今年結成15周年を迎えたCzecho No Republicが、10月5日に東京・豊洲PITでライブイベント「DREAM SHOWER 2025」を開催する。
「DREAM SHOWER」は、Czecho No Republicが結成当初から行ってきた自主企画イベント。2010年に東京・shibuya eggmanで初開催されたのち、東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)や大阪・大阪城音楽堂でのワンマンライブ、東京・新木場STUDIO CASTでのオムニバスイベントとして規模を拡大して催されてきた。
特別編として行われる今回の公演には、過去にも「DREAM SHOWER」に出演しているgo!go!vanillas、sumika、SUPER BEAVERがゲストとして参加。4組による豪華かつ貴重な対バンライブが実現する。音楽ナタリーでは本公演の開催に合わせ、Czecho No Republicの武井優心(Vo, G)が各ゲストバンドのフロントマンと1対1の対談を行う特集を展開。彼らはお互いのバンドをどのように見てきたのか? 武井が3組に声をかけた理由とは? 率直な思いを語り合ってもらった。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / YOSHIHITO KOBA(P1)、苅田恒紀(P2)、小柴樹(P3)
公演情報
DREAM SHOWER 2025
2025年10月5日(日)東京都 豊洲PIT
<出演者>
Czecho No Republic / go!go!vanillas / sumika / SUPER BEAVER
チェコは「マジで音楽が好きな人たち」
渋谷龍太(SUPER BEAVER) チェコとは同じレーベルになってからの付き合いで、もう10年くらいだけど、最後に対バンしたのはいつだろう?
武井優心(Czecho No Republic) 2018年の「DREAM SHOWER」に出てもらったのが最後かもしれない。
──対バンの機会がなかった7年間も会ったり連絡を取ったりはしていたんですか?
武井 たまに会ったりしてました。でも俺、自己嫌悪に陥ったことが一度あって。
渋谷 うん。
武井 コロナ禍以降、自分のバンドとあんまり向き合えなくなり、活動を休んでいるような状態になったんですよ。その時期に事務所でひさびさにぶーやん(渋谷)に会って。「優心さん!」って声をかけてくれたのに、うまく対応できなかったんだよね。「今の俺って、ぶーやんにどう見られてるんだろう?」と思ったら、以前のように友達みたいな感じで接することができずにコソコソッとしちゃった。そしたら、ぶーやんも空気を読んでサッといなくなった。そのときに「俺はぶーやんにビビってるし、自分の今にコンプレックスを感じてるな」と気付いてからは、ちょっと会えなくなりました。
渋谷 やっぱり優心くんって、変なところで自意識過剰なところがありますよね。
武井 えっ?
渋谷 あとから話を聞いたときに、「えっ、あのときそんなことを思ってたの?」「なんでそこまで考えちゃうの?」って感じることが多い。それはいいところでもあるけど、よくないところでもありますよね(笑)。
武井 あははは。
渋谷 当時の優心くん、圧倒的に覇気がなかったんですよ。そういうときは無理に焚きつけたり、変に優しくしたりしないほうがいい。来たるべきタイミングが来ればおそらくまた話せるようになるだろうけど、「あっ、今はそのときじゃないんだな」となんとなく思った覚えがあるかな。
武井 それが2021年から2022年頃の話ですね。
──チェコのリリースやライブがなかった時期、渋谷さんはどのような思いで見守っていましたか?
渋谷 「早くガシガシ活動してよ」って。俺、チェコのことがすごく好きだから、「また一緒にやりたい」と思ってました。一緒にやれるタイミングをずっと待っていたし、だからこそ今回の話をもらったときには二つ返事でOKさせていただきました。
武井 「もしよかったら出てくれないかな?」みたいな話をしたら、2秒くらいで「出ます」と言ってくれて。本当に2秒ぐらいで。あれ、すごくうれしくてちょっとウルッとした。
渋谷 いやー、チェコとならやりたいなと思うんですよね。我々の事務所(エッグマン)は、バンド同士の横のつながりがあんまりない気がしていて。だから「同じ事務所だから」ということは実はあんまり関係ない。音楽も人間も好きだから、一緒にやりたいと思ったという。
──チェコのどのようなところが渋谷さんをそこまで惹き付けるのでしょう?
