氣志團が主催する音楽フェスティバル「サントリー オールフリー presents 氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~ powered by Epson」が11月15日と16日の2日間、千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催される。
2012年より千葉・袖ケ浦海浜公園を舞台にした大型フェスティバルとして行われてきた「氣志團万博」は、2024年に会場を幕張メッセに、開催時期を11月に変更。海と潮風と太陽という野外ならではのロケーションをバックにした夏フェスから屋内会場の秋フェスに様式を変化させながらも、その個性的なラインナップとエンタメ性を追求した「氣志團万博」の中核は揺るがないまま。さらに天候に左右されることがなくなったことから快適性も高まり、2日間幅広い世代のオーディエンスを楽しませて大盛況のうちに終了した。
今年も同じく幕張メッセでの開催を1カ月半後に控え、音楽ナタリーでは氣志團の綾小路 翔にインタビュー。2024年の会場変更に至るまでの経緯や、幕張開催を終えての振り返り、今年の開催に向けた意気込みなどを熱く語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一インタビュー撮影 / はぎひさこ
公演情報
サントリー オールフリー presents 氣志團万博2025 ~関東爆音パビリオン~ powered by Epson
2025年11月15日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30
<出演者>
ASKA / 打首獄門同好会 / 岡崎体育 / OKAMOTO'S / 氣志團 / クリープハイプ / 聖飢魔II / 7ORDER / 10-FEET / 20th Century / ももいろクローバーZ / ヤングスキニー / ROTTENGRAFFTY
OPENING CEREMONY ACT:細川たかし
WELCOME ACT:柳家睦&THE RATBONES
2025年11月16日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
OPEN 9:00 / START 10:30
<出演者>
アイナ・ジ・エンド / 氣志團 / 君島大空 合奏形態 / ゴールデンボンバー / ジュースごくごく倶楽部 / 私立恵比寿中学 / -真天地開闢集団-ジグザグ / 超ときめき♡宣伝部 / Dragon Ash / NEWS / BUCK∞TICK / RIP SLYME / レキシ
OPENING CEREMONY ACT:秋山竜次(ロバート)
WELCOME ACT:DJダイノジ
コロナ禍と気候の変化を受けて11月開催へ
──2012年から袖ケ浦海浜公園で行われてきた「氣志團万博」は昨年初めて幕張メッセで開催され、今年も同じ会場で行われます。まずは昨年の会場変更に至った経緯を教えていただけますか?
2020年にコロナ禍が起こりまして、我々の業界は本当に何もできない状況が続いた中で「氣志團万博」もいろんな余波を受けました。ご存知の通り、2020年は初めてオンラインでの開催に踏み切りましたし、2021年は過去の「氣志團万博」の映像でつなぐ形になった。その間に、いろんな事情で「氣志團万博」から撤退したスポンサーさんもいましたが、それでも事務所と相談して「なんとかがんばろう!」ということで行ったのが2022年。まだ袖ケ浦での開催10周年をやれていなかったので、大きくやろうじゃないかということで3日間開催したわけです。ただ、開催した9月半ばの3連休はかつての気象状況とは変わって、台風が直撃する時期になっていたんです。
──確かに、ここ数年の気象状況は酷暑を含めて昔と大きく変化しています。
