導火線に火は点きました
2000年に杉本善徳(G)と田澤孝介(Vo)を中心に、大阪で結成されたWaive。多彩かつメロディアスなサウンド、ツインギターならではの幅広いアンサンブル、杉本が描く歌詞の世界観、田澤の驚異的な歌唱力、エモーショナルなライブパフォーマンスでヴィジュアル系シーンを中心に人気を博すも、田澤の脱退申し出を受け2005年に解散している。しかし、2010年に開催したライブをきっかけに“解散中”としながらも数度にわたって再演を行い、2023年4月に正式に再始動。ツアー開催にリリースに、イベント出演にと精力的な活動を展開した。なお再始動時より2026年1月4日の東京・日本武道館公演をもって再び解散する旨をアナウンスしていたが、その背景には杉本の体調の問題が深く関連していた。
最後のツアー中に田澤が喉を壊してしまうというアクシデントもありつつ、1月4日当日を無事迎えたメンバーたち。白で統一した衣装で現れた4人は「LAST GIG.『燦』」のロゴを大きくあしらったバックドロップ幕を背に、再始動のタイミングで発表した「火花」でライブの口火を切り、「FAKE」「わがままロミオ」と懐かしいナンバーを立て続けに披露する。心配されていた田澤のボーカルは完全復活しており、彼が「導火線に火は点きました。すべてを燃やし尽くしていきましょう!」と叫ぶと、それに同意するように大きな歓声が響いた。
“Waiveの世界”へと没入させていく本編
結成時より熟練を重ね、力を増した田澤の表現力に加え、各々のキャリアに裏打ちされた杉本、高井淳(B)のサウンドメイク、また普段は普通の会社員をしているとは思えないほどステージで弾ける貮方孝司(G)、それを支えるサポートメンバー山内康雄(Dr)の変幻自在のビートが武道館中に響き、オーディエンスを“Waiveの世界”へと没入させていく。その一方で口を開けば、田澤と杉本は漫才さながらの軽快なトークを繰り広げ、2階席まで観客で埋め尽くされた会場に何度も失笑や爆笑が沸き起こる。そこには解散ライブ特有の湿っぽさはなく、“いつも通りのWaive”を全力で楽しもうとするメンバーとファンの姿があった。
コミカルな振付により奇妙な一体感が生み出された「ペーパードレスレディ」を経て、田澤が「武道館の実感がありつつ、けっこうステージに上がるまで今日というなにがしをつかめずにいたんですが、(ステージに)出てきて皆さんの顔を見たらどうでもよくて……」と素直な心情を口に。すると、スクリーンにはメガネのブリッジをクイッとあげる杉本の顔が。「ヒュー!」という歓声が起こる中、田澤は「今日という時間をそれぞれ思いっきり楽しんで。全部置いていくので、全部持って帰ってください」と真剣な面持ちで口にし、「そっと…」を筆頭に懐かしい楽曲を畳みかけた。
本編の折り返しでは、それまでの弾けるような空気を田澤いわく“極上のスローバラード”「C.」が一変させる場面も。狂おしい感情をまっすぐに伝える田澤のボーカルと、複雑な感情を内包する杉本の揺らぎのある声が、楽曲に深みを与える。続く「世界がすべて沈む-pain-」では、少ししゃがれた田澤のボーカルが深夜の景色を鮮やかに描き出し、慟哭のように轟くギターの音が、喪失感にさいなまれる感情をオーディエンスに生々しく表現。4人は楽曲ごとに異なるめくるめく景色を紡ぎ、オーディエンスのさまざまな感情を呼び起こす。
結成25年でたどり着いた舞台
開催発表当初はSNSなどで「Waiveに武道館は無理じゃないか」といった否定的なコメントもあったこの解散公演。杉本は結成25年を経てたどり着いた舞台を踏み締め、「この景色ですよ!」「本日はお集まりいただきありがとうございます」と客席を見渡した。しみじみとした空気が漂ったのも束の間。後半戦は「Lost in MUSIC.」「燦-sun-」「ガーリッシュマインド」といった新旧のライブチューンを中心に、BPM高めのナンバーが“ロックモードのWaive”を前面に打ち出す。本編のラストナンバーは「まだ見ぬ未来へと駆け抜けてく」「この道のゴールは 見えなくていい」と歌う「いつか」。貮方と高井は肩を寄せ合い、杉本は天を仰ぎながら自らがつづった歌詞を口ずさむなど、エモーショナルな空気の中でメンバーは一旦ステージをあとにした。
