10・11月に東京と京都で上演される、
「糸井版 摂州合邦辻」は、木ノ下歌舞伎とロームシアター京都による共同制作企画「レパートリーの創造」の第2弾として、2019年に初演された作品。再演に向けて木ノ下は「こんなに早く再演できてうれしい」と笑顔を見せつつ、「ロームシアターさんは、初演を踏襲した形で大きな変更もなく再演すると思われたと思いますが、再演となると欲が出てくるもので、初演からかなりアップデート、パワーアップする予定です(笑)」と話す。さらに「初演では、非常に難しい古典の大曲である『摂州合邦辻』から、“家族”というテーマを糸井さんが掘り出してくださった。再演ではさらに、古典が持つ神話性の部分を顕在化させたいなと」と意欲をのぞかせた。
糸井は、初演について「原作に対してちょっと距離というか、遠慮があったのが心残りで。“お付き合いはしたけど、まだちょっとカッコつけながらデートしていた”感覚があるので、今度はもうちょっとケンカしたり、だらしないところも見せ合って(作品と)打ち解けられたら」と自身の感覚を語る。さらに「初演は少し、青春のほろ苦い終わりというイメージがありましたが、再演ではたくましく大人の一歩、という感じでやってみたい」と意気込みを語った。
初演に続き玉手御前役を演じる内田は「玉手御前役は私にとっても特別」と振り返り、「玉手御前はいろいろな面を持った人なので、どう演じればいいか迷いがあって。それで初演の本番直前に木ノ下先生に相談したのですが、『人には理解されないかもしれないけれど、玉手御前なりに世界平和を願っていたのではないか』とアドバイスをいただき、自分の中でスッと納得した部分がありました。ただ、今のお話を伺っていると、今回は神話性が大事ということで、さあどうしようかなと……」と困った表情を見せる。「でも今思い出したのですが、お二人ともロッカーなんですよね! だから『初演をパワーアップさせる』という言葉の意味が普通とは全然違うのだなと。なので、新作に取り組むような気持ちで臨まないと、というのが今の気持ちです!」と話し、木ノ下と糸井を笑わせた。
今回が初参加となる土屋は、初舞台以来、舞台がトラウマだったと言い、「でも“舞台って面白いな、またやりたいな”と思ったきっかけが、糸井さんが演出された『Love's Labour's Lost』でした。だから今回もぜひ!と思ったのですが、台本を読んだら内容が衝撃で……(笑)。古典は恐ろしいなと。自分に何ができるのかまだわかりませんが、まずは情報収集だと思って、作品についてリサーチしています」と話した。
会見の後半では、記者からの質問に登壇者たちが答えた。神話性をどのように表現するのか、という質問に糸井は「神話の力によって人間の感覚をブーストさせることができる。それによって、『合邦』の説明がつかない部分に近付いていけるのではないかと思っています」と回答。木ノ下は再演で新曲が1曲追加されることを明かし、作曲の資料として「世界中の神話から『合邦』とかぶりそうな神話を集めて、糸井さんにお渡ししました。そこからどういう曲になるか、糸井さんが今、構想を考えていらっしゃるところだと思います」と期待をあおる。
また木ノ下は「コロナの問題を経て大きく変化したのは死生観ではないかと思います」と述べ、「コロナの前は、自分はどこか死なない気がしていたかもしれないけれど、今はいつ自分が感染するかわからないし、自分だけではなく、自分の近しい人もどうなるかわからない。死が目の前に迫っているわけです。そういう点で、死生観を扱ったドラマである『合邦』を、現代の人の胸打つ作品にできれば、今上演すべき『合邦』と言えるのではないかと思います」と真摯に語り、会見を締め括った。
公演は10月22日から26日まで東京・あうるすぽっと、11月2・3日に京都・ロームシアター京都 サウスホールにて。チケットの一般販売は東京・京都公演共に9月20日にスタート。
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ロームシアター京都 レパートリー作品 木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」
2020年10月22日(木)~26日(月)
東京都 あうるすぽっと
2020年11月2日(月)・3日(火・祝)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール
作:菅専助、若竹笛躬
監修・補綴・上演台本:
上演台本・演出・音楽:
音楽監修:manzo
振付:
出演:
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【会見レポート】木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」再演で、木ノ下裕一「神話性を顕在化させたい」
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