Perfumeが過去の東京ドーム公演を再構築 笑顔で再会を約束し、しばしの“コールドスリープ”へ

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「私が鍛え上げた娘たちだ。これからも、ずっと大丈夫」

ここから「Flow」「Teenage Dreams」と、儚さを帯びたバラードが続く。「Flow」ではその言葉をメッセージとして観客の心にしっかり届けるように、曲に合わせてスクリーンに大きく歌詞が映し出された。「Teenage Dreams」では、3人が花道の先端で椅子に座りながら歌唱。「帰ろう 帰ろう あの頃に」という優しい歌にオーディエンスが感傷に浸っていると、美しいアウトロに重なるように、実はカキモトは3人の父親であるという、キキモの告白が流れた。その衝撃を打ち消す間もなく、ライブは「Human Factory -電造人間-」へ。不穏なサウンドと奇妙なVJ映像がシリアスな雰囲気を煽る一方で、「私たちは飼い猫」という歌詞の通りの、猫の手つきを模した振付が観客の目を釘付けにする。

そして物語の舞台は3年後に移る。3人とキキモによるカキモトの破壊により、機械人間たちは消失するはずだったが、事実は違った。カキモトは機械人間を作る際に人間を核として取り込んでいたため、核が開放されたことで彼らは元の人間に戻ったのだ。代わりに消失したのはアヤカ、ユカ、アヤノの3人。キキモは悲しみに暮れるが、彼女たちが完全に失われたわけでなく、どこかに存在しているのではないかと疑問を持つ。そしてキキモは3人の捜索を決意するのだった。

カキモトを破壊するパスワードの入力に向かうPerfume。(撮影:上山陽介)

カキモトを破壊するパスワードの入力に向かうPerfume。(撮影:上山陽介) [拡大]

大きな月を背にした幻想的な「Moon」を歌い終え、物語は遂にクライマックスへ。続いて「exit」が始まると、その間奏でキキモの最後のメッセージが流れた。彼女はアヤカ、ユカ、アヤノが並行宇宙に転生している痕跡を発見。そして奇跡的にも、3人とも同じ時間、同じ場所に転生し、変わらず一緒に歌って踊っているのだという。ここでキキモが語った「私が鍛え上げた娘たちだ。これからも、ずっと大丈夫」という言葉は、これまでPerfumeの振付とライブ演出を手がけてきたMIKIKOから贈られた、これからコールドスリープに入る現実のPerfumeへのエールにも聞こえる。

そしてスクリーンにスタッフロールが流れ、「exit」は終了。その瞬間、転生後のアヤカ、ユカ、アヤノと思われる制服姿の3人の女子が学校の屋上で踊っている姿が一瞬だけ映り、前後篇にわたって続いた「ネビュラロマンス」の物語は幕を閉じた。

リミックスメドレーで4万5000人の思いが1つに

物語の完結を称える拍手が会場を包むが、しかしライブはまだ終わらない。スクリーンに「ARE YOU READY TO DANCE?」「REMIXED BY YASUTAKA NAKATA」という文字が映し出され、「ポリリズム」のリミックスバージョンが流れ始めた。背後のスクリーンには、過去に蓄積された膨大な「ポリリズム」のパフォーマンス映像が次々に流れ、物語を表現してきたここまでのステージとは雰囲気が一変。さらにアリーナに向けて金テープが発射され、東京ドームは祝祭空間へと姿を変えた。コールドスリープ前最後のライブとはいえ、しんみりとした空気など微塵も感じさせない。

さらに「Butterfly」「edge」もノンストップでミックス。初期の曲だからこそ、そのパフォーマンスはPerfumeが今なお進化の途中にあることを印象付ける。そして「チョコレイト・ディスコ」で会場の盛り上がりは最高潮に。悔いを残さずこの日を楽しみ尽くそうという4万5000人の思いが1つになった、割れんばかりの「ディスコ!」という叫びが巨大なドームを揺らした。

Perfumeのライブには欠かせない、リズムに合わせてみんなで踊って声を出す「『P.T.A.』のコーナー」へも、流れを止めずにノンストップで突入。おなじみの「男子!」「女子!」「そうでない人!」を、あ~ちゃんが矢継ぎ早に呼びかけていく。この日に観客と一緒に踊ったのは、秋にちなんだ「かぼちゃ」「すすき」「栗拾い」の形態模写ダンス。2014年から秋のライブでたびたび行われてきたこのダンスで、最終的にメンバー同士がイガグリを投げ合う展開になった。

