
映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第22回 [バックナンバー]
映画の持つ振れ幅のよさに気付けた「シャークネード」
ファミレスのドリンクバー全混ぜみたいな映画です
2025年7月24日 19:00 7
これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・
第22回のお題は、夏にふさわしいモンスターパニック作品であり、サメ映画愛好家からは評価の高い「
文
サメと言えば「ジョーズ」1本やと思っていました
こんにちは、ミルクボーイ駒場です。先日このコラムとは関係なく、今話題の「国宝」を観てきました。このコラムを始めて映画熱がとても高まっているので、常々映画館へは行きたいなぁと思っているのですが、なかなか時間が作れずにいたんです。でもこの作品はとにかく話題ですし絶対チェックしたいと思い、なんとか時間を作り観させてもらいました。本当に観てよかったです! すごいです! 観た人が興奮しながら感想を語るのが本当にわかりました。主演のお二人はもちろん、それ以外のすべての関わった方々が全身全霊を注いで作り上げた作品だというのがスクリーンから伝わり、尊敬を通り越してちょっと怖さまで感じました。畏怖の念というやつでしょうか。帰り、家まで背筋をシャンとして帰りました。
そしてそんな「国宝」を観たあと少しして、今回鑑賞したのは2013年製作のアメリカ映画「シャークネード」です。こちら本当に観たことも聞いたこともない、ポスターを見てもまったくピンとこない今まで以上に事前情報ゼロの作品でした。サメと言えば「ジョーズ」1本やと思っていましたが“サメもの”ってほかにもあったんですね。「シャーク」が「トルネード」に乗ってやって来るから「シャークネード」ということだそうで、映画知識が浅い僕でも、「これは何か匂うな」と思いました。肝の部分を大々的に言ってしまっているというか、それ知ってていいの?という感じです。でもこの感じは、めちゃくちゃ面白くてももちろんいいですし、「なんやねん」でも全然いいという、全方向にフリが効いている状態です。なのでとても楽しみに観ました。
伏線もないですし、あったとしても何も思いません
そして鑑賞後の感想としては、「『シャークネード』は嘘偽りのない『シャークネード』」でした。竜巻というのは巻いているものですが、映画はどストレート。これにタイトルを付けるとしたら「シャークネード」としか言いようがありません。おそらくタイトル会議でも序盤に「『シャークネード』はどうでしょう?」という案が出たと思います。でも「さすがにそのまますぎないか?」ということになり会議は続行、そして4時間後、「やっぱ『シャークネード』か」となり決まったんじゃないでしょうか。これは「シャークネード」でしかないですもん。
中身については、最高の褒め言葉として「なんやねん」を贈りたいです。とりあえず、ツッコむべきことが山盛りあります。毎分どこかにツッコめると思います。でもふざけているわけではないんです。変にボケてるわけでもない。みんながんばっているんです。だからいいんです。だからより盛大にツッコめるんです。役者さんだけでなくスタッフさんももちろん真剣に、全身全霊を注いだと思います。ただ、本当に、本当にいい意味で“逆「国宝」”でした。こういう幅があるから映画鑑賞って面白いんだなということに気付かせてもらいました。強いて1つ言わせてもらうとすると、2013年のCG技術ってこんな感じだったのか? もっと進んでた気もするけど……と思いましたが、まぁいいです。全身全霊を注いでいるはずですから変な詮索はやめましょうという感じです。
あと、本編約85分という時間も最高です。「シャークネード」は85分です。「シャークネード」で120分なわけがありません。85分が「シャークネード」の最適の時間です。その中に、スリル、恐怖、友情、家族愛など詰まっています。皆さんファミレスのドリンクバーで「全混ぜ」はしたことあるでしょうか。コーラやメロンソーダなど、搭載されているドリンクのボタンをちょっとずつ押してオリジナルドリンクを作る行為です。誰しも一度は経験があるのではないかと勝手に思うのですが、そんなような映画です。ちょっとずついろんな味がして、変な色です。でもワクワクは感じることができます。
ちなみに、今回の「そんなこと言うてた?」は、こんなこと初めてですが 、特にありません。難しいことも伏線もないですし、あったとしても、わかっててもわかってなくても何も思いません。「シャークネード」にそんなことは求めてないです。それくらい何も考えず観られる映画なんです。とにかく飛んでくるサメに気を付けて!と思うだけでした。
このコラムをさせてもらっていなかったら、絶対に出会っていなかったであろう「シャークネード」。この作品に巡り会えたことだけでも映画ナタリーさんに大感謝です。そして何より驚きなのが、この「シャークネード」がこのあと何作も続いているということです。こりゃ観るしかないでしょう。「シャークネード」から「国宝」まで、映画って本当に面白いですねぇ。これからもいろんな作品を観て勉強したいと思います!
編集部から一言
駒場さんはプライベートで映画を観に行ってるのかな?と気になっていたところ、「国宝」を観たと原稿にありうれしかったです。サメ映画というジャンルの存在や、「映画って『国宝』と『シャークネード』の両方があるからいいんだ」と気付いてくれたことも、連載タイトルにもなっているフレーズ「そんなこと言うてた?」という部分が初めてなかったと言ってることも最高でした。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が難しいと言っていた人間を「難しいことも伏線もないですし、あったとしても、わかっててもわかってなくても何も思いません」という境地にたどり着かせた「シャークネード」、すごい映画なんじゃないでしょうか。
「シャークネード」(2013年製作)
低予算の娯楽映画を数多く世に送り出し、熱狂的なファンも多いアメリカの制作会社・アサイラムを代表するシリーズの1作目となるパニック映画。カリフォルニアを巨大ハリケーンが直撃した影響で、ビーチには人食いザメの大群が現れる。さらにサメの大群を巻き込んだ3本の巨大な竜巻が発生し街を襲うという地獄絵図の中、サーファーのフィンはロスで暮らす家族の救出に向かう。
- 駒場孝
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1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。
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