次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
32番目に登場するのは、演出家の
関田育子(セキタイクコ)
Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。
団体名は関田育子です。代表である関田の名前と同一のものですが、個人を指し示すものではありません。団体名の由来は特別にはありませんが、個人名を団体名として扱っている理由は、“名付ける”という行為が苦手だったからかもしれません。しかし、団体や集まりに名前を与えなくても、団体として「この人たちと作りたい」という明確な気持ちがあり、団体として名乗りたい場面が出てきました。そこで、自分の名前を団体名として転用させてもらいました。
また、1つの可能性として、団体名が個人名であっても参加している人たち自身が、集団を形成していることを強く意識することで“名付ける”という行為の持つ効果と同様(あるいはそれ以上)の作用が起きるのではないかと考えています。
団体の在り方としては、クリエーションメンバー制を採っており、参加している人たち全員で、業務や情報を共有しています。
“表現をする人たちが集まって、作品を作る。1人ひとりが独立した存在であり、相互に影響を与え合う。また、人間だけでなく、劇場空間(壁や床、椅子などの物)や、戯曲などの上演に関係するすべての要素がその影響の中にある”。このようなことを考えながら創作を行う場が関田育子です。
Q. 劇団の一番の特徴は?
私たちが今考えている演劇のあり方の1つに“広角レンズの演劇”というものがあります。
広角レンズとは、フレーム内のものに等価にフォーカスをあてることができるレンズのことで、これは人間の視覚ではありえません。なぜならば、人間の目は自身の生活の有用性に合わせてものを見ているからです。
“広角レンズの演劇”とは、俳優の身体と劇場の壁や床が観客にとって等価に見えること目指す演劇のことです。そのような作品の上演を経て、生活の中で有用性のもと規定された物事や他人との距離感、あるいは物事に対する遠近法を一度解体し、新たな視線を構築したいと考えています。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
11月17日から19日まで池袋にあるシアターグリーンBASE THEATER にて 「雁渡」(※かりわたし、と読みます)という演劇作品を上演します。今回のクリエーションでは“言葉”が“広角レンズの演劇”にどのように関係しているのかを思案しています。そこで、5名のクリエーションメンバーがそれぞれに戯曲を執筆し、各人の言葉の特異性を拡張するような試みも行っています。また、主催公演で小劇場と呼ばれる環境を使用するのは初めてのことなので、新たな環境との創作をぜひご覧いただければと思います。
プロフィール
2019年に設立された演劇ユニット。俳優の身体と劇場の壁や床が、観客にとって等価に見える“広角レンズの演劇”を提唱している。「かながわ短編演劇アワード2023」にて大賞と観客賞を同時受賞した。
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Ikuko Sekita (関田育子🦦) @ikuko0793
ユニット名がなぜこうなったかなどについて答えてみましたー🏋️
なかなか、聞かれない事だったので、尋ねて頂けることが、とっても嬉しかったです😊 https://t.co/Pmw9gIDL8C