「『P.T.A.』のコーナー」をはさんでもリミックスメドレーはまだ終わらない。「NIGHT FLIGHT」で興奮の渦になった客席に向けて、あ~ちゃんが「手を上に挙げてください! いくよ! せーの!」と呼びかけた瞬間、4万5000人が一斉に手のひらを掲げ、「MY COLOR」がスタート。広い東京ドームが一体感に包まれた。もうライブが終わりに近付いているにもかかわらず、メンバーは名残惜しさも見せずにすがすがしい笑顔で、そこには悲壮感など皆無だった。

さらに「MY COLOR」の曲中で、3人はマッシュアップするように「Baby cruising Love」と「リニアモーターガール」の振付をサプライズで披露。トラックだけでなくダンスにおいても、この日限りの特別なリミックスが繰り広げられた。

のっち(撮影:木下マリ)

のっち(撮影:木下マリ) [拡大]

「コールドスリープを最初に言い出してくれたのは周りの方たち」

「MY COLOR」が終わり、客席に向けて深々と頭を下げた3人は、最後の挨拶を始めた。「こんなにも東京ドームで緊張せずに楽しめるライブができる日が来るなんて。初めての東京ドームが後悔ばっかりだった私に、大丈夫だよって言ってあげたいです」と、かつての自分を振り返ったかしゆか。彼女は続けてコールドスリープ後について「私たち3人はいつも手を取り合って。前を向いて必ず新しい道を選んできました。今回のこの決断も私たちにとって新しい道への挑戦です。会えない時間に寂しい思いをさせてしまうかもしれないけど、一緒に紡いできたこの歴史は消えません。そして、音楽が私たちをつないでくれると思います」と観客に伝え、「だから、寂しくなったらいっぱい聴いてくれていいんだよ?(笑)」といたずらっぽく微笑んだ。

続いてのっちは「ちょっと疲れたとか、休みたいとか、1人になりたいみたいなことがまったくない中で、この選択ができるっていう軽やかさ。コールドスリープすることも1つの挑戦だと思っております。本当に挑戦が大好きなグループなんですね(笑)」と、今回の決断が決してネガティブなものではないことを説明。そしてファンに対し「でも、そんな選択を取れたのも本当に皆さんのおかげです。コロナ禍に、どうやったらみんなに楽しんでもらえるか、寂しい気持ちにならないかを考えながらライブを作った期間が、みんなのことを大事に思わせてくれて。その期間に絆が深まったと思っています」と深い感謝を口にした。

最後にあ~ちゃんが語ったのは「自分たちが思い描いていた夢はとうに叶っていて、リアルに夢を叶えたいと思っていたのは最初の東京ドームまででした」という回想だった。かつて「ミュージックステーション」の特番の控室で、3人で心を決めて事務所のスタッフに「ドームでやりたい」と直談判したというPerfume。「今思えば、あのときよくそんなこと言いだしたなと思う」という彼女だが、そこからPerfumeは4回も東京ドームのステージに立つことになった。

コールドスリープ発表後に多くの人々からの温かい反応に触れたことを振り返りつつ、あ~ちゃんは「みんながそれぞれの人生を、幸せを願ってくれました。まさか、そんなふうに思ってもらえる日が来るなんて。なんていい人たちなんだろう。自分のやりたいこと、観たいものよりも、相手の幸せを願えるなんて、本当に素敵な関係だと思います」とファンとの絆を確認。そして、コールドスリープの決断に至った経緯を初めて明かした。

「最終的な決断は私たちがしたんですけれど、最初に言い出してくれたのは周りの方たちで。たくさんのアドバイスをいただいて決心しました。もっと商売したい人もいるかもしれないのに、それよりも私たちの人生を優先して幸せを願ってくれる人が近くにいてくれて、私たちはビックリして涙涙でした。『そんな選択をしていいんだ!』って驚いたけど、振り切って決断したわけではありません。この人たちを信じてみよう、そしてまた会う日を最高の日にするために、いい毎日を送ろう、と決心しました」

