新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」の製作発表会見が、本日8月30日に東京・帝国ホテルで行われた。
10月1日から25日まで東京・歌舞伎座で開催される「芸術祭十月大歌舞伎」の、昼の部で披露される本作。演出は
まずは安孫子副社長が、菊五郎、菊之助が出演した2005年の「NINAGAWA十二夜」を振り返り、「ちょうど12年という一回りしたこの年に、演劇の世界で活躍する方に関わっていただく新しい展開ができることをうれしく思います」と挨拶する。続く菊之助も「12年ぶりに歌舞伎座で新作を作らせていただきますこと、非常に気合が入っています」と目を輝かせた。
インドの国民的叙事詩「マハーバーラタ」を歌舞伎にしようと思ったきっかけについて、菊之助は2014年に観劇したSPAC「マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~」を挙げる。今回、三幕という通し狂言にするにあたり「あたかも源平のような両家の対立構造がありますし、私が演じる迦楼奈(かるな)という人物は、戦を止めるという使命を太陽神から預かっていて、さながら『一枝を切らば一指を切るべし』というミッションを持っている熊谷直実のようです。神様と人間も出てきますし、その物語の壮大さに面白さを感じました」と本作の魅力を解説した。
また宮城と青木とのコラボレーションについて菊之助は、「宮城先生は『歌舞伎ではこういうことをしますか』と、私も『現代劇ではこういうことをしますか』と、お互い問いかけながら常識であることを疑うということが、現代劇の方と創作させていただく面白みですね。歌舞伎を毎月やっていて、常識と思ってやっている所作を、新しい脚本でどう生かせるか」と語る。
これを受け菊五郎は、「僕たちが常識に用いる幕のつなぎに、大太鼓をドドドドンと鳴らす風音があるのですが、蜷川さんは『汚い音だから嫌だ』ってオルゴールみたいなチリンという音を入れて、そのときは『なるほどな』と思いましたね。常識が違う演出家だとガラッと変わるんで本当に面白い」と述懐。続けて菊五郎は、「タイトルに戦記と書いてありますけどね、その支度を見ると喜劇だと思われるんじゃないかと。歴史的な衣装なんだけど、スカートみたいなのを履いて。これを(市川)左團次さんがやると思うと……私もさっき宣伝写真撮ってくれって頼まれたんですけど俺が着ていいのかな(笑)」とおどけ会場の笑いを誘う。
さらに菊五郎は「(尾上)菊五郎劇団は、新しいものに挑戦するのが得意という伝統がありまして、今回もその1つかなと。何かワクワクしながら芝居づくりをしたいなと思っています」と笑顔を見せる。記者から本作の海外上演の予定を尋ねられると、「まず日本で当たらないとね。登場人物の名前を覚えるだけでも大変なのに!(笑)」と告白。さらに「日印の流行りものというと……カレーライスですかね」と例え、「インドのものを日本風にして広めたように、『マハーバーラタ』と歌舞伎の様式美をうまく合体させて、皆さんに広まっていけば」とアピールした。
演出にアジア演劇の身体技法を取り入れてきている宮城は、歴史ある歌舞伎が現役かつ最前線で活動しそれを学んで演出ができる日本の環境を「恵まれてる」と述べ、「僕が今回歌舞伎を演出することによって、100年後、200年後に未来の演劇人が参考にしてくれるかもしれないと思うと夢が持てますね」と笑顔を見せる。また中国を舞台にした近松門左衛門「国性爺合戦」が歌舞伎の古典になっていることを挙げ、「インドを舞台にした僕らの『マハーバーラタ』も、ゆくゆくは古典中の古典になってるといいな。『マハーバーラタ』世界最長の書物なので、それをどう脚本にするかは青木さんの腕の見せ所(笑)。その辺をお楽しみいただければ」と笑い、「インドというとタージマハルと思われがちですが、それはインドにイスラム教が入ってきて以降の文化スタイルですよね。『マハーバーラタ』は紀元前400年から紀元後400年くらいの、つまりヒンズー教の世界観で作られた物語なので、のちにインドに入ってきて今ではインド風と思われているものを、迂闊に取り入れないように気をつけたいです」と構想を明かした。
脚本を手がける青木は、「宮城さんは、“世界と演劇”という話をいつもされてるので、僕もそんなふうに大きくなりたいなと思いながら書いています。なので非常に壮大な物語になると思いますのでぜひ楽しみにしてください」と期待を煽る。最後に菊之助が「『マハーバーラタ』と歌舞伎の見せ場とエッセンスを、抽出したものをご覧いただけると思っています」と観客に呼びかけ、会見は締めくくられた。なお本作は、日印友好交流年記念として上演される。チケットは9月12日に発売。
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