流山児★事務所創立40周年記念公演 第2弾「ハイ・ライフ」チラシ

テンミニ!10分でハマる舞台

流山児★事務所「ハイ・ライフ」Wバージョン上演に小川輝晃・塚原大助が挑む

まったく同じになったりして……?

PR流山児★事務所「ハイ・ライフ」

流山児★事務所が今年、創立40周年を迎えた。それを記念して、2月に東京のザ・スズナリで、代表作の一つである「ハイ・ライフ」が上演される。カナダの劇作家リー・マクドゥーガルが1996年に発表した「ハイ・ライフ」は、銀行強盗で一攫千金をもくろむ薬物中毒の男たち4人の姿を描いたスリリングな“ジャンク・コメディ”。流山児★事務所は2001年の「カナダ現代演劇祭」で同作を初演し、その後、国内外で上演を重ねてきた。今回は16年ぶり、演出家と出演者を変えたWバージョンで披露される。2003年公演以降、本作に出演し続けている小川輝晃、初参加となるゴツプロ!主宰・塚原大助に、公演に向けての意気込みを聞いた。

取材・/ 大滝知里

俳優としての過渡期に出会った、思い入れがある作品

小川輝晃

小川輝晃

「ハイ・ライフ」には、人生に追い詰められた男たちが登場する。銀行強盗の計画を持ちかけるディックは、17歳から刑務所を出入りしている筋金入りのごろつきで、彼と同じような経歴を持つバグは出所したばかり。盗みが得意なドニーは腎臓を1つ失い、身体はボロボロで、新入りのビリーは女性関係でトラブルを抱えている。ディックの綿密な計画のもと、4人は“人生一発逆転”を夢見て犯行に臨むのだが……。今回は、流山児祥演出チームに千葉哲也、塩野谷正幸、若杉宏二、小川、西沢栄治演出チームに塚原、山下直哉、五島三四郎、44北川がキャスティングされた。

ビリーを演じる小川は、「ハイ・ライフ」に出会った当時を「俳優としての過渡期だった」と振り返る。「大阪でも仕事を始めた頃で、東京と大阪を行ったり来たりの生活をしていたんです。『ハイ・ライフ』のビリーはセリフ量が多いにも関わらず、台本を開く時間もないまま稽古に遅れて参加したら、先輩方はすでに台本を離していて。恐怖で一言目からセリフが出てこないような状態でした。結局、大学ノートを7冊ほど使って必死にセリフを書いて覚えましたね。そんなことをしたのはこの作品だけで、公演が終わってから先輩方に感謝の品を贈ったのもこの作品だけ(笑)。とても思い入れがある作品です」と明かす。一方、塚原はこれまで「ハイ・ライフ」を観る機会に「巡り会えなかった」と言うが、「小川さんも出ていらっしゃいましたが、2006年に保村大和さんがドニー役で出演されたときのチラシをすごく覚えています。そのときは流山児★事務所って怖いところなんだろうなという勝手な想像と(笑)、“すごい芝居をやっているな”という憧れが混在していました。今回、チームは違いますが、小川さんを含め大先輩たちが名を連ねる、流山児★事務所の節目の記念公演に、役者として選んでいただけたことがうれしいです」と率直に述べた。

策士を演じる、“人たらし”な俳優

塚原大助

塚原大助

塚原が演じるのはジャンキーたちを言葉巧みに巻き込んでいく、リーダー的存在のディック。塚原は「荒くれ者の4人が銀行強盗をするという、日本の戯曲にはなかなかない設定で、挑戦しがいがあると感じています。セリフ量の多さには苦戦しそうですが……」と不安げな様子を見せつつ、「ディックには、目指す方向に人々を誘導するため、1人ひとりに違う方法で歩み寄る賢さがあります。状況に流されず冷静に分析する判断力と、人懐っこい部分があって、野心家でもある。その多面性をうまく表現したい」と役作りの構想を語った。小川が、「僕はいつも、ディックの手のひらの上で遊ばせてもらっているような感覚があって、それを楽しみにしているところがある。ディックはチームで一番の“人たらし”ですよ」と伝えると、塚原は「どちらかと言うと人たらしの僕は大丈夫かな?(笑) 主宰するゴツプロ!の原動力には、人を巻き込んでいく面白さや、会話を通して自分の熱量を伝えること、やりたい作品をプレゼンすることなどがあるので、ディックと似た部分があるのかもしれません」と続けた。

