萬屋襲名の祝幕お披露目 中村萬壽・時蔵・梅枝の祝幕は千住博、中村陽喜・夏幹の祝幕はビートたけし作

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「六月大歌舞伎」に向けて制作された祝幕のお披露目会見が、本日5月28日に東京・歌舞伎座で行われた。

左から中村時蔵、中村梅枝、中村萬壽、千住博。(美術:千住博 / 提供:TSUCHIYA 株式会社)

左から中村時蔵、中村梅枝、中村萬壽、千住博。(美術:千住博 / 提供:TSUCHIYA 株式会社)

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(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)

(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)[拡大]

祝幕は、初舞台や襲名披露興行の際に、定式幕の代わりに使用される特別な引幕。このたびお披露目されたのは、中村時蔵改め初代中村萬壽中村梅枝改め六代目中村時蔵の襲名披露、小川大晴改め五代目中村梅枝の初舞台を祝した祝幕と、小川陽喜改め初代中村陽喜、小川夏幹改め初代中村夏幹の初舞台を祝した祝幕の2枚だ。萬壽、時蔵、梅枝の祝幕は日本画家の千住博の美術、陽喜と夏幹の祝幕はビートたけしの原画・提供で、いずれもサイズは高さ7.1メートル、幅31.8メートルとなる。

初代中村萬壽、六代目中村時蔵、五代目中村梅枝の祝幕。(美術:千住博 / 提供:TSUCHIYA 株式会社)

初代中村萬壽、六代目中村時蔵、五代目中村梅枝の祝幕。(美術:千住博 / 提供:TSUCHIYA 株式会社)[拡大]

祝幕に夢中になる中村萬壽らと、それを見守る千住博(右)。

祝幕に夢中になる中村萬壽らと、それを見守る千住博(右)。[拡大]

中村萬壽のことを「こんなに小さい頃から知っております」と説明する千住博(右)。

中村萬壽のことを「こんなに小さい頃から知っております」と説明する千住博(右)。[拡大]

会見では、まず萬壽、時蔵、梅枝の祝幕がお披露目された。祝幕の作品名は「紅白滝図」で、飛沫を上げる大きな滝が、紅白でダイナミックに描かれている。下手側には、萬壽、時蔵、梅枝の名前がローマ字でつづられた。お披露目のあと、千住、萬壽、時蔵、梅枝が登壇。千住は、襲名への祝いの言葉を口にしたあと、萬壽とは学年は違うが、小学校から高校まで、同じ学校に通っていたことを明かし「(腰ほどの高さに手をかざし)こんなに小さい頃から知っております(笑)。萬壽さんのほうが先輩ですが、彼は小学生の頃から光り輝くようなオーラがありました」と笑顔を見せる。祝幕の制作にあたり「品格があって、格調高い絵を描かせていただけるのであれば、それが一番いいだろうと思っておりました。お祝いですから、紅白の滝。光が当たり、自らも発光するという滝の姿が、萬壽さん、時蔵さんにふさわしいですし、また梅枝さんにはこれからそのような生き方をしてほしいと思っております」と言葉に力を込めた。

中村萬壽

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中村時蔵

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萬壽は「初代萬壽でございます。……初めて自己紹介で萬壽と言いました(笑)」とちゃめっ気たっぷりに微笑んだあと、祝幕を感激した表情で見上げ「千住先生には(祝幕の制作を)お願いした際、快くお引き受けいただきました。実は、今日初めて祝幕を拝見しておりますが、この赤の色を出すのが大変だったと聞いております。千住先生の思いを受け取り、先生のお名前を汚さぬよう、一生懸命勤めたい」と述べた。時蔵は「襲名にあたり一番うれしいのは、千住先生に描いていただいたこの祝幕です。(自身の襲名披露狂言である)『妹背山婦女庭訓』では、私が勤めるお三輪が白い苧環、父が勤める求女は赤い苧環を持っておりますので、この紅白の色合いにも縁を感じております。祝幕からも力をいただき、お客様の心に響くような舞台をお届けできれば」と話した。