「GISHIKI」逆バージョンで、3人はそれぞれ別の道へ

最後に3人は、指でハートを作りながら、隣にいるメンバーを向いて「大好きだよ」と互いにつぶやき合った。そして、4万5000人の観客に向き直って声を揃える。「それでは、Perfumeでした! ありがとうございました!」。深々とお辞儀をした3人が顔を上げると、一点の曇りもない晴れやかな笑顔だった。

3人がステージを去ると、一瞬の暗転後、場内に「願い」が流れ始める。スクリーンに映し出されたのは、メジャーデビュー後のPerfumeの軌跡。DVD「Fan Service [bitter]」のメイキングに収録されていたスタジオでのオフショットに始まり、インストアライブ、初の東京・LIQUIDROOMワンマン、アルバム「GAME」でのチャート1位獲得、初の日本武道館公演など、これまでの長い歴史を刻んだ数々の記録映像が、走馬灯のように駆け巡っていく。

映像が終わると、白いふわふわとしたドレスをまとった3人が、センターステージに再び姿を現した。オーディエンスの手拍子に包まれながら彼女たちが披露したのは「巡ループ」。その思い出のすべてを大切にしまうように、曲の終わりで3人は、そっと本を閉じる振りを踊った。

「巡ループ」をパフォーマンスするPerfume。(撮影:上山陽介)

「巡ループ」をパフォーマンスするPerfume。(撮影:上山陽介) [拡大]

そして3人は白い長いベールを両手で引きながら、それぞれ別の花道の先端に向かって、「25」からカウントダウンする声に合わせて1歩1歩進んでいく。これは2010年の東京ドーム公演のオープニング「GISHIKI」の逆バージョン。2010年のライブでは、自らをPerfumeに捧げるために3つの花道から中央に集まって1つになった彼女たちが、これからそれぞれが別の道を歩き始めることを示唆するように、今度は中心から3方向へ1人で帰って行く。

このとき花道の先端では、いくつもの小さなボールが浮かび上がり、徐々に3人それぞれのシルエットを形作っていく。このシルエットは昨年開催された展覧会「Perfume Disco-Graphy 25年の軌跡と奇跡」で展示されていたインスタレーション「We are Perfume」だ。カウントがゼロになると同時に3人は、無数の粒で構成された自分自身の像を前に、静かに胸に手を当てカーテシーをし、そのままゆっくりと床下へと姿を消した。

「GISHIKI」終了後、花道の先端に残った3人の像。(撮影:上山陽介)

「GISHIKI」終了後、花道の先端に残った3人の像。(撮影:上山陽介) [拡大]

東京ドーム公演のセットリストは、ほとんどがライブ初披露の「後篇」からの新曲と、特別に用意されたリミックスばかり。コールドスリープ前の最後のライブだったにもかかわらず、キャリアを総括するベスト盤的な選曲とは程遠い、攻めに攻めた内容だった。終演後のスクリーンに映し出されたのは、次のライブでの再会を約束する「SEE YOU AT THE NEXT STAGE」という文字。いつかコールドスリープから目覚めるPerfumeに期待せざるを得ない、最新のPerfumeが最高のPerfumeであることを改めて確認させられる一夜となった。

なお、Apple Music、Spotify、LINE MUSICではこの東京ドーム公演のセットリストからなるプレイリストを公開中。またStationheadでは9月27日20:00より、このセットリストのリスニングパーティが開催される。詳しくはユニバーサルミュージックのPerfume公式ページを確認しよう。

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この記事の画像(全10件)

セットリスト

「Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME」2025年9月22日・23日 東京ドーム

01. GAME
02. 再生
03. Cipher
04. 再起動世界
05. ネビュラロマンス
06. エレクトロ・ワールド
07. ソーラ・ウィンド
08. Virtual Fantasy
09. FUSION
10. Perfumeの掟 2025
11. Flow
12. Teenage Dreams
13. Human Factory - 電造人間 -
14. Moon
15. exit
16. Perfume ZO/Z5 Reeeeemix
 ・ポリリズム
 ・Butterfly
 ・edge
 ・チョコレイト・ディスコ
 ・「P.T.A.」のコーナー
 ・NIGHT FLIGHT
 ・MY COLOR
17. 巡ループ
18. GISHIKI

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