渋谷 まず、音を聴くと「マジで音楽が好きな人たちなんだな」とわかる。そこがすごくいいですね。あとは、ステージに華があるのも俺にとってはデカいかな。俺は高校生の頃から“ザ・バンドマン”みたいな人が好きで。ステージに立った瞬間、誰がボーカルで、誰がギターで、誰がベースで、誰がドラムなのか、すぐにわかるバンドが好き。そうでなければバンドマンじゃないくらいに思っているんですけど、チェコはそういうバンドだし、ステージに立ったときにすごく華がある。かつ音楽人がやってる音楽だなとも思うから、もう好きになる条件しかないなって感じです。
武井 この取材の音声、あとでもらっていいですか?
渋谷 もらってどうするの?
武井 元気ないときに聞くの。
渋谷 そうなんだ(笑)。
SUPER BEAVERに「カッコいい」って言ってもらいたい
──10月5日の「DREAM SHOWER 2025」で、Czecho No RepublicとSUPER BEAVERの7年ぶりとなる対バンが実現します。武井さん、SUPER BEAVERを誘った理由を教えてください。
武井 ビーバーに声をかけたとき、俺らは「Mirage Album」(2024年11月発表の9thアルバム)を出す前でライブの数が少なくて。「これからもっとやっていきたい」という思いしかない状態でした。その状態でビーバーに「一緒にやりたい」と言うなんて……今のチェコの活動の規模感とかを考えると、かなりイタい。なのになぜ声をかけたのかというと、その理由はいっぱいあるけど……今日ここに来る途中にいろいろ考えたんですよ。
渋谷 はい。
武井 最初はきれいな言葉ばかり出てきたけど、「そうじゃないな」と思って。心の奥に入っていったら、「俺、Czecho No RepublicをSUPER BEAVERのみんなに見てほしいんだろうな」「そんでカッコいいって言ってほしいんだろうな」という、すごくエゴイスティックな欲求に気付いたんです。カッコいいと言ってもらえたら、それがきっかけでまたがんばれるんじゃないかなって。
渋谷 ということは、完全に見切り発車だったんですね。「自分たちは今後こういうことをやっていきたくて、こういう理由からSUPER BEAVERを呼びました」じゃなくて、「なんかもう声かけちゃった」みたいな。気持ち先行で行動に出ちゃったような衝動的な誘い方は、オファーされる身としては一番うれしい。チェコと俺らの関係に打算的なものはないってもともとわかっていたけど、バンドをやるうえでそういう感覚って一番大事だよなと改めて思います。
──当日のライブが楽しみですね。
武井 そうですね。お客さんが喜んでくれるだろうなと思ったことも、ビーバーを誘った大きな理由なので。
渋谷 基本的にどんなステージでも「全力でやる」という心構えは変わらないんですけど、特別な思い入れがあるイベントだと、付加価値がどうしても芽生えちゃうときがあって。当日の俺はそんなふうになる予感がしています。なので、いただいた時間で全力でライブをやるのみ。そしてチェコに「次やるの嫌だな」って思わせたい。
武井 もう思ってる(笑)。
渋谷 いやいや(笑)。呼んでもらった身としてはそれが役割だと思うし、俺らがライブをすることで優心くんやチェコのギアがまた上がるんだったら最高。
武井 主催ということで、プレッシャーはもちろんあります。出演してくれるバンドはライブモンスターたちばかりなので、俺らがしょうもないライブをしてしまったら本当に取り返しがつかないし。正直ずっと怯えていて……そうですね、取り乱した夜もありました。
渋谷 その話聞きてえ……!
武井 (笑)。メンツが出そろったのが今年の2、3月頃だったんですけど、そのときに「成長ペースが今のままだったら、10月にライブモンスターたちに叩き潰されて死ぬ!」と思って、ガッとギアを入れたんですよ。ライブもメンタルも変えていこうと試行錯誤していく中で、うまくいくこともあれば、空回りすることも多々ありました。つかみかけて、失っての繰り返しだったんですけど、ちょっとずつ上がっている感覚はある。トライ&エラーを重ねて、ゆっくり自信を付けていったんです。だから今は純粋に楽しみ。気合いもすごく入っています。
──昨日もいいライブができたそうですね。
武井 そうなんです。忘れらんねえよとのツーマンだったんですけど、チェコのライブの一番おいしいところが見えた気がしました。尻尾は捕まえたから、あとはそいつの背中に乗って飛ぶだけですね。