質問に少し照れた様子で答える中村梅枝(中央)と、それを見守る祖父・中村萬壽(右)と、父・中村時蔵(左)。

質問に少し照れた様子で答える中村梅枝(中央)と、それを見守る祖父・中村萬壽(右)と、父・中村時蔵(左)。[拡大]

祝幕の感想を問われた梅枝は、萬壽の「カッコいいよね」の言葉に頷く。報道陣からの「梅枝という名前を名乗るのは慣れましたか」の問いには「はい」、「稽古は順調ですか」の問いには「まあまあ」と、恥ずかしそうに回答。萬壽の襲名披露、梅枝の初舞台となる「山姥」で、演じていて楽しい部分を問われると、梅枝はしばし黙り込む。すかさず萬壽は「君の得意な立廻りと見得でしょう!(笑)」と呼びかけ、「今回は彼の好きな要素が詰まっているので、始まると楽しくやってくれるのでは」とニコニコ。さらに梅枝は、「見得を切るのは好きですか」と質問されると、今度は「はい!」とはっきり返答した。

中村陽喜、中村夏幹の祝幕。(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)

中村陽喜、中村夏幹の祝幕。(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)[拡大]

中村獅童

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次に、陽喜と夏幹の初舞台の祝幕がお披露目された。祝幕の作品名は「風神雷神」で、上手側に“初代中村陽喜丈江”という文字と雷神、下手側に“初代中村夏幹丈江”という文字と風神の姿が収められている。会見には、中村獅童、陽喜、夏幹が登壇。3人があいさつをしたあと、ビートたけしの「この度の初舞台、誠におめでとうございます。これからの歌舞伎界を担っていくお二人及び皆様の輝かしい未来を、心よりお慶び申し上げます」というコメントが、司会により代読された。

獅童は、祝幕を見上げ「元々僕は、ビートたけしさんの大ファン。北野武監督の『首』という作品に出させていただいて以来、たびたびご自宅に遊びに行かせていただくようになったのですが、(祝幕の制作を)監督にやっていただきたいとお願いしたら、すぐに『やるよ、やる』とご了承いただきました。こんなに素敵な祝幕を贈ってくださって、胸がいっぱいです」と感無量の様子で語る。また祝幕の制作に向け、ビートたけしから、自身の作品の中から好きな絵を選んで良いと言われたこと、そして獅童夫婦でいくつか候補を選んだあと、最終的な決定は陽喜と夏幹に任せたことを明かし、「子供たちが気に入っているみたいで、それが一番ですね」と微笑んだ。

祝幕のお気に入りポイントを説明する中村夏幹(左)。

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上手側の雷神を観に行く中村陽喜・夏幹兄弟。

上手側の雷神を観に行く中村陽喜・夏幹兄弟。[拡大]

祝幕のお気に入りポイントを説明する中村陽喜(左)。(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)

祝幕のお気に入りポイントを説明する中村陽喜(左)。(原画・提供:ビートたけし(c)株式会社T.Nゴン / 謹製:歌舞伎座舞台株式会社)[拡大]

祝幕の好きなところを聞かれると、陽喜は下手側の風神、夏幹は上手側の雷神を気に入っていることを「この人が大好き!」「この白いとこが好き!」と、それぞれ指を差しながら説明。報道陣の「お二人の名前も、大きく書かれていますが……」という言葉には、陽喜は「それも、いいです!」、夏幹も兄の真似をして「いいでしゅ!」と元気よく答え、その愛らしさで会場を笑いで包んだ。獅童は、そんな息子2人の様子を見守りながら「私の父は、私が生まれる前に歌舞伎俳優を廃業しておりますので、こうして自分が親子で舞台に立っているのが不思議な感覚です」と気持ちを吐露。さらに「私は『六月大歌舞伎』で6演目中4演目に出演しており、しかもそのすべてが初役ですので、正直な話、子供どころじゃございません(笑)。また、親子ではありますが、舞台に立てばライバル。この子たちには、負けたくありません!(笑)」と宣言した。「お父さんに負けたくない、という気持ちはありますか?」と問われた陽喜は「ある!」と答え、報道陣を沸かせた。

