月刊おもしろ映画宣伝2025年6月号

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2025年6月号 [バックナンバー]

新たなこと、難しいことへの挑戦を忘れない宣伝にリスペクト

無難で堅実な宣伝も大切だけど

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映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

今月は「スーパーマン」「星つなぎのエリオ」「メガロポリス」「バレリーナ:The World of John Wick」「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」「F1®/エフワン」について取り上げた。また記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

/ ビニールタッキー

「月刊おもしろ映画宣伝」6月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

「スーパーマン」

イベントレポート
映画「スーパーマン」の公開目前スペシャルイベントが昨日6月26日に東京・esports 銀座 studioで行われ、スーパーアンバサダーと日本語吹替版キャストを兼任するチョコレートプラネットの長田庄平と松尾駿、スーパーマンの大ファンである中島健人が登壇した。

まずは景気の良い「スーパーマン」のニュースから。色々取り上げたいトピックスはあるのですが、イベントの中で明かされたこの話に驚いてしまいました。

正体を隠すために、普段は大手メディアである「デイリー・プラネット社」の新聞記者クラーク・ケントとして働くスーパーマン。彼のスーツとメガネをオマージュした衣装で登場した中島は「スーパーアイドルを目指している中島健人です。今回は衣装を選ぶときから、『どれが一番クラーク・ケントに近いかな?』とかなり意識していたので、ベストなクラーク・ケンティになったかなと思います!」と自信を見せ、「実は僕の名前はクラーク・ケントから来ているんですよ。両親がスーパーマンが大好きで、実家にフィギュアなどのアイテムもたくさんあります。ずっと愛してきたからこそクラーク・ケントのように強く、“健やかな人”になるようにと意味が込められているんです」と明かす。これに松尾は「マジで? 嘘なし? じゃあご両親も今回の作品超楽しみにしてんじゃん!」と驚いた。

なんと中島健人さんの名前の由来がクラーク・ケントだったとは。とても素敵なエピソードだと思います。この後ジェームズ・ガン監督からのビデオメッセージでもその件について言及されていましたし、引き続きケンティさんには「スーパーマン」の宣伝に関わってもらって実際に映画を観たご両親の感想も教えてほしいと思いました。続報待ってます!

「星つなぎのエリオ」

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ディズニー&ピクサー最新作「星つなぎのエリオ」の日本版予告がYouTubeで公開。あわせて日本版エンドソングがBUMP OF CHICKENの「リボン」であるとわかった。

最近気になっている宣伝ムーブメントの一つに「海外映画の日本版楽曲に既存曲を使用する」というものがあります。日本版イメージソング、エンドソングといえばアーティストの新曲や日本語カバーソングなどが採用されることが一般的ですが、ここ最近はアーティストのファンにも親しまれている既存の曲が採用されることがあります。例えば今年3月には「パディントン 消えた黄金郷の秘密」の日本版イメージソングとしてYOASOBIの2023年の曲が採用されるということがありました。私個人としては映画のテーマに合うのであれば全然良いと思いますし、アーティストのファンの皆さんもうれしく感じるのではないかなと思っています。今後もどうなっていくのか動向を見守りたいと思います。

「メガロポリス」

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フランシス・フォード・コッポラが監督・脚本・製作を担った映画「メガロポリス」のメイキング映像が解禁。あわせて、日本初にして最後となるパフォーマンス付きIMAX®︎特別先行上映会が行われることもわかった。

日本上陸前から何かと話題を呼んだフランシス・フォード・コッポラ監督の「メガロポリス」。その先行上映会が都内で行われるというニュースですが、その内容に驚きました。

先行上映会は6月18日に東京・グランドシネマサンシャイン池袋で実施。この上映はコッポラが理想とする形式で行われ、2024年の第77回カンヌ国際映画祭で話題を呼んだ演出を体験することが可能だ。本編中には一部、国内では同劇場ともう1館でしか観ることのできない1.43:1の画角のシーンも。加えて20歳以上の来場者には、上映前にコッポラが手がけるワイン「ディレクターズ・カット・ソノマ・コースト・シャルドネ」が提供される。

カンヌ国際映画祭で披露されたというパフォーマンス付き上映、しかもコッポラが手がけるワインも提供されるという贅沢な内容です。実際に参加された人たちの感想をSNS等で見たのですが、このお祭りのような企画を楽しんでいる様子が伺えました。カンヌで行われたことを日本でも再現してくれるとは思ってもいなかったので「粋な計らい」だと感じました。ちなみにコッポラのワインは私も飲んだことがあるのですが実に美味しいのでオススメですよ! 映画も観てワインも飲んでコッポラ監督を応援しましょう!

