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ミッシェルカバーに始球式!奥田民生、極寒ズムスタで贅沢「ひとり股旅」

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「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」で行われた始球式の様子。

「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」で行われた始球式の様子。

奥田民生が昨日11月28日に広島・Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島にて、単独ライブ「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」を開催した。

「ひとり股旅」は奥田による弾き語りライブで、大規模なものは2004年に広島・旧広島市民球場、2011年に広島・厳島神社で行われている。この日はスタジアムに全国各地からファンが集まり、スタンド席は満員状態。開演時刻を迎え、バックスクリーンに広島東洋カープのユニフォームを着た奥田の姿が映し出されると大きな拍手が沸き起こった。観客の歓迎を受けながらグラウンドに足を踏み入れた奥田は、ゆったりと二塁付近に作られたベース型のステージに向かう。奥田が準備を終えると審判から「プレイボール!」の声がかかりライブの幕が上がった。

観客の視線を一身に浴びながら、彼が1曲目に届けたのは「674」。陽が差し込むスタジアムに、のどかな歌声と素朴なギターの音色が響く。「えんえんととんでいく」のあと、奥田は「どもー!」と短く挨拶し、「イージュー☆ライダー」を伸びやかに歌い上げた。ヒット曲でエンジンをかけたところで彼は、立ち上がって360度を見渡しながら観客に挨拶。「ようこそお越しいただきました。ありがとうございます。寒い中、これからちょっとの時間……ちょっとじゃないですけどお付き合いいただきたいと思います」と述べ、「まさか、新しいほうでやることになるとは……」と11年前に開催した旧広島市民球場公演を振り返る。さらに、開催が11月になった理由について「カープが日本シリーズに出るかもしれない。いや出る!と見越してのスケジュールです」と説明するも、「私の考えは甘かった! 日本シリーズにでて優勝していたら、皆さんは寒さを感じないでしょう。ところがどうでしょう、この底冷えは……」と愛するカープの今季の成績不振を憂い、「僕はこのまま半袖で最後までいけるんでしょうか? 皆さんも寒いと思いますが、なんとかしてください」と述べた。

続いてのブロックは、ウグイス嬢がアナウンスする曲を演奏するというユニークな形で進行。「ここでウグイス嬢に曲を決めてもらいましょう。しかも被らないようにユニコーンの曲も」という奥田の言葉に続いて、ユニコーンの「デーゲーム」のタイトルが読み上げられる。奥田は「僕の曲じゃないですよね」とつぶやきながら会場にぴったりな1曲を披露した。ウグイス嬢が続いてアナウンスした1曲は「雪が降る町」。奥田は「あ、イントロどうだっけ?」と言いながら、冷たい風を浴びながらギターをつま弾いた。

その後、「わりとたらたらやりますから」と宣言した彼は、その言葉通りマイペースにライブを進めていく。跳ねるようなギターに合わせて歌われた「遺言」、ドライブ感のあるギターフレーズが光る「何と言う」を続けたあと、奥田は机の上のメトロノームに手を伸ばし、リズムを取りながら「野ばら」を披露する。彼は途中で「いいところでしょ?」と地元を自慢し、「野球選手にとっては最高ですよ。世界で一番いいと思います。そんな球場を持ちながら……あ、失礼しました!」とカープの成績不振を再びぼやく。そしてぶつぶつ言いながら「私はオジさんになった」をまったり歌い上げた。開演から約1時間が経過した頃、奥田は「休憩に入る前に、皆さんがご存知の曲を歌って、トイレに行きたいと思います」とマツダのCMソングとして使用されている「風は西から」の英語バージョンをギターを軽やかにかき鳴らしながら歌った。

30分の休憩時間挟んで始まった後半戦は、奥田を筆頭にチャットモンチー、PUFFY、フジファブリック、ROLLY、木村カエラ、真心ブラザーズといったSMA所属アーティストたちが歌うカープの応援歌がスクリーンで上映される。曲の終盤では「たっみっお!」のコールが起こったり、真っ赤なジェット風船が空高く舞い上がったりお祭りムードに拍車をかける。さらに奥田がバッターを務め、ピッチャーを前田健太選手、キャッチャーを大瀬良大地選手が担当する始球式も実施。奥田が勢いよく振ったバットは残念ながら球には当たらず空振りとなったが、粋な演出にスタジアムの熱気は上昇する。奥田もガッツポーズをしながら小走りでステージに戻った。奥田は「寒くなってきた! 風吹いてきた」と寒さに震えながらも、勢いよくギターをかき鳴らし、声を張り上げながら「SUNのSON」「メリハリ鳥」を披露。さらに陽が落ちたスタジアムに似合う「The STANDARD」でゆったりとした空気を作り出した。

