「ラブソングは滅べばいい」──そんな衝撃的なタイトルのシングルをリリースするのは、2024年7月からNetflixで配信されている男性同士の恋愛リアリティショー「ボーイフレンド」への出演で一躍スターの仲間入りを果たしたシュンことShun Nakanishiだ。「ボーイフレンド」でも音楽家の一面を見せていたShunは、2025年8月にリリースしたデビューシングル「Rewind」を機に5カ月連続でシングルをリリースすることを予告しており、「ラブソングは滅べばいい」はその2作目にあたる。
今回のインタビューでは、「ラブソングは滅べばいい」について深堀り。またShunの音楽的なルーツやShun Nakanishiとして叶えたい目標についても話を聞いた。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 大橋祐希
宇多田ヒカルの影響で始めた音楽制作
──Shunさんは、もともとどんなジャンルの音楽が好きなんですか?
R&Bやポップスですね。女性シンガーの曲を聴くことが多くて、一番好きなアーティストは宇多田ヒカルさん。あとEDMも好きなので、DJやトラックメイカーの曲もよく聴きます。
──音楽制作を始めたのはいつ頃、どのような経緯で?
大学から支給されたMacBookに音楽制作ソフトのGarageBandが入っていたんです。宇多田さんがMacで楽曲制作をしていると知っていたので、「あっ、こういうソフトがあれば曲を作れるんだ」と思って使ってみたのがきっかけでした。それが18歳の頃だから、自分で曲を作り始めてからもう6、7年くらい経ちます。
──制作中は、どんな瞬間に喜びを感じますか?
曲作りの最初の段階では「これでいいの?」みたいな瞬間の連続なんですけど、ちょっとずつ形になっていくとうれしい気持ちになります。あと、一度「完成だ」と思っていたものをちょっといじって、さらによくなったときはもっとうれしくなりますね。曲を作り始めた頃は、そんなに没頭していたわけではなく、気が向いたときに作る程度。遊びのような感覚でSoundCloudに曲をアップしていました。だけど、「もっといいものを作りたい」という欲がだんだん芽生えてきて、ここ2、3年で本格的に音楽活動をしたいと思うようになりました。
「ボーイフレンド」出演が音楽活動に与えた影響
──Shunさんは、2024年7月より配信中のNetflixの恋愛リアリティ番組「ボーイフレンド」に出演されています。番組出演以前はどのような生活を送っていたんでしょうか?
「ボーイフレンド」に出る前は、毎日「自分はなんのために生きているんだろう?」という感じでした。毎晩飲み歩いては、朝帰りを通り越して次の日の“夜帰り”だったし。バイトをしようにも、やりたいと思える仕事がなくて、ただただ堕落していました。
──「ボーイフレンド」出演のきっかけは、InstagramのDMだったとか。
そうです。制作チームから「出演しませんか?」とスカウトされて。最初は「自分には無理かな」と思ったんですけど、事務所の社長さんにも「出たほうがいい」と後押ししてもらってから、「出てみたい」「一歩踏み出さなきゃ」と出演を決めました。今はもう堕落していた頃の自分には戻りたくないし、勇気を出して出演してよかったなと思っています。
──番組出演は、創作活動にも影響を与えたんでしょうか?
「ボーイフレンド」に出たことで金銭的な余裕ができて、今は生活も安定しています。心の余裕もできて、何事も「自分には無理だろう」じゃなくて「もしかして僕にもできるんじゃない?」という考え方に変わりました。それで「音楽で食べていきたい」という気持ちが固まったんです。たぶんですけど、「ボーイフレンド」に出る前だったら今のような歌詞も書けなかったと思うんですよ。救いようのないことをつらつらと書くだけで終わっていたでしょうね。
普通じゃないのが好き
──Shun Nakanishiとしての音楽活動は今年からですね。Haze glitch名義でも楽曲を発表されていますが、そちらとの違いは?
Haze glitchはインスト中心で、自分の声で表現するのがShun Nakanishi。もともと僕の作るトラックにボーカルを入れたらダサくなるんじゃないか?って思っていたんですよ。だけどやってみたら意外と合うことに気付いて、それから曲を作るのがより楽しくなりました。Shun Nakanishiではポップスをやりたいという明確なイメージがあります。
──Shunさんの思い描くポップスとは、どのようなものですか?
まだ答えを見つけられてなくて、「ポップスの定義ってなんだろう?」とよく考えます。ポップス=聴きやすい曲だとしたら、自分の曲はポップスじゃないのかもしれないと思ったりもします。どうしても変なリズムにしてみたり、ちょっと普通じゃないメロディの曲を作りたくなっちゃうんですよ。メロディを詰め込みすぎて、息継ぎの部分がなくなっちゃうこともあるけど、そういう曲が好きだから、修正せずに進めてしまうことも多いです。
──そうなると、歌うのが大変では?
そうですね。ファンからも「歌いづらい」と言われるし、自分でも歌いづらいと思っていて……。この前3rdシングルのレコーディングをしたんですけど、その曲も歌うのが難しくて。今後ライブをすることになったら、自分の曲をちゃんと歌えるかどうか心配です。1stシングルの「Rewind」は歌いづらいと言われることが多かったから、今回の「ラブソングは滅べばいい」は、シンプルなメロディとメロウなサウンドでまとめてみました。だけど、それが正解なのかもわからないです。友達からは「『Rewind』をずっと聴いているけど、メロディが覚えられない」「覚えられないから延々とリピートしちゃう」と言われて、何回も聴きたくなるのはいいことなのかもとも思ったりして。覚えづらいメロディのままでいいのか、もっと変えた方がいいのか……。まだわからないので、いろいろと試しているところです。
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今の自分ならではの片思いソング