「バレリーナ:The World of John Wick」

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「ジョン・ウィック」シリーズの世界を継ぐ新作映画「バレリーナ:The World of John Wick」の予告編がYouTubeで公開。あわせて前売り特典の詳細も明らかになった。

「ジョン・ウィック」シリーズの世界観を引き継いだ映画「バレリーナ」。もちろん楽しみな映画なのですが個人的に気になったのは前売り特典です。

本作の特典付きムビチケカードは6月27日に発売決定。数量限定の特典として「ジョン・ウィック」シリーズに登場するコインが付属する。殺し屋御用達のコンチネンタルホテルや銃器の売買など、裏社会の取り引きで利用される独自の貨幣を模したものだ。

これは欲しい! 日頃から「映画のグッズとして欲しいのは映画のタイトルやロゴが印刷されたものではなく、実際に映画内に登場するガジェット」と思っていたので「ジョン・ウィック」世界で使用されるコインが特典として付いてくるのはシリーズファン的にはたまりません。ありがとうございます……!

「バレリーナ:The World of John Wick」ムビチケカード特典のコイン

「バレリーナ:The World of John Wick」ムビチケカード特典のコイン

「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」

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トム・クルーズ山崎貴の対談が実現。2人は東京・渋谷の街を一望できる渋谷スクランブルスクエアの屋上展望台「SHIBUYA SKY」で対面を果たした。YouTubeでは、その様子を収めた特別映像が公開されている。

来日したトム・クルーズと、この前日に「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」を観たばかりの山崎貴監督の対談動画が公開されました。明るく景色のいいSHIBUYA SKYの展望台でひたすら映画談義に花を咲かせる2人の様子にぐっときます。しかもこの動画、たっぷり13分もあります。日本語で観られるトム・クルーズの対談の中でもこの長さのものは貴重だと思います。しかも終始興奮気味で楽しそう。シリーズファンもトムファンも山崎貴ファンも必見の動画ですのでぜひご覧ください。

映画「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」特別映像(トム・クルーズ×山崎貴)

イベントレポート
森川智之が本日6月2日、東京・TOHOシネマズ 日比谷で行われた「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」の大ヒット御礼舞台挨拶に登壇。主演のトム・クルーズの吹替声優としておなじみの森川は、シリーズ名物と言える「トム走り」を会場で披露した。

一方その頃、森川智之さんは全力のトム走りを披露していました。しかも上映前にガブリエル役の津田健次郎さんがミッションを無茶振りし、上映後に登壇した森川さんが挑戦するという投げっぱなしな企画なのが笑えます。「無茶振りしたツダケンさんはいないのにやらされるんかい!」と突っ込んでしまいました。

「ミッション:インポッシブル」のテーマが流れ始めると同時に、森川はスクリーンの外まで一直線にトム走りで駆け抜け、観客を圧倒。「ガブリエルー!」と遠くから声が聞こえたかと思うと、森川は再び全速力で会場に舞い戻る。「はあ、はあ」と息切れしながら「いやいや、皆さんありがとうございます。ちゃんとツダケンに言ってくださいね! やったって!」と呼びかけた。

これはちゃんとツダケンさんに報告しましょう。それにしても一昔前はお笑い芸人さんが挑戦していたような企画に声優さんが挑戦してしっかり話題になるんですから時代は変わったと感じました。

「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」

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3DCGアニメーション映画「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」が7月11日より香港で公開決定。「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の信一役で知られるテレンス・ラウがらいおんくん(獅兄)の声を担当する。

