NoGoD「Le: VOYAGE」特集|我が道を突き進んできた20年──激動の軌跡とさらなる未来を語る

2022年から、団長(Vo)、Shinno(G)、K(Dr)、hibiki(B)、Iyoda Kohei(G)の5人体制で活動中のNoGoD。メンバーチェンジなどさまざまな局面を経て、結成20周年イヤーを迎えた彼らが、2枚目のベストアルバム「Le: VOYAGE」をリリースした。

「Le: VOYAGE」は2016年から2024年までにリリースされた楽曲のうち21曲に、新曲「I Can't Say Goodbye」を加えた2枚組の作品。そこには、変化しながらもNoGoDらしさを貫いてきた戦いの記録が刻まれている。

音楽ナタリーではNoGoDの5人にインタビュー。作品とライブを振り返りながら、激動の10年とこの先の展望について語り合ってもらった。

取材・文 / 後藤寛子

昔の曲が息を吹き返したような感覚

──まず、結成20周年を迎えたことについて、どう感じていますか?

団長(Vo) このバンドはメンバーチェンジが多くて、ほぼ20年やってるのは俺とKだけで。たぶんそれぞれ感じ方が違うと思うんですけど、俺としてはあっという間だったなと思います。というのも、ずっと前に進むことしか考えていなかったから、過去を思い返して懐かしむことをしてこなかったんですよ。地続きで好きなことをやり続けてきただけなので、20年経った実感や感慨深さは特にないですね。

Shinno(G) 僕も後ろを振り返らず進んできた感覚があって、気が付けば今に至るという気持ちですね。常にそのときのピークを積み重ねて、迎えるべくして20周年を迎えたというか。こういう取材の場やライブで過去を振り返ることはありますけど、20周年だからと意識することはあまりないです。

──今年1月から6月にかけて、各時代をフィーチャーしたツアー「NoGoD 20th Anniversary Memorial Showcase【Re:Chronicle-2005~2024-】」を開催していましたが、そういう形で過去に向き合ってみて、何か意識する部分はありましたか?

団長 楽曲に関しては変化を感じましたね。演奏しているメンバーが違うということもあって、音楽的な解釈がアップデートして昔の曲が息を吹き返したような感覚がありました。

K(Dr) でも、昔の曲をツアーでやって「この曲を作ってから、そんなに時間が経ってるんだ?」と思うことも多かったです。「あれ? 去年くらいじゃなかったっけ」と思ってしまうくらいだったので、そこまで懐かしい印象はなかったかも。

Shinno ライブで演奏しているときは、その時々のベストを尽くしているだけですからね。改めて振り返ると、メンバーチェンジで新しい風が吹いたり、雰囲気が変わったと感じたりはします。団長がよく「今が一番いい状況だ」とMCで言うんですけど、本当にそうだなと思ってやってきました。

アイデアで超えられる自信がある

──hibikiさんは2018年からサポートを務めて、2022年に正式加入されました。ツアーで過去の曲をやってみていかがでしたか?

hibiki(B) 周年ツアーは目まぐるしかったですね。今までいろんなバンドで演奏してきましたけど、NoGoDというバンドはけっこう特殊で。

団長 ええっ?

hibiki 作った時期に関係なく、いろんな曲をライブで披露するんですよ。封印される曲が少ないというか、隅から隅まで楽曲を活用するから、すべてに対応するのは大変なんです。もう対応し切れないから、最近はスイッチを切り替えて、自分流のベースを思いのままにぶち込んでいます。本当にいい曲が多いんですけど、インディーズ期に関しては、僕からすると音楽の常識を破壊されるような構造のものもあって。

団長 ははは! 音楽というものをよく知らなかったから(笑)。ツアーでは、hibikiちゃんに「こうすることによって音楽として成り立つんです」ということをたくさん教えてもらいました。15周年での過去アルバム再現ライブ「NoGoD Chronicle 2005-2020【Review】」のときも、hibikiちゃんが全部譜面に起こしてくれて。俺ら、譜面なんて初めて見たから。

K うん。

hibiki ええ! 譜面を作ってなかったんですか。

団長 みんなで演奏しながら仕上げちゃってたから。

hibiki そうなんですね。そういう話を聞くと、僕もこの20年一緒に歩みたかったなと思います。一緒にこの曲たちを作りたかった。

団長 まあまあ近くにはいたけどね。隣の隣のクラスくらいの距離感(笑)。

hibiki そうそう(笑)。でも、「Chronicle」のときはオリジナルに忠実だったので、今回のツアーでは、自分の色を落とし込めたと思います。

団長 むしろ俺たちはそれを求めていたんですよ。ツアーを経て、新しい解釈、新約聖書的な仕上がりになっていますね。

──同じく2022年からサポートを務められているIyodaさんとしてはどうですか?

