第45回松尾芸能賞、中村時蔵「五代目時蔵の集大成の年に」と喜び 古田新太は佐藤B作の名前を欲しがる

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第45回松尾芸能賞の贈呈式が、昨日3月29日に東京都内で行われた。

左から佐藤B作、古田新太、中村時蔵、由紀さおり。

左から佐藤B作、古田新太、中村時蔵、由紀さおり。

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第45回松尾芸能賞の贈呈式。

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1980年に創設された松尾芸能賞は、日本の芸能の保存・向上に寄与した人物に与えられる芸能賞。贈呈式には、大賞を受賞した中村時蔵のほか、優秀賞の佐藤B作、米川文清、古田新太、豊竹呂勢太夫、新人賞の中村児太郎、特別賞を由紀さおり、功労賞を林与一が出席した。

林与一

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由紀さおり

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林が「歳を重ねると、どこで幕を引こうかなと考えてしまうものなのですが……こんなに素晴らしい賞をいただいたので、幕を引かずにもう少し歩いてみようかなと」と思いを述べると、会場は拍手で包まれる。また林は、公務のため贈呈式を欠席した文化庁長官・都倉俊一との関係について、「昔、彼とは恋敵でして(笑)、それ以来の再会に、どんな顔で会えば良いのかと心配していたのですが、欠席とのことで安心しました」と冗談交じりで告白し、周囲の笑いを誘う。由紀は、自身のデビュー55周年を記念したコンサート「由紀さおりコンサート ~新しいわたし 55th~」に言及し、「“新しい挑戦をする”という内容のコンサートを準備している折に、この賞をいただき、『がんばりなさいよ』と背中を押していただいたような気持ち」と受賞の喜びを語った。

中村児太郎

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豊竹呂勢太夫

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児太郎は、父・中村福助が五代目児太郎時代に、松尾芸能賞で同じく新人賞を受賞していたことに触れ、「父にも報告しました。身の引き締まる思いです」と述べる。また、受賞理由に「神霊矢口渡」のお舟役が含まれていたことに関して、「お舟は、今回大賞を受賞した時蔵のおじさまに、懇切丁寧に教えていただいたお役。少し恩返しができたのでは」と言葉に力を込めた。呂勢太夫は「私は、普通の人より師匠が多いのですが、この松尾芸能賞は、先代の(五代目)豊竹呂太夫師匠、豊竹嶋太夫師匠も受賞されています。2人の師匠は、きっと『お前ももろたんか』とあの世で呆れているかと思いますが(笑)、お師匠さんたちに追いつけるよう、芸道を精進していきたい」とコメントした。

古田新太

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米川文清

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佐藤B作

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古田は、帽子を被っての登壇を謝罪しつつ、その理由を「実は自宅で転び、コンロに頭を打ち付け、頭を50針縫いました。その頭でここに立つのはどうかなと思ったのですが、せっかく呼んでいただいたので来ました」と明かすと、会場は驚きでどよめく。「ずっと小っ恥ずかしい芝居を続けてきました。今回、このように褒めていただいたことで、これからも、小っ恥ずかしい芝居を続けていて良いと、認めていただいたような気持ちです。あの、良ければ、また褒めてください(笑)」と選考委員に呼びかけた。米川は、受賞が決定したときの気持ちを「本当に夢心地ってあるんだなと。今まで支えてくださいました皆様に、お礼を申し上げます」と言葉に力を込める。佐藤は「自分の芸名が、このように社会に浸透する名前になり、自分でも驚いています」と話し、「何度劇団を作ってもうまくいかなかったのですが、花王おさむに説得される形で劇団東京ヴォードヴィルショーを始め、50周年を迎えました。一緒に喜劇を作ってきた劇団員の仲間も、この会場に来ております。今日はみんなと、おいしいお酒を一緒に飲めることを楽しみにしています」と笑顔を見せた。

中村時蔵

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大賞を受賞した時蔵は、昨年東京・国立劇場で行われた令和5年9月歌舞伎公演「『妹背山婦女庭訓』<第一部>」で初役で演じた太宰後室定高にて、情理を弁えた演技で立女形の風格を、また東京・歌舞伎座で行われた「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部「鎌倉三代記」で演じた三浦之助義村で、凛々しさの中に義太夫歌舞伎らしいコクを表現したことが評価され、受賞に至った。いずれの役も初役となる。時蔵は「30年前に優秀賞をちょうだいしたのですが、そのときの大賞は中村富十郎のお兄さんでした。大賞は歌舞伎界を代表する方々が受賞するものと思っていたので、私が受賞して良いものかと自問自答しておりました。しかし受賞理由の1つである『吉野川の場』の定高は、若い頃から『いつか』と準備をしていた、女方の大役中の大役。この役で大賞をちょうだいできることを本当にうれしく思い、受けることにいたしました」と明かす。さらに、歌舞伎座で6月に行われる「六月大歌舞伎」で初代中村萬壽を襲名することに触れ、「名前を息子に譲りますが、名前が変わりましても、今以上に芸道に精進し、大賞を辱めないよう努めてまいる所存でございます」と思いを述べた。

贈呈式のあとに行われた囲み取材には、時蔵、佐藤、古田、由紀が登壇。萬壽襲名前に松尾芸能賞の大賞を受賞したことについて、時蔵は「お祝いのお品をよくいただくのですが、これは襲名か松尾芸能賞か、どちらに向けたお祝いなのかなと(笑)」と茶目っ気たっぷりに話しつつ、「このような素晴らしい賞をいただいて、五代目時蔵の集大成の年になったと思っております」としみじみ語る。古田は「時蔵さんのお話を伺って思ったんですけど、我々アングラの者も、襲名披露をやるのはどうでしょう。(佐藤の)名前をいただいて、“古田B作”に……」と佐藤におねだり。佐藤は、古田の提案を「何を言ってるんだよ(笑)」と一蹴し、会場を笑いで包んだ。

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第45回松尾芸能賞受賞者

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呂勢太夫さん、改めましておめでとうございます!! https://t.co/U54EoAIgQH

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