Perfume「ネビュラロマンス 後篇」1万3000字ロングインタビュー|25年を巡る物語はラストシーンへ

「架空のSF映画のサウンドトラック」として構想された2部作のアルバム「ネビュラロマンス」。2024年10月に「前篇」がリリースされてから続いてきたこの物語が、9月17日にCDリリースされた「後篇」のアルバム、および9月22、23日に開催される東京・東京ドーム公演「Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME」をもって、いよいよ完結する。

小学生の頃に出会った3人が、Perfumeとして活動をともにし、唯一無二の表現者として未来を描き続けてきた四半世紀。その歩みをモチーフにした「ネビュラロマンス」の物語は、いったいどのような結末を迎えるのか。この記事では東京ドーム公演を目前に控えた彼女たちに、アルバム「ネビュラロマンス 後篇」の話題を中心に約1万3000字のボリュームで語ってもらった。

取材・文 / 橋本尚平撮影 / YURIE PEPE

前篇ツアーの歌番組のシーン、3人がイヤモニで聞いていた音とは

──少し前の話になってしまいましたが、まずは4月に終わった「ネビュラロマンス前篇」ツアーの話を聞かせてください。

のっち 23公演という、今までで一番本数が多いツアーだったんですけど、ずっと新鮮な気持ちでした。「架空のSF映画のサウンドトラック」というアルバムのコンセプトも新しかったし、その曲順通りにライブをするというのも、自分じゃない何かを演じながらパフォーマンスするのも楽しかったし。

かしゆか 回転しながら場面が転換するセットを、ストーリーに沿って行ったり来たりするという演出も初めてだったから、そのセットを使ってどう面白く見せられるか、回を重ねるごとにスタッフさんと一緒に極めていったのも楽しかったです。

──ライブで描かれた物語は、アルバムを作っている段階で中田ヤスタカさんが考えていたものに忠実だったんですか?

かしゆか いや、レコーディングのときに中田さんが話してくれたストーリーをもとに、田中裕介監督がミュージックビデオで世界を広げてくれて、その世界を舞台上に再現するという感じでした。

のっち アルバムの物語では、あくまで主人公は1人なので、その1人をどう3人で演じるかのアイデアを、「Cosmic Treat」のMVを作るときに田中監督が考えてくれたんです。ネビュラ軍として戦う傍ら、普段はPerfumeとして活動しているという落とし込み方を。主人公が音楽活動をしているという設定は、中田さんが書いてくれたストーリーにはなかったはず。

左からのっち、かしゆか。

左からのっち、かしゆか。

──自分たちが元になったキャラクターとはいえ、ライブをしながら演じるというのはどういう感覚でしたか?

のっち パラレルワールドみたいというか、もう1人の自分になったみたいな感覚はありました。

かしゆか 「私じゃないかしゆかを演じる」みたいで面白かったですね。テレビに出演するシーンで、「歌番組のスタンバイ中ってこんな感じだよ」みたいな普段見せないところを見せたりとか。

あ~ちゃん 物語の中で曲紹介を待ってスタンバイをしているときに、現実の会場ではお客さんがそれを見ているっていう。あのシーン、「新曲を初めてファンの人の前で歌うから3人とも緊張している」っていう裏の設定があったんですよ。だからリアルに演じて「緊張するね」とか3人で言い合ったり、「今ちょっと間違っちゃった」みたいな顔したり(笑)。

──がっつり演技してたんですね。

あ~ちゃん 私たちは女優さんでもなんでもないんですけど、昔から小芝居が好きなんですよ。昔、「OMAJINAI★ペロリ」っていう曲のリリースイベントでも、前奏が流れ始めたらかしゆかが「ちょっと待って! 緊張して歌えないよう……」って言い出して。それを「大丈夫大丈夫。『かえるのうた』を一緒に歌おう?」となだめて、「かーえーるのー……うん、いい感じに歌えるようになったね!」って言って改めて前奏が流れる、みたいなことをやってて(笑)。そういうのが3人とも好きだから燃えましたね。リアルと演じることの間を楽しんでました。

