(コントロールルーム)は、通常だと役者さんの真後ろにあるんですが、役者さんの表情を見ながら収録したり会話したりできるよう、斜め後ろにあるのが特徴です」と伝えた。

自分たちで撮影した映像に効果音を付ける“フォーリー”体験

フォーリーの説明をする長谷川剛(中央左)

フォーリーの説明をする長谷川剛(中央左)[拡大]

フォーリー体験の様子

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ここからは、効果音を制作する手法の1つであるフォーリーを体験することに。是枝による短編映画「ラストシーン」にも参加した音響効果技師の長谷川剛が特別講師を務め、子供たちが7月26日に東京都庁内で撮影したコマ撮り映像に効果音を付けていく。椅子を動かす、人が転がる、何かを呼びかける……など、モニタに映った人や物の動きに合わせ、身近な道具、楽器、おもちゃなどを使いながら、映像を肉付けするための音を作っていった。ひとりでに動く椅子の効果音を担当した男の子(小学5年生)は、「みんなとリズムを合わせるのと、映像のタイミングにも合わせなきゃいけなかったから難しかった」とコメントし、おもちゃの音で人のしゃべり声を表現した女の子(小学4年生)は、「いろいろな音を合わせたら楽しくなる気がした。(完成した映像を観て)鳥肌が立った!」と教えてくれた。

MAルームの様子

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必要な音素材をそろえる過程を見学したあとは、“最後の音を作る部屋”=MAルームへ。立松氏は「効果音、音楽、セリフが音の大きな3要素で、それぞれのバランスを取るお部屋がここです」と説明する。ドルビーアトモスホームに対応した同施設で「ゴジラ-1.0」の本編の一部を上映し、5.1chサラウンドでの音の聞こえ方を体験してみると、子供たちは「全体的に聞こえた」と臨場感に驚いた様子。早川氏は「もちろん画も大事なんだけど、音楽だったりセリフだったり音もすごく大切な要素だから、こういったお部屋でしっかり仕上げるのです」と述べた。

作品の安全と成功を祈願する枚岡神社

枚岡神社で参拝する子供たち

枚岡神社で参拝する子供たち[拡大]

ポスプロセンターを出て次に向かったのは、施設内にある枚岡神社。クランクイン前に俳優やオールスタッフが集まり、撮影の安全な進行とヒットを祈願する儀式を行う場所だ。今後、撮影や編集などに取り組む子供たちも、二礼二拍手一礼で成功を祈った。

バーチャルプロダクションに大興奮「道路を走ってるみたい!」

白ホリのスタジオを見学する様子

白ホリのスタジオを見学する様子[拡大]

LEDパネルに高速道路を走る映像を再生する様子

LEDパネルに高速道路を走る映像を再生する様子[拡大]

東宝スタジオの中でもっとも大きいNo. 8st(ステージ)では、撮影のため2階建ての一軒家を丸々建てることもできると説明した立松氏。429坪という規模に実感が湧かない子供たちは終始戸惑いを隠せない様子だ。続いてCM案件で使用しているNo.11stを見学した。白ホリ(白ホリゾント)の対面には、LEDパネルを使ったバーチャルプロダクションの設備も。首都高速道路を走っている車目線の映像が正面・左・右・上に映し出されると、子供たちはその場で駆け出し「すごい! 道路を走ってるみたい!」と楽しそうな笑顔を見せる。立松氏は「映像を活用することによって美術の大掛かりなセットを建てなくて済むので、廃棄する資材も少なく済みますよね。SDGsという言葉をみんなも聞いたことがあるかもしれないけど、環境にも配慮して映像を制作できる画期的な手法なんです」と解説した。

子供たちがそれぞれ印象に残った見学は?

スタジオの外観

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短編映画制作のため、ストーリーや設定を話し合う子供たち

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そのほか、特殊メイクや造形を行う会社・メイクアップディメンションズの工房や、大道具セットを作る際に下準備をする大道具棟も見学することができた。子供たちに感想を聞いた際、印象に残った部門や職業がバラバラだったのも興味深い。6年生の男の子は「LEDパネルの新しい撮影方法を間近で体験できていい経験になりました」、5年生の男の子は「音を付ける仕事をしてみたいと思った」、4年生の女の子は「メイクの部屋に入ったとき、顔の模型を作る機械(3Dプリンタ)があって面白かった」とそれぞれ充実した表情で語ってくれた。

砂田麻美

砂田麻美[拡大]

この日の午後には、映画監督の砂田麻美が物語の作り方をレクチャーしたほか、第4回の8月10日には、是枝が自ら子供たちに映画作りについて伝える授業も行われた。本プログラムを通して子供たちが制作した短編映画は、9月21日に東京・東京都写真美術館で上映される予定だ。

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アオキモトアキ/映画宣伝プロデューサー、他。 @aoaoblue

【見学ツアーレポート】小学生が東宝スタジオを見学!LEDパネルを擁するスタジオや効果音作りの体験に充実感(写真27枚) https://t.co/Uw6Li7frCu

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