Iyoda Kohei(G) NoGoDは作品数が多いから、情報量がすさまじくて、なかなか時系列を整理しきれてなかったんですよね。まずはそのときのライブでやる曲を優先的に覚えるから、年代と作品を紐付けて理解できていなかった。そこをツアーの半年間でちゃんと学べたし、NoGoDの歴史を知るという体験ができたことは、今後にも生きてくると思います。

──hibikiさんがおっしゃっていたように、自分の色をどういうふうに落とし込むかという点での意識は変わってきましたか?

Iyoda ギターの場合は2人でちゃんと棲み分けをして、役割を振り分けて空間を埋めないといけないので、常にShinnoさんに相談しながらやって来ました。今までやっていた振り分けのままの楽曲もあれば、ツアーで変わったものもあります。その中で、「僕だったらこうするんですけど、どうでしょうか?」と相談することもありますけど、そんな奇抜にガラッと変えてはいないつもりです。

K ベーシックなものがある中で、Koheiちゃんの味を出してる感じだよね。

団長 若いのに、すごく気を使ってくれるなーと思うよ。

Iyoda ははは! やっぱりメロディの部分やギターソロとか、お客さんの耳に残るところは、音源のままでいきたいなと。

──ギターとベースでは役割やアプローチが違いますしね。

hibiki 僕の場合は、音源のベースよりも必ずいいものが提供できるという自信がありますから。アイデアで超えられる自信がある。

団長 おお、カッコいい!

hibiki 華凛ちゃん(NoGoDの元ベーシスト)のこともよく知ってるし、ライバルですから。たぶん華凛ちゃんも華凛ちゃんで「あいつよりいいベースを弾く」と言ってくると思う。切磋琢磨しましょう。

──いい関係性ですね。

Shinno 加入したメンバーに対する接し方や「こうしてほしい」というスタンスは、人によって違うと思うんですよね。僕も途中加入して「NoGoDってなんだ?」というところから始まって、ベーシストが変わり、ギタリストも変わる中で活動してきましたけど、加入してくるメンバーに対しては毎回「この人ならこうだろう」という個性を探るようにしています。hibikiくんにはhibikiくんらしい、KoheiくんにはKoheiくんらしいと思うことをやってもらったうえで、「こういうふうに変化させようかな?」って。もちろん団長とKくんの“らしさ”はブレずにありますし、今、表現でも音色の部分でもメンバー個々のらしさがうまく出せる環境になってきたと思います。だから、言い方は悪いかもしれないですけど、すごくラクになりました。

団長 俺も今、すごく歌いやすいですよ。みんなのやりたいことが明確になって、それぞれ出したい音の帯域が違うので、レイヤー感がきれいなんです。昔は若かったから、「自分の出したい音はここだ」「ここのレンジまでは俺の領域だ」とお互いに主張してぶつかり合って、バンドの抜けの悪さにつながっていたけど。実はNoGoD、中音はスッキリしてるんです。でも、ゲストボーカルを迎えると、大抵「音デカいっすね!」と言われる……メタルやってると耳がバカになってくるのかな。

K “団長”が“難聴”になってるかもしれない。

hibiki 韻を踏むのがうまい(笑)。

制作スタンスが大きく変わった結成10周年の時期

──ベストアルバムには2016年発表のアルバム「Renovate」から2024年発表のアルバム「神髄-OMNIBUS-」までの楽曲がピックアップされているということで、過去の作品についてお話を伺っていきたいと思います。まずアルバム「Renovate」にはどんな印象がありますか?

団長 活動を10年続けてきて、それまでのやり方ではもう新しいものが生み出せないと感じていた時期でした。バンドとしての制作スタンスが大きく変わったのが、ちょうどその頃。もっとメンバーの個を出していくという方向にシフトしたんです。お客さんが求めている曲は一旦置いておいて、それぞれ自分が何をしたいかをミクスチャーしていく、1人ひとりが楽曲を好きなように仕上げていくという方向に切り替わったので、「Renovate」は楽曲がバラエティに富んでる印象があります。

「Renovate」ジャケット

「Renovate」ジャケット

──10年って変化が生じるタイミングですよね。

団長 そうですね。未発表の過去のデモをリノベーションして出すというコンセプトで「Renovate」というアルバムを作って。自分たちの中でも何か変化を作らなきゃ、ということに意識を向けていた気がします。

K 僕は、「Renovate」の制作自体はワクワクしていました。一度は選ばれなかった曲たちに改めて向き合ったらどうなるのか?と考えつつ、仕上げていくうちにちゃんとNoGoDの曲だなと思えたりして楽しかったです。

Shinno 一度全部のデモを並べてみたことが印象深く残っていますね。過去のデモをザーッとホワイトボードに書き出して。

K 「団ちゃん弾けてない」っていう仮タイトルの曲があったのを覚えてる(笑)。

団長 「ギターが弾けてない」「リフ弾けてない」みたいな仮タイトルばっかりだった(笑)。

Shinno 仮タイトルってだいたい面白いんですよ。「イクエ」っていう曲があったんですけど、なかなか採用されなくて揉めたんだよね。僕が「ずっと『イクエ』入れたい」って言ってた。

団長 「イクエ」あったねー!(笑)