2015年に初演された本作は、とある居酒屋を舞台にしたドタバタ劇。駅前から商店街を抜けた外れにある居酒屋・最後の楽園には、年に一度、飲み放題となる特別な日があった。そこに、隣町で仕事をミスし、さらに極度の方向音痴のため道に迷ってしまった若いサラリーマン・坂田がやってきた。次々と現れる常連客たちにより、どうやら数年前の列車事故で、この居酒屋と常連客たちの人生が大きく変わってしまったことが明らかになり……。
作・演出を手がける
一部公演ではアフタートークが行われ、5月25日14:00開演回には
内藤裕敬コメント
友人達と一杯やって、ギリギリ終電に飛び乗った。駅に着くと足早やに家路につく人達の後ろ姿を追うように改札へ向かう。左右に分かれて北口、南口から深夜の町に消える。その群れが散ると、寝静まった駅前に、放置自転車が淋しそうだった。持ち主は、どこへ行ってしまったのか。もう、到着する電車は無く、誰も改札から出て来ない。
宝塚線の事故の後、あの日、駅に止めたまま放置された自転車が何台あったのだろう? ふと、そんなことを考えた。以降、駅前で何日も放置されている自転車を見る度に、持ち主の安否を思う。確か、「楽園」を書くきっかけは、そういうことだった。幸いあの電車には乗り合わさず、しかし、身近な誰かを失えば、今度は、この世に残った自分の方が放置された自転車になった気はしないだろうか? ポツンと孤独な時間に呆けるばかり。何か、心に空いた隙間を埋められやしないだろうか? それ探しながら書いてみよう。そうしたら「楽園」が出来上がっていた。
おそらく、埋めようもない孤独をかかえているからこそ、賑やかに飲んで笑う居酒屋のお話しだ。埋めようとすれば苦しむばかり、埋めようもないと思えば、孤独とのつき合い方は、いくらでもある。そのうちの幾つかが、物語の中に転がっている。ややっこしくて、面倒くさい。やかましくて、思わず笑ってしまう。
そんな孤独達の作品です。
南河内万歳一座「楽園」
2023年5月24日(水)~28日(日)
大阪府 一心寺シアター倶楽
作・演出:
出演:
大阪ニュース @Osaka_headlines
やかましくて思わず笑ってしまう“孤独たち”の物語、南河内万歳一座「楽園」 https://t.co/DAu2dzPN1I