「ふるあめりかに袖はぬらさじ」坂東玉三郎、新派との合同公演に笑顔「いつでも一緒にできれば」

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「六月大歌舞伎」第3部「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の出演者である坂東玉三郎喜多村緑郎河合雪之丞の取材会が、本日5月23日に東京都内で行われた。

左から河合雪之丞、坂東玉三郎、喜多村緑郎。(c)松竹

左から河合雪之丞、坂東玉三郎、喜多村緑郎。(c)松竹

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「ふるあめりかに袖はぬらさじ」より、坂東玉三郎扮する芸者お園。(撮影:岡本隆史)

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」より、坂東玉三郎扮する芸者お園。(撮影:岡本隆史)[拡大]

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は、有吉佐和子が杉村春子のために書き下ろし、1972年に初演された作品。劇中では、幕末の神奈川・横浜にある遊郭・岩亀楼を舞台にした物語が展開する。三味線の名手である芸者のお園が、病に伏せる旧知の遊女・亀遊を見舞いに行く。そこでお園は、亀遊と医者を目指し留学を夢見る通訳・藤吉との仲に気づく。しかし、亀遊は、岩亀楼にやってきたアメリカ人・イルウスに一目惚れされてしまい……。今回の上演版では、玉三郎がお園、緑郎が思誠塾岡田、雪之丞が亀遊を勤める。

坂東玉三郎(c)松竹

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玉三郎は、片岡仁左衛門の休演を受け、上演演目が「与話情浮名横櫛」から「ふるあめりかに袖はぬらさじ」に急遽変更になった経緯に触れつつ、「(代わりとなる演目は)『日本橋』か『ふるあめりかに袖はぬらさじ』のどちらかで考えていたのですが、今は明るい話のほうが良いのではと、笑いのある『ふるあめりかに袖はぬらさじ』になりました」と話す。

坂東玉三郎(c)松竹

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東京・歌舞伎座で本作が上演されるのは、2007年以来のこと。2007年上演版でもお園を勤めた玉三郎は「『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は、歌舞伎座には少し“大きい”演目」と述べつつ、「でも有吉先生は、舞台転換を多用しない、古典様式でご執筆される現代劇作家。北條秀司先生や川口松太郎先生もそうですが、俳優の着替える時間も考えて作劇されていて、“演劇的な戯曲”を熟知なさっている。そういう意味でも歌舞伎座は本作にふさわしいですし、私は歌舞伎座でこの作品が上演されることが良いことだと思っています」と述べる。

喜多村緑郎(c)松竹

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かつて歌舞伎俳優で、現在劇団新派に所属する緑郎と雪之丞が歌舞伎座の舞台に立つのは、緑郎が2014年上演の「修禅寺物語」、雪之丞が2016年「東海道中膝栗毛」ぶりのこと。緑郎が「(2010年の)歌舞伎座建て替え後は、『修禅寺物語』でしか歌舞伎座に出演したことがありません。なので、どこから(劇場に)入っていいのかもわからないくらい、感覚を忘れてしまっていて……」と不安そうな様子を見せると、玉三郎は「舞台に出るときの感覚は建て替え前と変わらないので大丈夫よ。楽屋も使い勝手が良くなったし」と優しく声をかける。これに緑郎はホッとしたような表情を浮かべ、玉三郎に笑顔で感謝の言葉を述べた。

河合雪之丞(c)松竹

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雪之丞は、前回歌舞伎座で上演された「ふるあめりかに袖はぬらさじ」に芸者太郎役で出演した。本作を「大好きな作品」と触れつつ、「大和屋の若旦那(玉三郎)のお園が大好きで。言葉ではうまく表現できないのですが、ひと目見ただけで『お園ってこういう人なんだ』っていうことがわかる。改めて今回、また歌舞伎座の舞台でご一緒できることがうれしく、ありがたい」と言葉に力を込める。

またそれぞれの役について、雪之丞は「(本作の演出を担う)齋藤(雅文)先生から、亀遊は女形がやると小股の切れ上がった感じになってしまうけど、そうしたキリッとした女性ではなくて、歌舞伎で言うところの娘役のように演じてほしいと言われています」と話し、緑郎は「岡田は、前回歌舞伎座で上演されたときは、坂東三津五郎さんが演じられていました。監査役のようなお役で、血気盛んな思誠塾のメンバーを収めないといけない役どころ。思慮深さが必要で、必死にお稽古しております」と語った。

2人の緊張した様子に、玉三郎は「気楽にやってもらいたいな(笑)。2人とは昔から一緒ですので(合同公演に)特別感はあまりありません」と述べ、「新派に移籍したということだけで、共演できないことの方が不思議。新派と旧派(歌舞伎)とありますが、僕たち俳優には垣根がないんです。この公演が良いきっかけになって、いつでも一緒にできれば。この2人以外にも、新派から俳優さんが来てくださるので、共演を楽しみにしています」と笑顔を見せた。

「六月大歌舞伎」は、東京・歌舞伎座で6月2日から27日まで。

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「六月大歌舞伎」

2022年6月2日(木)~27日(月)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「菅原伝授手習鑑 車引」

出演
梅王丸:坂東巳之助
桜丸:中村壱太郎
杉王丸:市川男寅
藤原時平:市川猿之助
松王丸:尾上松緑

二、澤瀉十種の内「猪八戒」

作:岡鬼太郎
補綴:市川猿翁

出演
童女一秤金実は猪八戒:市川猿之助
孫悟空:尾上右近
沙悟浄:市川青虎
村長張寿函:市川寿猿
女妖緑少娥:市川笑三郎
女妖紅少娥:市川笑也
霊感大王実は通天河の妖魔:市川猿弥

第2部

一、「信康 岡崎城本丸書院の場、二俣城外の丘の場、二俣城本丸広間の場」

作:田中喜三
演出:齋藤雅文

出演
徳川信康:市川染五郎
松平康忠:中村鴈治郎
平岩親吉:中村錦之助
本多重次:市川高麗蔵
大久保忠佐:坂東亀蔵
大久保忠泰:大谷廣太郎
御台徳姫:中村莟玉
鵜殿又九郎:中村歌之助
奥平信昌:嵐橘三郎
大久保忠教:澤村宗之助
酒井忠次:松本錦吾
天方山城守:大谷桂三
大久保忠世:大谷友右衛門
築山御前:中村魁春
徳川家康:松本白鸚

二、「勢獅子」

出演
鳶頭:中村梅玉
鳶頭:尾上松緑
鳶の者:坂東亀蔵
鳶の者:中村種之助
鳶の者:中村鷹之資
鳶の者:尾上左近
手古舞:中村莟玉
芸者:中村扇雀
芸者:中村雀右衛門

第3部

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

作:有吉佐和子

出演
芸者お園:坂東玉三郎
通辞藤吉:中村福之助
遊女亀遊:河合雪之丞
旦那駿河屋:片岡松之助
遣り手お咲:中村歌女之丞
浪人客佐藤:中村吉之丞
唐人口マリア:伊藤みどり
思誠塾小山:田口守
思誠塾岡田:喜多村緑郎
岩亀楼主人:中村鴈治郎

※澤瀉の「瀉」のつくりは、わかんむりが正式表記。
※第3部は片岡仁左衛門の休演により、演目が変更になりました。

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ryugo hayano @hayano

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