「六月大歌舞伎」は6月1日から24日まで歌舞伎座にて。

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「六月大歌舞伎」昼の部

2024年6月1日(土)~2024年6月24日(月)
東京都 歌舞伎座

スタッフ

一、「上州土産百両首」

作:川村花菱
演出:齋藤雅文

出演

一、「上州土産百両首」

正太郎:中村獅童
牙次郎:尾上菊之助
宇兵衛娘おそで:中村米吉
みぐるみ三次:中村隼人
亭主宇兵衛:松本錦吾
勘次女房おせき:市村萬次郎
金的の与一:中村錦之助
隼の勘次:中村歌六

二、「『義経千本桜』所作事 時鳥花有里」

源義経:中村又五郎
傀儡師種吉:中村種之助
鷲尾三郎:市川染五郎
白拍子伏屋:尾上左近
白拍子帚木:中村児太郎
白拍子園原:中村米吉
白拍子三芳野:片岡孝太郎

三、六代目中村時蔵 襲名披露狂言「『妹背山婦女庭訓』三笠山御殿 劇中にて襲名口上申し上げ候」

杉酒屋娘お三輪:中村梅枝改め中村時蔵
漁師鱶七実は金輪五郎今国:尾上松緑
入鹿妹橘姫:中村七之助
おむらの娘おひろ:中村梅枝(初舞台)
官女桐の局:中村隼人
官女菊の局:中村種之助
官女芦の局:中村萬太郎
官女萩の局:中村歌昇
官女桂の局:中村獅童
官女柏の局:中村錦之助
官女桜の局:中村又五郎
官女梅の局:中村歌六
烏帽子折求女実は藤原淡海:中村時蔵改め中村萬壽
豆腐買おむら:片岡仁左衛門

「六月大歌舞伎」夜の部

2024年6月1日(土)~2024年6月24日(月)
東京都 歌舞伎座

スタッフ

一、「『南総里見八犬伝』円塚山の場」

原作:曲亭馬琴

三、「新皿屋舗月雨暈『魚屋宗五郎』初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台」

作:河竹黙阿弥

出演

一、「『南総里見八犬伝』円塚山の場」

犬山道節:中村歌昇
犬村角太郎:中村種之助
犬坂毛野:中村児太郎
犬川荘助:市川染五郎
犬江親兵衛:尾上左近
犬田小文吾:中村橋之助
犬塚信乃:中村米吉
犬飼現八:坂東巳之助

二、初代中村萬壽 襲名披露狂言「『山姥』五代目中村梅枝 初舞台 劇中にて襲名口上申し上げ候」

山姥:中村時蔵改め中村萬壽
山樵峯蔵実は三田の仕:中村芝翫
怪童丸後に坂田金時:中村梅枝 (初舞台)
源頼光:中村獅童
腰元白菊:中村梅枝改め中村時蔵
猪熊入道:中村萬太郎
渡辺綱:中村陽喜(初舞台)
卜部季武:中村夏幹(初舞台)
源賢阿闍梨:中村錦之助
平井保昌:中村又五郎
多田満仲:中村歌六
藤原兼冬:尾上菊五郎

三、「新皿屋舗月雨暈『魚屋宗五郎』初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台」

魚屋宗五郎:中村獅童
女房おはま:中村七之助
丁稚与吉:中村陽喜(初舞台)
丁稚長吉:中村夏幹(初舞台)
召使おなぎ:片岡孝太郎
鳶吉五郎:尾上松緑
小奴三吉:中村萬太郎
磯部主計之助:中村隼人
浦戸十左衛門:坂東亀蔵
父太兵衛:河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ:中村魁春

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