「ジョン・ウィック」シリーズから生まれた映画「バレリーナ:The World of John Wick」が8月22日に全国公開される。
シリーズのDNAを継ぎながらも、しなやかで力強いアクションと新たな主人公の視点で戦いの形を大胆に更新した本作。アナ・デ・アルマスが父親を殺した暗殺教団に復讐する主人公イヴを演じたほか、キアヌ・リーヴス扮する“伝説の殺し屋”ジョン・ウィックも登場する。監督を務めたのは「ダイ・ハード4.0」のレン・ワイズマン。シリーズの礎を築いたチャド・スタエルスキも製作として参加した。
本特集では、ひと足早く本作を観た声優・加藤英美里、テレビプロデューサー・佐久間宣行、アクション監督・谷垣健治、ゲーム実況者・鉄塔(三人称)、マンガ「カグラバチ」作者・外薗健、そしてバレエ芸人・松浦景子による感想を紹介。シリーズの系譜を踏まえながら、本作のアクション演出を深掘りするコラムも掲載している。
コラム / よしひろまさみち
映画「バレリーナ:The World of John Wick」予告編公開中
想像を超えた「バレリーナ:The World of John Wick」
※五十音順で掲載
加藤英美里(声優)
新たな主人公、イヴのアクションは今までのジョン・ウィックとはまた違って新たなアプローチがたくさん見られました!
体格のいい敵とどう戦っていくのか、次はどんな手を使うのか…彼女のアクションから目が離せません。
そしてシリーズお馴染みの場所やキャラクターが登場した時は、「待ってました!」とばかりに心が震えました。
映像美にもぜひ注目していただきたいです。各シーンの戦闘にハラハラしながらも、照明が生み出す光と影のコントラストにより、美しく映し出される主人公イヴ。アクションシーンだけでなく、映像や演出など各所にこだわりを感じる作品でした。
シリーズファンの皆さまとしては、気になるであろうジョン・ウィックのアクション…
あります!!
プロフィール
加藤英美里(カトウエミリ)
11月26日生まれ、東京都出身。2004年にテレビアニメ「今日からマ王!」ドリア役で声優デビュー。主な担当キャラクターに「らき☆すた」柊かがみ、「〈物語〉シリーズ」八九寺真宵、「魔法少女まどか☆マギカ」キュゥべえ、「小林さんちのメイドラゴン」才川リコ、「SPY×FAMILY」ベッキー・ブラックベル、「メダリスト」高峰瞳などがある。声優アワードでは第2回(2008年)で新人女優賞と歌唱賞、第6回(2012年)で助演女優賞を受賞した。
佐久間宣行(テレビプロデューサー)
優雅さと残忍さ、熱さと哀しさ、すべてがアクションの中にある
アナ・デ・アルマスが痺れるくらい格好良くて切ない
ジョン・ウィックの世界がまた広がっていくのが嬉しすぎます!
プロフィール
佐久間宣行(サクマノブユキ)
1975年11月23日生まれ、福島県出身。テレビプロデューサー。1999年にテレビ東京に入社して以降、「ゴッドタン」や「青春高校3年C組」などさまざまな番組を手がける。2021年3月に同局を退社し、フリーランスとして活動。DMM TV「インシデンツ」、Netflix「トークサバイバー!」シリーズや「LIGHTHOUSE」「罵倒村」などの企画・プロデュースを担当してきた。現在、パーソナリティを務めるニッポン放送の番組「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」が毎週水曜27時より放送中。Netflixコメディシリーズ「デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ」が9月9日より配信される。
谷垣健治(監督、アクション監督)
「ジョン・ウィック」の3と4の間の時間軸に位置するスピンオフ。このシリーズはキャッチーなアクションシーンを作るのがとてもうまくて毎回感心させられる。ガンを駆使しながら超近接で戦う「ガン・フー」、ニューヨークの街中を馬とバイクが追いかけっこ、パリのサクレ・クール寺院の222段を何十人が階段落ち…。こう書いてるだけでワクワクするわマジで(笑)。何かアクション部が冗談で言ったことが本気で実現されてしまってるというか。
今回も、氷や火や水という要素を貪欲に取り入れながら、アナ・デ・アルマスがありとあらゆるものを武器にしてとにかく戦いまくる。殺し方もエグくて、敵が気の毒になってしまうほどだが(笑)、その「残酷なユーモア」こそがこのシリーズの特徴。中途半端にやったら「ただのバイオレンス」になるところを、徹底してやることで笑いに昇華させているのがすごい。もちろん、シリーズを見たことない人でも余裕でわかるぐらい話は超単純(笑)。おすすめです!