その年もゲリラ豪雨が起きたりとか、いろんなことがありました。で、10周年を節目にいろいろ見直そうということになったんです。ちょうど氣志團周りを含め社内の体制も変わったタイミングでしたし、コロナ禍を経て何ができるのか、何ができないのかを1つずつ検証していった。そんなことをしていたら、2023年はどうしても話が進まなくて。
──それが2023年の開催見送りにつながったと。
はい。開催に向けて1年以上かけて話を進めていく中で「Zeppクラスに規模を縮小したほうがいいんじゃないか」という声も周りから上がってきて。だとしたら、そもそもやろうとしていることが違うので、僕は「規模感を落とすんだったら、もうやらないほうがいい」と思ったんです。周りは協力的だったけど、僕が極端すぎるんですよね(笑)。それで、「じゃあ、お互いにいいところを探そうよ」ということで出た答えが、まず11月に開催するということ。袖ケ浦で「氣志團万博」を始めた頃の9月は夏フェスにとって最後のブルーオーシャンみたいな時期だったんですけど、今や日本全国どこでもフェスをやっていて、特に9月の3連休なんてみんなもうアーティストの取り合いでブッキングがすごく大変になってきたわけです。そうすると、個性を出しにくくなるようなこともあった。で、そうこうしている間に10月も全然暑いし、なんなら10月まで台風が来るような気候に変わった。「だったら思い切って誰もやっていないタイミングにやろうよ」ということで、11月を提案したんです。
幕張からまた自分の理想に向かっていけばいい
──ただ、11月は野外で開催するには気候的にギリギリですよね。
最初は屋外でやるつもりでいたんですよ。なぜなら、僕の体感だとここ数年は11月1週まではTシャツで過ごせて、2週目から急激に寒くなるというイメージがあったから。もう日本全国、屋外フェスをやってないのは1月と2月ぐらいじゃないですか。12月になるとまた年末は混んでくるから、だったら11月じゃないかと。僕はそういう逆張り男なところが若干あるんですね(笑)。
──結果として会場は屋内の幕張メッセでした。
そうなんですよ。というのも、たまたま「2024年11月に会場が押さえられたので、幕張メッセでの開催はどうですか?」とスタッフから打診がありまして。僕は前にも幕張メッセで「THE GREAT ROCK'N'ROLL SEKIGAHARA 2017」というイベントをやったんですけど、そのときはうまくいかなかった印象があって、なんとなく自分たちの中でもトラウマみたいなものを抱えていた。これまでの「氣志團万博」は地元ということや、袖ケ浦のロケーションにものすごく頼っていたので、幕張メッセの無機質な環境で、規模も縮小されて、しかもなんの思い入れもない、ただ同じ千葉県というだけのハコになかなか心が動かなかったんですけど、最終的には背に腹は代えられないと。そこからまた一歩一歩がんばっていって、自分の理想に向かっていけばいいんだからということで、天候に左右されない屋内でのフェスに切り替えたわけです。
──袖ケ浦のロケーションに頼っていたとおっしゃいましたが、確かに「氣志團万博」といえばあのシチュエーションとセットのイメージが強かったですし、それが幕張メッセ開催に変更になったことで、ファンの方からもいろんな声があったと思います。
案の定「つまらなくなったね」とか「あの会場だからよかったのに」とか、いろんな意見がありました。でも、2024年の「氣志團万博」の前に1回、スピンオフ的なイベント(2023年10月に有明アリーナで開催された「氣志團 Presents『One Night Festival ~天挑五歌仙大演會~』」)を屋内で1日だけやったんですけど、そのときは椅子席だったから大人のお客さんたちがけっこう喜んでくれて。「ああ、そういう感想もあるんだ」と、そこで屋内でやるメリットを考えてみようということになったんです。僕らもいろんなアーティスト主催フェスに影響を受けてきたので、屋外がどうしても絶対条件みたいなところがあったけど、関東だとなかなかそういう会場が見つからない。結果、幕張メッセが2日間も取れていること自体が奇跡なんだという事実も再認識できたわけです。
──11月開催となると、アーティストのブッキングもまた大変になるのでは?