──すごく新しいことをしているように見えていたんですが、そう考えると原点回帰な部分もあったんですかね。

かしゆか それはあるかも。規模が全然違うけど(笑)。

あ~ちゃん あと、やるなら徹底的にリアルにやったほうがいいなと思ってた。歌番組のシーンについてもうちょっと言うと、実際の番組収録では本番前のスタッフさんからの声かけがあるんですよ。「CM入ります」「段差お気をつけください」「スタンバイお願いします」「5秒前、4、3、2、1」みたいな。そういう声があったほうがリアルな気持ちになれるから、ライブ中にイヤモニで耳に入れてたんです。

かしゆか 自分たちで声を収録してね。

のっち あれ面白かったよね(笑)。

──ライブの後半はツアー全公演でセットリストを変えるというのも面白い試みでしたよね。アルバム再現ライブだけだと事前にセットリストが全部わかってしまうけど、後半は内容の予想がつかないので、お客さんも別の公演をリピートしたくなりますし。

のっち 1回観たあとでもう1回観に行くことを「追いネビュラ」っていうらしいです(笑)。ファンの方からラジオのメールで教えてもらいました。

かしゆか 後半は「SIDE B」って呼んでたんですけど、この選曲を考えるのも楽しかったです。ライブ後の反省会で次の公演の曲を考えて、そこからスタッフさんたちと「照明どうしよう?」「演出どうしよう?」って話をするという。「いつも『チョコレイト・ディスコ』でお部屋のセットを使ってるけど、この日は『ワンルーム・ディスコ』でセットを使うから『チョコ』は下でやろう」とか、「床が動くセットを生かして『ナチュラルに恋して』のMVを再現してみたいね」とか。常に進行形で作り続けていたツアーだったから、ずっと刺激的でしたね。そしてそれに付き合って、限界まで調整してくれるチームで本当にありがたかったです。

「バッドエンドNG~!」ってぼやいてて

──そんなツアーを観て「物語の続きが気になる」と思っていた人たちにとって、アルバム「ネビュラロマンス 後篇」は待望の1枚だったと思います。2枚で完結するアルバムというのもPerfumeにとって初めてですし、今までにない種類の達成感があったのでは?

かしゆか レコーディングが楽しかったです。今まではだいたい、シングル曲が溜まったところでアルバムに向けた曲を録ってたけど、最初から1つの世界観に沿ったアルバムのための曲を録ったので。前篇のツアーをしている最中にどんどん後篇のレコーディングも進んでたし、「えっ! こんな感じなんだ! 意外!」みたいな曲もあって、最終的にどうまとまるのかワクワクしっぱなしでした。

左からかしゆか、あ~ちゃん。

左からかしゆか、あ~ちゃん。

──じゃあ、前篇のツアーを観た人が「このあとどうなるんだろう……?」と思っていたときに、同じ気持ちをPerfume本人も味わっていたんですね。中田さんの頭の中ではどの段階で結末が決まったんですかね?

あ~ちゃん 最初に聞いていたのは、すごいバットエンドだったんですよ。けど「バットエンドはいや~ん、バッドエンドNG~!」ってぼやいてて(笑)。だから結末についてはたぶん、私たちの意見を取り入れてくれたってことだよね? もっと悲惨な展開を聞いてたし。最終的に、アスファルトで一輪だけ咲いている野の花になる、みたいな(笑)。

のっち 原作は中田さんなんだけど、「巡ループ」にインスピレーションを受けた田中監督とMIKIKO先生が素敵な結末を考えてくれたというか。滅びて一輪の花になるラストは回避して、別の次元で違う何かになった3人がまた奇跡的に出会う、というお話にしてくれたんです。

──「巡ループ」が最後の曲だから、バットエンドというのはあんまり想像できなかったんですけど。

かしゆか 「巡ループ」はドラマ「ちはやふる」の主題歌というお話が来てから作られたんですよ。だから、もし「ちはやふる」がなかったら最後はこの曲にならなくて、滅びてアスファルトで咲くしかなかった(笑)。

あ~ちゃん ドラマのタイトルが「ちはやふる-めぐり」でよかったねって(笑)。