この日、Waiveは別れを惜しむ観客の思いに、トリプルアンコールという形で応えた。最初のアンコールではWaiveにとって始まりの曲である「spanner」を、MCも挟まずストイックにパフォーマンス。2度目のアンコールでは、田澤の「今となってはWaiveの中では一番有名な曲」「この曲が俺たちを武道館に連れてきてくれた、と言っても過言ではないと思う」という大仰な説明に、杉本が「それは過言やろ!」「でもWaiveにしては珍しく全員で書いた曲やからね。作詞、めちゃくちゃ悩みましたから」という解説に続いて、わずか数秒のショートチューン「爆」を投下する。鮮やかな銀テープがアリーナに放たれ、大団円の空気が漂うが、瞬時に観客の頭には「これでライブは終わりなのか?」という疑問が。すぐさま「このままでは終われない。終わらせない」とばかりに熱烈なアンコールを起こし、メンバーをステージに呼び戻した。
完全燃焼した田澤孝介
当初は「LAST GIG.『燦』」の文字をあしらったバスタオルで顔を覆うと「燦マン」になれるとふざけ倒し、“普段通りのWaiveらしいライブ”を遂行することに注力していた田澤だったが、グッズの紹介が終わったタイミングで真剣な表情に。「こういういつも通りの僕らを最後に見てもらって、終われるということがすごくうれしいです」と2005年の最初の解散時の苦しい心境を吐露。「僕が脱退するというのをきっかけに、どんどんバンドがぐちゃぐちゃになって。今考えてもひどい……あれはひどい解散だった」と述べつつ、「奇跡だった」という2010年に行った再演を振り返る。
「そのまま何度か再演を繰り返して、そのまま置いとけば永遠だったんですけど」と、メンバーそれぞれの事情を踏まえ2度目の解散という道を選んだ背景を説明。「最初はあんまり思い描いてたプランが計画通り進まなくて。僕たち自身も、ついてきてくれるファンのみんなもけっこうもどかしかったと思うんですが、この1年ものすごく熱量の高い活動ができて。(最後の)ツアー中からもずっと言ってたんですけど、ずっとずっと熱量を高くしてって、今日ピークで終わりたいというのが僕の目標としてあった。それが今日叶ったなと思っています」と胸を張った。
続けて彼は喉を壊し、一部公演を欠席した最後のツアーについて言及。「悔いはなかったんですよ。思いっきりやってよかったなと逆に思ってる。常々、『今日最後でいいと思ってライブをやっている』というのが心から言えていた。迷惑をいっぱいかけたし、心配もいっぱいかけた、でもそれがわかった」と清々しい表情を浮かべる。そして、「(今日は)いつも通りの僕らを見せれたことがハッピーだなと思っているし、僕らの最後が塗り替わるなんて思ってはないけど、でも美しく終われたんじゃないかな。なので、これで許されたと俺は思ってないで? 俺はずっと持っていくから」とまっすぐ客席を見据える。「みんなの悲しい思いは全部俺に預けといてください。最後は笑ってみんな帰ってもらえたら俺はとてもうれしいです。今日初めて観に来た人たちにもちゃんとWaiveを見てもらえたらと思えるライブができた。集まってくださった皆さん、今日ここに来れなかった人もたくさんいると思うけど、出会ってくれてありがとうございました」と言葉を結んだ。
眩しい瞬間にいた杉本善徳
続いて口を開いた杉本は、Waiveの全曲のタイトルをちりばめたジャケットをファンに見せつつ、10分以上にわたって思いの丈を告白。「武道館は音出せる時間が決まっていて、限られた時間の中でやってるから、皆さんが求めてくれたことをすべて叶えることができなくて悔しいというか、残念な気持ち、惜しい気持ちがあるんですが」と言いつつ、「すべてのことが限られた時間の中でやっていて、そういうもんなんでしょうね。人生というか、生きていくということが」と自分を納得させる。「2年9カ月くらい前にこの(再結成~解散)プロジェクトを発表したときと今とでは、いろんなことがあったから、当時とは考えていることがきっと変わっていて。もしかしたら何ひとつ同じところなんてないのかもしれない」と思いを巡らせる。
「(再始動時に発表した『火花』にある)歌詞の内容にもある、眩しいもの、眩しい瞬間みたいなものを求めて人というか動物は生きていくから。その眩しい一瞬みたいなものを作りたいと。電球の球が切れるときみたいな、一番眩しい瞬間を武道館で作ることができればという思いで書いて、これまでやってきて。皆さんに眩しいものを見せることできたんですかね?……俺はわからないです。自分は見たような気もするし、見せられた気もするし」「でも、ずっと眩しいところにいるような。特にこの1年ぐらい、このプロジェクトの終盤、後半戦に入ってからずっと眩しいなと思ってやっています」と心境を明かした。そして、杉本は改めて解散に向けて再結成するという、一連のプロジェクトの発端について述懐。「いろいろなところにダメージがあって、これらを抱えていると思うようなステージができないことがきっかけの1つではあった」と赤裸々に明かし、田澤の喉の故障により「人生は何があるかわからない」という事実を突き付けられたと口にする。