また、小川が演じるビリーは、ディックの計画のために起用された新参者で、外見の良さを生かして犯罪を重ねる知恵者だ。小川はビリーについて“独自の解釈”であると前置きし、「ビリーは生きることに執着がない。実は病気を患っていて、先が長くないんじゃないかと思っているんです。言葉巧みに女性にうそをついて薬物を入手する男ですが、彼のうその中には“本当”の悩みやつらさがちりばめられている。男たちとの友情を通して、彼の“本当”をのぞかせることができたら」と意気込んだ。

“こんなに違う”を確かめに、ぜひ劇場へ

流山児★事務所創立40周年記念公演 第2弾「ハイ・ライフ」チラシ

流山児★事務所創立40周年記念公演 第2弾「ハイ・ライフ」チラシ

流山児★事務所「ハイ・ライフ」では、キャストを変えた“アナザー・ヴァージョン公演”が上演されてきたが、今回のように異なる演出・出演者のWバージョン上演は初めてとなる。塚原は「演出が変われば、観客のリアクションや作品の世界観が変わるはず。演出の西沢さんとは、過去にもご一緒してきましたが、先日の本読みでこれまでの『ハイ・ライフ』を“なぞる”つもりはないんだなと。面白くなりそうだと思いました。決して若くはないけれど、大先輩の背中を追う“若手チーム”として、全力を尽くしたいです」と言葉に力を込める。ちなみに、お互いのチームの稽古見学は自由だそうで、「観に行くか迷っている」と塚原。すると、小川は「まったく同じになったりして……?」とちゃめっ気たっぷりに返しつつ、「この作品はさまざまな団体で上演されていますが、流山児★事務所以外の公演を観に行くと、“こんなに違うのか”と毎回驚かされます。今回はそれが、同時期に同じ劇場で観られるレアな機会。ぜひ両方を観て、楽しんでいただきたいです」と観客に呼びかけた。

流山児★事務所創立40周年記念公演「ハイ・ライフ」公式サイト

流山児★事務所創立40周年記念公演 第2弾「ハイ・ライフ」

2025年2月7日(金)〜18日(火)
東京都 ザ・スズナリ

スタッフ

作:リー・マクドゥーガル
テーマ曲:トムソン・ハイウェイ
翻訳:吉原豊司
台本・演出:流山児祥
演出:西沢栄治

出演

流山児祥演出バージョン

千葉哲也 / 塩野谷正幸 / 若杉宏二 / 小川輝晃

西沢栄治演出バージョン

塚原大助 / 44北川 / 山下直哉 / 五島三四郎

※U-25・学生・養成所生・高校生以下料金あり。

公演・舞台情報

小川輝晃(オガワテルアキ)

小川輝晃

1968年、大阪府生まれ。俳優、声優。高校生で映像デビュー。主な声の出演に、「忍者戦隊カクレンジャー」サスケ / ニンジャレッド役、「星獣戦隊ギンガマン」ヒュウガ / 黒騎士ヒュウガ役、テレビアニメ「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」財前丈太郎役、映画「ナルコス」スティーブ・マーフィー役、映画「パワーレンジャー ロストギャラクシー」レッドレンジャー役など。舞台では近年、「九識のスプリント~いざ、駆ける瞬間~」や流山児★事務所作品に出演するほか、生配信公演「The Lost Sheep」では演出・脚色を務めた。洗足学園音楽大学で声優アニメソングコースの講師を務める。

塚原大助(ツカハラダイスケ)

塚原大助

1976年、東京都生まれ。2015年よりゴツプロ!を主宰し、ゴツプロ合同会社を設立。テレビドラマ「Iターン」、映画「コンプリシティ / 優しい共犯」「ソワレ」などに出演。ふくふくや、ゴツプロ!公演以外の出演舞台に「世襲戦隊カゾクマン」シリーズ(作・演出:田村孝裕)、「舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~」(脚本:坪田文、演出:児玉明子)、明後日公演2019「芝居噺弐席目『後家安とその妹』」(脚本・演出:豊原功補)、こまつ座「人間合格」(作:井上ひさし、演出:鵜山仁)などがある。

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