こちらはこのコラムで取り上げていい話題なのか悩みましたが、これも1つのおもしろ映画宣伝だと解釈して採用させていただきました。「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」のスマッシュヒットで人気を集めたテレンス・ラウがこれまたスマッシュヒットした「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」の香港版のらいおんくんの声を担当するという驚きのニュースです。注目株の俳優さんに様々な仕事が舞い込んでくるということはよくありますが、まさか「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」の吹替が来るとは。しかし両作を観た自分のような人間からすると不思議と「しっくりくる」(個人の感想です)という感じなので見事なオファーだと感じました。これも俳優さんの魅力と作品の文脈を的確に掴んだおもしろ映画宣伝なのかもしれません。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今月はこちらです!

「F1(R)/エフワン」

イベントレポート
映画「F1(R)/エフワン」の舞台挨拶が本日6月25日に東京・丸の内ピカデリーで行われ、緊急来日したブラッド・ピットが登壇した。
「トップガン マーヴェリック」のジョセフ・コシンスキーが監督を務めた本作では、かつて“天才”と呼ばれたドライバーのソニーがF1に現役復帰を果たし、最弱のチームを導いていくさまが描かれる。ピットが来日するのは「ブレット・トレイン」のプロモーション以来、約3年ぶり。大歓声に迎えられ登場した彼が「(客席に)どうでしたか?」と尋ねると、さらに大きな歓声が巻き起こった。

今月のMVPは映画「F1®/エフワン」です!というか緊急で来日してくれたブラッド・ピットと、この超短期スケジュールで対応してくれた宣伝スタッフの皆さんにMVPを贈りたいです!

そもそも今回の緊急来日がどれほど緊急来日だったかというと「ブラピ来日決定! 明日来ます!」ぐらいの勢いだったのです。

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実際に水面下でどのような話し合いがあったのかは我々外部の者にはわかりませんが、つい先日までイギリスでプレミアイベントに登場していたブラピが翌日には日本に来るというF1®レース級のスピード感に驚かされました。早速来日イベントでイギリスのプレミアでの出来事を質問されるという一幕もありました。

現地時間6月23日にイギリスで行われた本作のプレミアには、トム・クルーズが登場。ピットは「トムは旧友で昔からよく知っているんです。90年代にゴーカートで一緒にレースをしたこともある。来てくれてうれしかったです」と笑みをこぼす。「今後、陸でのアクションのほか、海や空でのアクションに挑戦したい気持ちはありますか?」と質問が飛ぶと、「それはトムに任せます!」と答え、会場の笑いを誘った。

ナイスなコメントです。さらにこのイベントでは特製の法被を着て三本締めを行うという来日イベントの基本所作も行われていてさらに感動しました。ブラピのフッ軽な行動力とそれに対応した日本宣伝側の尽力でこのように楽しい来日になったのではないかなと思っています。

今月はさまざまな試みの面白さを感じました。「バレリーナ」前売り特典のコイン、「星つなぎのエリオ」の日本版エンドソング、「メガロポリス」のコッポラワイン振る舞い上映会、「たべっ子どうぶつ THE MOVIE」のテレンス・ラウ吹替起用、などなど。ある意味「F1®/エフワン」のブラピ緊急来日イベントも試みの1つかもしれません。もちろん無難で堅実な宣伝も大切ですが、新たなことや難しいこと、意外性のあることに挑戦するのも大切だと感じました。特に今回は映画ファンや作品ファンの気持ちを汲み取りながら面白い試みに挑戦している宣伝もあってとても良いと思いました。そこに単なる一過性のギャグのようなものとは違う面白さが生まれると感じました。新たな試みを忘れない宣伝にリスペクトを払いたいと思います。

以上、月刊おもしろ映画宣伝2025年6月号でした。次回もお楽しみに!

ビニールタッキー

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

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ビニールタッキー @vinyl_tackey

映画ナタリーさんでの連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」6月号が公開されました!今回は吹き替え声優さんがトム走り、上映会でワイン振る舞い、トワウォとたべっ子どうぶつの邂逅、緊急来日の緊急対応など様々な挑戦を続ける宣伝にリスペクト!の回です。ご覧ください。https://t.co/kGBU4FL9yj

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