「長い人生と思ってるけれども、長いか短いかなんて自分が決められるわけじゃなくて」「でも、こうやってバンドの解散みたいに勝手にそこに終止符を打つことをやっているけど、人生は続いていっちゃうじゃないですか」「生きてる限り人生は続いていて、その中で俺が『今日でこれで終わり』とか『バンドが解散』とか、『ごちそうさま』『おやすみなさい』みたいな感じのことをやったところで、また腹が減ったら食べるし、また眠くなったら寝るし、起きるし……」ととりとめもなく心に浮かんだ言葉を観客に伝えた。
「若い頃と違って生きてる日々のことを全部覚えてる状態ではなくなってきて。なんかそういうことを考えたら非常にふわふわしてる。今となっては眩しい時間の中にいるみたいな状態なのかもしれない。なんていうのかな……パンチドランカーみたいなもので、音楽をやってきて、バンドをやってきて得られる最高の状態にいるのかも。ステージにいる時間に酔っぱらえているということなのかな」と表現者としての喜びを言葉ににじませた杉本。Waive再結成プロジェクトで再び表舞台に戻ってきた約3年の活動に思いを馳せ、「こうやって夢中になって酔っ払える、眩しいなと思える時間に出会えること、出会えたことは本当に光栄なことだと感じる3年、いや26年だった気がします」「ここにいる人たちにとって同じものかどうかわからないけど、限りなく近いものを眩しいと思いあえていたら、それは(再結成を)やった意味がある美しいことなんじゃないかな」と彼なりの言葉でメンバーやファンに感謝の思いを伝えた。
“燦”のもとで会える日が来ることを
長いMCの最後に杉本が口にしたのは「またの約束があるわけじゃないので、こんなこと言うのもどうかなと思うんですけど……願わくば俺たちみんなでまた眩しいものを……“燦”のもとで会える日が来ることを願っています」という再会を願う言葉。すすり泣く声もあちこちから聞こえる中、4人は過去の再演でも披露してきた「Days.」「HEART.」の2曲を披露した。
「どうもありがとう。Waiveでした!」と叫ぶ田澤に対し、杉本はジャケットにあしらわれた「燦」の文字の上に「会」と書き入れる。スクリーンに大きく投影されたのは、“かいさん”と読む「会燦」。貮方と高井が去ったあともステージに残り続けた杉本と田澤は万感の表情で硬い握手を交わし、2人そろって舞台から去る。そしてスクリーンに再び「会燦」の文字が映し出されたのち、静かにフェイドアウトしていった。
なお「LAST GIG.『燦』」の模様は、後日Blu-ray化されることが決定。Waiveのオフィシャルサイトにて3月4日まで予約を受け付けている。
セットリスト
「LAST GIG.『燦』」2026年1月4日 日本武道館
01. 火花
02. FAKE
03. わがままロミオ
04. 君と微笑おう
05. あの花が咲く頃に
06. PEACE?
07. ペーパードレスレディ
08. そっと…
09. unforgettable memories
10. Just like me.
11. ASIAN「noir」GENERATION.
12. C.
13. 世界がすべて沈む-pain-
14. バニラ
15. Lost in MUSIC.
16. ネガポジ(Negative & Positive)
17. assorted lovephobia
18. 燦-sun-
19. Sad.
20. ガーリッシュマインド
21. いつか
<アンコール>
22. spanner
<ダブルアンコール>
23. 爆
<トリプルアンコール>
24. Days.
25. HEART.
関連する人物・グループ・作品
VIOLA KAM ★ @vizkage
📸 20260104 Waive at 武道館を撮影いたしました。
大好きなバンドの大切な瞬間を残させていただきました。カメラマンとしてその場に立ち会い、同じ時間を共有できたこと、そして一人のファンとして、とても幸せでした。本当にありがとうございました。お疲れさまでした!! https://t.co/r5T5ogCYdH