新国立劇場 2025/2026シーズン 演劇 ラインアップ説明会が本日2月26日に東京・新国立劇場にて行われ、演劇芸術監督の
2025/2026シーズンのトップバッターとして10月に上演されるのは、鄭義信の代表作の1つ
続けて11月に上演されるのは、アメリカを拠点に活動する劇作・演出家、俳優のアヤ・オガワによる「
12月に上演されるのは「
来年4月にはデニス・ケリー作「
来年5月には小川自身が演出を担当する「
続けて、来年6月には「
そして「ラインナップ最後の7月に上演されますのは『
さらにこのほか、ギャラリープロジェクトや中高生のワークショップ、プレビュー公演が引き続き実施されるほか、こつこつプロジェクトからは第3期より2作品の試演会を予定していることを明かした。2025/2026シーズンの全ラインナップを一気に紹介した小川は「このシーズンをもちまして、私の任期は終わります」と顔を上げ、「本劇場に参加してくださった作り手の皆様、本劇場に興味を持ってくださった皆さん、そして本劇場に作品を観てくださった観客の皆様に心よりお礼を申し上げたいと思います」と声を詰まらせながら話し、「8年、本当にありがとうございました」と深く頭を下げた。
その後、質疑応答の時間が設けられた。記者から「今年は作品をくくるシリーズ企画はないのか」と問われると、「あ! そうでした!」と明るい表情を見せた小川は「実は『ガールズ&ボーイズ』と『エンドゲーム』、ノゾエさんの新作は1つのシリーズとなる予定です。世界的な情勢を見ても苦しいところに向かいつつある現在、それぞれが弱さや痛みを抱えながらもどうやったら希望を感じて前に進んでいけるのか?を考えていくシリーズということで、シリーズのタイトルはノゾエさんの作品タイトルが決まってから付けようと思っています」と説明した。さらにノゾエに新作を依頼した経緯については「実はシリーズのほうが先に私の中では浮かんでおり、そういったところに寄り添った作品を書いていただける、興味を持っていただける方は誰かと考えたときにノゾエさんを思い出しまして、お願いすることになりました」と話した。
また芸術監督としての8年間の思いを問われると「振り返ると、もちろんできたことやできなかったこと、反省したこと、うれしかったこと、たくさんあります。欲を言えばこれもやりたい、あれもやりたい、もっとこうしたかったというものはたくさんありますが、実はコロナ禍を経た時代でもありまして。私が芸術監督になって1年目からコロナが始まり、その影響が2・3年は続きましたし、世界では戦争や災害などもあり……いつの時代もそうですが、時代が変遷していく中で演劇で何ができるのか、時代に沿った作品として何ができるかを常に考えながら、その中でできることは精一杯やってきたと思っています」と感慨を述べた。
その後、場所を移して行われた記者懇談会の場では、より具体的に小川が8年間を振り返った。小川は「芸術監督就任時に3つの柱を立てさせていただきました。1つ目は『幅広い観客層に演劇を届けること』、2つ目は『演劇システムの実験と開拓』、3つ目は『国内外を問わず、演劇の作り手の横のつながりを強めること』。2つ目に関してはこつこつプロジェクトやフルオーディション企画、プレビュー公演の実施など積極的にできたと思っていて、3つ目に関しても世界の国立劇場とのつながりができたり、日本の公共劇場、劇作家協会や演出家協会とのつながりもできたと思います。ただ反省しているのは、より広い観客層という点で、全国公演などを通じて地方の劇場とのつながりを作りたいと思っていましたが、コロナのこともあり、その点は断念しなければいけないことも多々ありました」と話す。
また“国立劇場”の役割についてどんな意識を持っていたかと問われると「国立の芸術監督であるということは、8年間ずっと考えていたことで、国立劇場の芸術監督であるからには演劇の力を伝えていくことが役割だと思い、ここでしかできないことはなんぞやということを考えてきました。その中で、国立劇場だからこそこんなやり方もあるということで、こつこつプロジェクトのようなやり方やフルオーディションに取り組み、時間をかけて作品の強度を上げていくことで、演劇の可能性を高めていくことができるのではないかといった取り組みを行ってきました」と振り返った。
また現在の演劇をめぐる状況についての思いを問われると「資材などの値段が上がっていることもあり、チケット代の高騰については痛感しています」と言い、新国立劇場でもさまざまな工夫を凝らしてチケット代の高騰を抑えていると話した。その一方で「若い作り手で、どんどん素敵な方が出てきていらっしゃるのはいいことだと思っています。東京に限らず地方でも、私の世代とはまた異なる、今の時代がデフォルトになっている作り手の方がどんどん出てきていることにワクワクしているので、演劇界を決して悲観的には捉えていません。ニューヨークやロンドンの劇場でも、チケット代の高騰や人員削減など経済的な部分で追い詰められている状況ではありますが、時代は必ず巡るので、未来を見据えて今を考えていかなければと思っています。ですので、芸術監督としてあと残り1年でどこまでできるかわかりませんが、私ができることをやっていきたいと思います」と真摯に語った。
「焼肉ドラゴン」
2025年10月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
作・演出:鄭義信
出演
千葉哲也 / 村川絵梨 / 智順 / 櫻井章喜 / 朴勝哲 / 崔在哲 / 石原由宇 / 北野秀気 / 松永玲子 / イ・ヨンソク / コ・スヒ / パク・スヨン / キム・ムンシク
鼻血-The Nosebleed-
2025年11月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
作・演出:アヤ・オガワ
字幕翻訳:広田敦郎
出演
ドレイ・キャンベル / アシル・リー / クリス・マンリー / アヤ・オガワ / 塚田さおり / カイリー・Y・ターナー
スリー・キングダムス
2025年12月
東京都 新国立劇場 中劇場
スタッフ
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
ガールズ&ボーイズ
2026年4月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
作:デニス・ケリー
翻訳:小田島創志
演出:稲葉賀恵
エンドゲーム
2026年5月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
作:サミュエル・ベケット
翻訳:岡室美奈子
演出:
ノゾエ征爾 新作
2026年6月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
作:ノゾエ征爾
演出:金澤菜乃英
11の物語-短編・中編(仮)
2026年7月
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
演出:鵜山仁 / 大澤遊 / 小山ゆうな / 須貝英 / 鈴木アツト / 西沢栄治 / 宮田慶子 / 山田由梨 / 小川絵梨子
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加美幸伸(Yukinobu KAMI) @kami_rock
【会見レポート】小川絵梨子演劇芸術監督ラスト、新国立劇場2025/2026シーズンラインナップが明らかに https://t.co/NVoGUXRij0