プロフィール
谷垣健治(タニガキケンジ)
1970年10月13日生まれ。奈良県出身。1989年に倉田アクションクラブに入り、1993年単身香港に渡る。香港スタントマン協会(香港動作特技演員公會)のメンバーとなり、ドニー・イェンの作品をはじめとする香港映画にスタントマンとして多数参加。2001年にドイツのテレビシリーズ「SK Kölsch(原題)」でアクション監督デビュー。2018年に「邪不圧正」(日本未公開)で台湾金馬奨の最優秀アクション監督賞、2022年に「レイジング・ファイア」でドニー・イェンらとともに香港電影金像奨の最優秀アクション設計賞を獲得する。2025年に「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」で香港電影金像奨の最優秀アクション設計賞を単独受賞した。そのほかのアクション監督作品に「るろうに剣心」シリーズ、「G.I.ジョー:スネークアイズ」「シャクラ」など。自身の監督最新作「The Furious(原題)」が待機中。
鉄塔(三人称 / ゲーム実況者)
「ジョン・ウィック」シリーズの魅力は沢山ありますが、僕は「振り切った新鮮なアクション」と、「何だかちょっとお茶目な感じ」にあると思っています。前作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の凱旋門シーンとか階段落ちとか、最高すぎて笑ってしまうくらい。
そんなシリーズのスピンオフである今作も申し分なく「ジョン・ウィック」してます!
銃撃戦、格闘戦、手榴弾、お皿のつかみ合い。どこを取ってもジョン・ウィック。最高です。
ガンシューティングゲームによく「市民を撃ってはいけない」というルールがありますが、
「バレリーナ」においては全く違うところも超楽しいポイントです。
本作の主人公であるアナ・デ・アルマスさんは以前、「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」に出演されていました。物語の中盤ぐらいに登場した彼女に僕は目が釘付け。たった10分ほどで彼女は退場してしまうのですが、あまりにも印象的だったので「これはこの後に絶対物語に絡んできますね~」と思いながら鑑賞していました。が、結局最後まで彼女は出てきませんでした。
この「バレリーナ」では、そんなアナ・デ・アルマスさん扮するイヴ・マカロが画面の隅々まで大暴れしており、彼女の魅力が存分に発揮されています。
もちろんジョン・ウィックもちゃんと出番がありますのでご安心を。「ちょっと俺にもやらせてくれ」的な感じの関わり方が最高でした。
「ジョン・ウィック」シリーズの新たな一面を見せてくれるこの「バレリーナ」、是非今後もシリーズ化して欲しい!
プロフィール
鉄塔(テットウ)
埼玉県出身。YouTubeチャンネル登録者数82.9万人(※2025年7月時点)を超えるゲーム実況グループ「三人称」のメンバー。「賽助(さいすけ)」名義で作家活動も行い、小説やエッセイを出版。著書に「今日もぼっちです。」「はるなつふゆと七福神」「君と夏が、鉄塔の上」「手持ちのカードで、(なんとか)生きてます。」がある。現在、週刊ファミ通にてコラム「昨日もゲームしてました」を連載中。
外薗健(マンガ家 / 週刊少年ジャンプ「カグラバチ」連載中)
アナ・デ・アルマス演じる美しい女殺し屋が多種多様なぶっ殺し方を披露しまくってくれて嬉しかったです!!
美しい女殺し屋のぶっ殺しはずっと見ていられます!!
「ジョン・ウィック」シリーズでは
毎回見られる、おお!と唸ってしまうような
カメラワーク・殺陣がこのスピンオフでも見られて満足でした!
プロフィール
外薗健(ホカゾノタケル)
2000年生まれ、大阪府出身。2020年、読み切り作品「炎天」が第100回手塚賞で準入選。読み切り作品「さらば!チェリーボーイ!」が掲載されたジャンプGIGA 2021 SPRINGでデビューを飾る。2023年9月に週刊少年ジャンプで剣戟バトルアクション「カグラバチ」の連載をスタートした。
松浦景子(バレリーナ芸人)
バレエが題材の映画は、沢山みてきましたが、こんなの初めて!!!
度肝抜かれました!!
でも気づいたらどんどんのめり込んで、バレエに通ずるものがあるかも…
バレエ大好き、「バレリーナ」大好き!
