永遠を生きる伯爵の悲哀…フィナーレはみんなで踊ろう
これはミヒャエル・クンツェが脚本・歌詞、ジム・スタインマンが音楽を手がけたミュージカル。1997年にオーストリア・ウィーンで初演され、日本では2006年に初めて上演された。その後も公演が重ねられ、今回は6回目の上演となる。演出を手がけるのは
ヴァンパイア研究者のアブロンシウス教授(
作中には大量のニンニクや重厚なシャンデリア、古いヨーロッパの邸宅を連想させる調度品などが登場し、舞台にミステリアスな雰囲気を作り出す。しかし怖くてヴァンパイアに杭を打てないアルフレートや、「ユダヤ人には効かない」と十字架を無視するヴァンパイア、アブロンシウス教授に渡された名刺をなかなか受け取らないクロロック伯爵など、コメディタッチのシーンも多く、その振れ幅で観客を楽しませた。
ヴァンパイア・シンガー、ヴァンパイア・ダンサーの登場シーンも見どころの1つ。アルフレートが眠るベッドの中や天蓋からぬっと現れたダンサーたちは、シンガーのパワフルな歌声と共に、高い身体能力を生かしたパフォーマンスを繰り広げ、観客を魅了した。
クロロック伯爵役の山口は、ウィスパーボイスや地の底から響くような低音を巧みに使い分け、観客を幻想的なヴァンパイアの世界に誘う。また永遠を生きる伯爵が、愛する者との別れを何度も繰り返すことの悲しみを歌う場面では、山口はその神秘的な立ち姿に孤独の悲しみをにじませた。
フランクは芯のある歌声を聞かせつつ、サラの夢見がちな一面をどこか遠くを見るようなまなざしで表現。太田はアルフレートの臆病さを腰が引けた立ち姿で表したほか、サラへの恋心を伸びやかな声で歌い上げた。またアブロンシウス教授は、理性を重んじる人物。石川はどんなときも研究を忘れずメモを取る教授の冷静さを重々しいセリフ回しで示しつつ、教授が城の大きな本棚に大喜びして作家の名前を早口で並べたり、手にツバを「ペッ、ペッ!」と付けて壁を降りようとしたりする姿をチャーミングに演じた。
なおフィナーレでは、キャストがステージに集合してにぎやかに歌い踊る。カーテンコールでは観客も一緒に踊れるパートが用意されているため、ぜひ東宝演劇部の公式Xの動画で予習して観劇に臨んでみては。
10日には、城田、中村、寺西、武田が参加するゲネプロが行われ、その後、山口、フランク、太田、石川を交えての初日記念会見が行われた。
初日記念会見で山口祐一郎、城田優の表現に「ああ、これか」
山口は「この作品が成人式を迎え、“良い婿が来ないかな”と思っていたらようやく来ました。こんなに丈夫な息子(城田)ができて、私は幸せです」と真摯に語りつつ、山口とWキャストを担う初参加の城田について「彼の舞台は本当に良い。消える前のろうそく……は私ですが、その前に、宇宙が始まる、エネルギーに満ちた息子。『ああ、これか』と思えるような表現を皆さんにお楽しみいただけると思うと、私は次から縁側でお茶を飲みながら、息子の活躍をゆっくりと眺めることができるなと思っています」としみじみ語った。
一方の城田は、山口が稽古場でもそのような言葉で自身を鼓舞してくれていたことを明かし、「20年続いた『ダンス オブ ヴァンパイア』のクロロック伯爵は、作品のシンボル的存在。自分なりに精いっぱい、向上心を持ち続けて、最後まで演じ続けたい。お客様にはコメディとホラーの要素が混ざった唯一無二のミュージカルを楽しんでいただけるよう、努めたいです」と丁寧に述べた。
フランクは「長年、この作品を客席から観ていて、憧れ続けていた舞台に初めて立たせていただける喜びと、それをお客様と共有できるという楽しみな気持ちでいっぱいです。フィナーレで踊るシーンがとても印象に残っているので、お客様にも楽しい気持ちを持ち帰っていただけたら良いなと思います」とコメント。また、「私自身が客席で感じた高揚感を、皆さんにも感じていただけるように(ゲネプロでは)がんばりましたが、やっぱり緊張してしまいました」とはにかむ中村は、両親が名付けの際に“サラ”という名前と迷ったというエピソードを話し、「役とのご縁を感じました」と続けた。
太田は「劇場空間にお客様が入って、さらに濃くなる作品。お客様とお互いに共有しながら、エンタテインメント要素たっぷりの作品をお届けしたい」、寺西は「東京公演が始まり、名古屋・大阪・博多と、この夏はお客様と一緒に踊りたい。僕も両親に聞いたらアルフレートという名が候補に挙がっていた……というのは冗談ですが(笑)、誰1人欠けることなく走り切れたら」とジョークを飛ばし、場を和ませた。
石川は「出演者全員が客席に降り、お客様と近いところでコンタクトが取れる、非常に楽しい作品。この6年で健康に留意するということを世界中の人たちが考える時代になりました。皆さんとお会いできる機会があることを幸せに感じ、最後までがんばりたい」、武田は「初演でアブロンシウス教授役を演じられたのが、僕の心の師匠である市村正親さん。その役を演じられるという喜びを感じながら、無事に乗り切りたいと思います」と話した。
最後に山口が「2025年、いろいろなことありますが、皆さんに一番元気をお届けすることができるミュージカルです。ぜひ劇場に足をお運びください」と呼びかけ、初日記念会見を締めくくった。
上演時間は休憩30分を含む3時間5分を予定。東京公演は5月31日まで。その後本作は6月7日から15日まで愛知・御園座、7月4日から12日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、19日から30日まで福岡・博多座で上演される。
ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」カーテンコール振付動画
ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」
2025年5月10日(土)〜31日(土)
東京都 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
2025年6月7日(土)〜15日(日)
愛知県 御園座
2025年7月4日(金)〜12日(土)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
2025年7月19日(土)〜30日(水)
福岡県 博多座
スタッフ
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:ジム・スタインマン
演出:
出演
クロロック伯爵:
サラ:
アルフレート:
シャガール:
レベッカ:
ヘルベルト:
マグダ:
クコール:
ヴァンパイア・ダンサー=伯爵の化身:佐藤洋介 / 加賀谷一肇
アブロンシウス教授:
ヴァンパイア・シンガー:川島大典 / 岡施孜 / 桜雪陽子 / 坂口杏奈
ヴァンパイア・ダンサー:吉﨑裕哉 / 酒井航 / 渡辺謙典 / 水島渓 / 渡邉春菜 / 小石川茉莉愛 / 藤田実里 / 堂雪絵 / 畠中ひかり
アンサンブル
さけもとあきら / 麻田キョウヤ /
スウィング
佐渡海斗 / 髙田実那
※クコール役の伊藤今人、アブロンシウス教授役の石川禅は東京公演のみ出演。
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#寺西拓人 #timelesz
ダンス オブ ヴァンパイア
5/10㈯-31㈯
東京建物 Brillia HALL
6/7㈯-15㈰
愛知 御園座
7/4㈮-12㈯
梅田芸術劇場
7/19㈯-30㈬
博多座
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