まさにその通りで、日本のアーティストたちにとって夏フェスというものはすごく重要な存在になっているので、ある程度「この時期の土日は空けてます」という感じで、あとは長年の付き合いで「毎年あそこのフェスには出る」みたいのが定着している。そこがひと段落した秋口から皆さん制作とかツアーに入るわけで、物理的にスケジュールが空いていない時期なので、11月までフェスにスケジュールを充ててしまうと皆さんほかの自分たちの仕事ができなくなってしまう。ということは、9月開催想定で「氣志團万博」のためにスケジュールを空けてくれていた方たちが、11月に変更になったことで一気に出られなくなったんですよ。皆さん1年前からツアーの予定を組んでいるわけで、そりゃいきなり「11月に変更します」と言われたところでずらせないよ、という話なわけですよね。ただ、そのおかげで今までまったく接することがなかったアーティストの皆さんと出会うきっかけにもなって。自分たちもまた少し枠を広げて、いろんなものを観に行くようになって、感覚がすごく変わったというのもありました。
──それが2024年の「氣志團万博2024 ~シン・キシダンバンパク~」だったわけですね。
幕張メッセに会場は変更になったものの、どうしても以前のように2ステージでやりたいという思いだけは捨てきれなくて。それで、自分たちが以前幕張メッセでやった「THE GREAT ROCK'N'ROLL SEKIGAHARA 2017」というイベントの何がよかったのか、何がよくなかったのかを1回振り返りつつ、ほかに幕張メッセでやっているフェスもいろいろ調べて、自分たちなりの最適解みたいなものを探した結果があの作りになったわけです。加えて、今までは海と潮風と太陽に全部任せていたところもあって、ロケーションでごまかしが効いていたんですけど(笑)、それが今回から使えなくなる。自分たちの必殺技がほぼ使えないという、少年マンガとしては大ピンチな状況をどう乗り切るのかをいろいろ話し合って、なんとか2日間を乗り切ることができたわけです。
「家族で来やすくなった」新たな層を開拓した屋内開催
──仕切り直しとなった2024年を終えてみて、改めて気付いた点などもいろいろあったかと思います。
いろいろ問題も浮き彫りになりました。例えばトイレの数ですよね。そういうのも、実際にやってみなきゃわからなかったし。ただ、来場者アンケートを見ると「いつか袖ケ浦に戻ってほしい」という声こそあったものの、「残念だ」とおっしゃっている方は意外と少なくて。そもそも、そういうことを言うのって実際に足を運ばない人だと思うんです。それ以外だと「家族で来やすくなりました」とか「親と一緒に来られるようになりました」という声が印象的で。袖ケ浦は若い人たちやアウトドアが好きな人たちからすると最高なんだけど、野外が苦手な人からするともうその時点でアウトなわけですよね。あと幕張は、何しろ会場が駅から近い(笑)。
──(笑)。確かに、シャトルバスに乗る一手間がなくなりましたものね。
例えばフジロックに行く人たちにとっては、会場に行くまでのあの過酷な大冒険のような感じも含めてフェスなわけで、それも込みで好きなわけですよね。以前の「氣志團万博」にもそれに似たようなところがあったけど、袖ケ浦海浜公園というシチュエーションは直射日光を浴びるための場所というイメージも強くて、小さいお子さんは熱中症で倒れちゃうかもしれないから厳しかった。でも、幕張メッセに移ったことで小さいお子さん連れの家族が気軽に来られるようになったし、日帰りで行きやすくなったことで宿や帰りの足の心配が減ったのはメリットかなと思います。それに、屋内開催に変わったことで、僕たちが毎年頭を悩ませていた天候に左右されることは、ほぼなくなった。ゲリラ豪雨とか天候の影響でライブが一度中断されると、そのあとのアーティストの皆さんが演奏できなくなるというトラブルが生じる可能性もあるし……幸い過去の「氣志團万博」では一度もそういうことはありませんでしたけど、そこに対して運営が悩むことがなくなったのが一番大きかったです。
──なるほど。
何かを手放すと逆に何か得られるというのは、今回やってみて初めて気付いたことですね。おかげさまで、今年はサントリーさんに加えてエプソンさんもメインスポンサーとして加わってくださいましたし。ただ、それでもまだ困難は続いていて。昨年から使っている幕張メッセの9~11ホールが来年から改修に入るので、このまま続けられるわけではないんですよ。
──あ、そうなんですね。
いやもう、“宿なし芳一”的なフェスになってしまっているので(笑)、僕たちはこれを続けていくためにまだほかにもいろんなことを考えなくちゃいけなくて。今も社内での打ち合わせ以外に、いろんな企業の方たちともお会いしてるんですけど、以前は僕自身あまりそういう人たちと関わるのが得意じゃなかったところ、今は自分で動かないとどうにもならない。それこそインディーズ時代以来ですよ、こういうのって。藁をもつかむ思いでいろんなところをノックしていくことによって、また新たな出会いが生まれて、面白い方向にちょっとずつ転がっている気もしますし、そこがこの1、2年の大きな動きかなという感じです。
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いろんな人たちと絡みたい気持ちになれたのは昨年のおかげ