プロフィール
松浦景子(マツウラケイコ)
1994年4月20日生まれ、兵庫県出身。3歳よりクラシックバレエを習い始める。2015年にオーディションを経て吉本新喜劇に入団。2017年12月に「とんねるずのみなさんのおかげでした 博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~」、2020年元日には「ぐるぐるナインティナイン ~おもしろ荘 大晦日SP~」に出演する。バレエレッスン・ワークショップの講師として全国1000人以上の生徒を教えるほか、国内外プロバレエ団の公演にバレエダンサーとして参加。吉本興業が主催するコメディバレエ団・けっけバレエの総監督兼出演ダンサーとしても活動している。
バレリーナ芸人 松浦景子 (@pinkpinks13) | X
文 / よしひろまさみち
最新作でも思いっきり「ジョン・ウィック」
2014年の「ジョン・ウィック」から始まった凄腕殺し屋ジョン・ウィックと裏社会をめぐるシリーズ。キアヌ・リーヴス主演の4作品のほか、前日譚のドラマシリーズが作られ、どれも大きな話題を呼んだだけでなく、さらなる続編やアニメ版の制作も噂されている。その世界観をそのままに、シリーズのある作品で登場したキャラクターをフィーチャーした最新作が「バレリーナ:The World of John Wick」だ。
バレリーナとは、シリーズ第3弾「ジョン・ウィック:パラベラム」に登場するキャラクター。アンジェリカ・ヒューストンが演じる主席連合支配下の組織ルスカ・ロマのボス、ディレクターが運営する育成施設で鍛え上げられた、舞踊と暗殺のプロだ。本作では、その設定を生かしつつ、「ジョン・ウィック」の世界線で別の物語を展開させた。シリーズの6作目にあたり、時系列としては「ジョン・ウィック:パラベラム」と「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の間の物語となる。
このように聞くと、世界観だけ利用した別物、と感じられるかもしれない。が、本作は思いっきり「ジョン・ウィック」。アンジェリカ・ヒューストン演じるディレクターやリーヴス演じるジョン・ウィックはもちろん、ランス・レディック演じるコンチネンタルホテルのコンシェルジュ、シャロンも重要なパートで登場するのだ。シャロンの再登場はファンにとっては見逃せないポイント。なにせシリーズを通してジョン・ウィックと並ぶ人気キャラだった彼とスクリーンで再会できるのはこれが最後だから(2023年に急逝したランス・レディックの遺作となる)。
アクションの革新が止まらない
アナ・デ・アルマス演じる主人公イヴ=バレリーナは、12年の訓練を経た暗殺者。任務中に殺した刺客の体に、かつて父親を死に追いやった暗殺教団の印を見つけ、組織の命令に反しても復讐に立ち上がる。
冒頭、幼いイヴと父親の離別シーンで繰り広げられるのは、暗闇とネオンカラーの対比がきいた爆速銃撃と過剰な爆破。続いて、成長したイヴが「女らしく戦うの」と教えられる訓練シーンでも、濃紺と血の赤が映える道着の対比で見せる武術や、実戦さながらの銃撃戦と肉弾戦の応酬。「ジョン・ウィック」シリーズ独特のルックで、シリーズのファンにはたまらない打ち上げ花火のような盛り上がりを見せる。
最大の見所は、常に主人公をフレームの中央に置く独創的なアクションシーンだ。次から次と現れる刺客をたったひとりの主人公が迎え撃ち、ガンアクションとマーシャルアーツをかけあわせた“ガンフー”で魅せる、というのがこのシリーズにおける一貫した見せ場。本作でもガンフーの流れを汲む大立ち回りはもちろん、まるでダンスシークエンスのように華麗な振り付けで、流れるように敵を倒していくアクションの連続が楽しめる。ジョン・ウィックと対面した後に挑むナイトクラブ内でのミッションでは、ドレスとヒールという動きにくい衣装のハンデを軽く乗り越えて、クラブを劇場のように華麗に舞いながら銃と武術を自由自在に操る。また、数あるアクションシーンのなかでも、キッチンでの殺し合いは見もの。イヴは手放してしまった銃の代わりに、周りにあるフライパンや肉たたきなどのキッチン用品を武器に敵に立ち向うのだが……その一撃一撃が想像できる痛みだけに、観ているこちらも痛い!
そして、本作ならではといえば感情表現だ。イヴは一流の殺し屋とはいえ、熟練のジョン・ウィックとは違い、常に冷静沈着ではない。感情の動きをあらわにしながら、迫りくる火炎放射器の炎に消火用放水機の水をぶつけるシーンは、まるで「バックドラフト」。「ジョン・ウィック」シリーズの流れを汲みながらも、独創的に進化したアクションシーンの数々には舌を巻くだろう。