「人の力を借りて盛り上げていきたいと思います」という言葉から始まったカバーコーナーでは予想外のナンバーが続き、オーディエンスをどよめかせた。奥田が最初に披露したのは事務所の後輩・西野カナのヒット曲「Darling」。まったりとした声とキュートな歌詞のギャップに、笑い声があちこちで起こる。さらに彼は吉田拓郎の「結婚しようよ」、同郷の先輩である矢沢永吉の「アイ・ラヴ・ユー、OK」、FLYING KIDSの「幸せであるように」、ケツメイシ「さくら」をカバー。中でも「アイ・ラヴ・ユー、OK」では矢沢を彷彿とさせる渋い歌声と、鋭いシャウトを響かせスタジアムに熱狂の渦を作り出した。カバーコーナーはそのあとも続き「もうちょっと人の曲を」という言葉から真心ブラザーズの「人間はもう終わりだ!」がフルコーラスで披露される。そして観客を驚かせたのはカバーコーナーの最後を飾った1曲。「それでは『世界の終わり』」という言葉から、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」が始まる。奥田はがむしゃらにギターをかき鳴らしながら、ほんのりしゃがれた声で名曲を熱唱した。

しかしひとしきりカバーを披露したあと、奥田は「まったく許可も取らずに。今、思えばこれはWOWOWで生中継が……」と神妙な面持ちに。小声で「すいませんでした」と謝罪し、観客の笑いを誘った。すでにこの時点でゆるい雰囲気だったが、その後はさらに奔放な流れに。奥田は、リズムマシンにスライドギターを重ね演奏を始めるもしっくりこない様子で「違うね」と言い放ち演奏をストップしたり、自身が所属するサンフジンズの「じょじょ」「ハリがないと」の2曲を「皆さん、今年有望な新人がデビューしたんですよ」「いい曲を引っさげてデビューしたサンフジンズを僕は応援してます」というアピールを交えつつ披露したりと気ままにライブを進めていく。一方で、深く味わいのある声で「無限の風」や、ユニコーンの「早口カレー」を弾き語りオーディエンスを酔わせた。

続くMCでは奥田が「もう僕はこんな大きなことはしません。これを機に普通の人に戻ります」「50にもなると、だんだんお祭りが恥ずかしくなってきまして。今日はいい思い出になりまして、ありがとうございます」と感謝の思いを伝え、「CUSTOM」へとつなげる。しかし、ワンフレーズ歌ったところでギターのチューニングが合ってないことに気付いた奥田は、「あ!」と演奏を中断。するとスコアボードにエラーを示す「E」の文字が映り、スタジアム内に爆笑が響いた。仕切り直しの末、全身全霊で「CUSTOM」を届けたあと奥田は、「また来年もこのスタジアムに野球を観にきたいと思います。皆さん、来年も広島カープを応援しましょう。期待してます、期待し続けています。いつかその日がくるでしょうか? どうなるんでしょうか? 行ってしまうのか、マエケン! 早く帰ってきてね」とカープ愛を爆発させる。そして「先のことはわかりませんが、万が一またこういうことがあったらよろしくお願いします」と、先ほどの発言を撤回。ファンを大いに喜ばせて、本編ラストの「さすらい」をオーディエンスとともに大合唱した。

グラウンドを去る奥田を拍手で見送ったあと、観客はアンコール代わりに巨大なウェーブを巻き起こす。ウェーブがスタンドを2周ほどしたとき、背番号「082」のカープのユニフォームを着た奥田がグラウンドに再登場。「寒い中、最後までありがとうございます!」と口にした彼は、ジャカジャカとギターを鳴らし「最強のこれから」をシャウト混じりに熱唱した。さらに「さっきは英語ですいませんでした」という言葉から、スタジアムに捧げるように「風は西から」の日本語バージョンを披露。奥田の朗々とした歌声にあわせて観客もシンガロングし、温かな一体感がスタジアムに漂う。そして「ありがとーう!」という挨拶をもって奥田はスポットライトを浴びながらステージを離れ、スタンド席に近付いていく。そして彼はボールをスタンドに投げながら場内を1周し、深々と丁寧な一礼をグラウンドに捧げた。

奥田民生「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」
2015年11月28日 Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島 セットリスト

01. 674
02. えんえんととんでいく
03. イージュー☆ライダー
04. デーゲーム
05. 雪が降る町
06. 遺言
07. 何と言う
08. 野ばら
09. 私はオジさんになった
10. 風は西から(英語バージョン)
11. SUNのSON
12. メリハリ鳥
13. The STANDARD
14. Darling
15. 結婚しようよ
16. アイ・ラヴ・ユー、OK
17. 幸せであるように
18. さくら
19. 人間はもう終わりだ!
20. 世界の終わり
21. じょじょ
22. ハリがないと
23. 無限の風
24. 早口カレー
25. CUSTOM
26. さすらい
<アンコール>
27. 最強のこれから
28. 風は西から

※記事初出時、セットリストの一部曲名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

撮影:三浦憲治 / 山本倫子

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