ご機嫌なロックンロールナンバーで幕開け
11年ぶりのツアーということもありチケットの抽選予約に50万通にもおよぶ応募が寄せられたという「souvenir2025 mariya takeuchi live」。開演前の場内にはこの日が来るのを指折り待ち続けてきたであろう多くの観客たちの期待と興奮が渦巻いていた。なお横浜アリーナで竹内がワンマンライブを行うのは今回が初となる。
定刻になると場内に英語のナレーションが鳴り響き、ショーの始まりを華やかに告げる中、バンドメンバーがステージに登場。今回のツアーで竹内のバックを務めるのは、バンドマスターの
RCA時代の楽曲を多彩なアレンジで
「一緒に素敵な時間を過ごしましょう」と観客に呼びかけた竹内は、ハンドマイク片手にステージを上手から下手まで移動し、客席を見渡しながら「Forever Friends」を笑顔で歌い届ける。歌唱後のMCでは、会場である横浜アリーナにまつわる思い出を回想。
昨年10月にリリースした10年ぶりのアルバム「Precious Days」にも収録されているシングル「歌を贈ろう」をしっとりと歌い上げた竹内は、1978~81年に所属していたRCAレコード時代の楽曲を3曲披露。鳥山のギターと宮里のサックスをメインに据えたシンプルかつ洒脱なアレンジで「五線紙」、山下が率いる4声のコーラス隊とともにアカペラのドゥワップスタイルで「リンダ」、都会の夜景をバックにAOR調のスタイリッシュなバンドサウンドで「ブルー・ホライズン」と、多彩なアプローチでそれぞれの楽曲をパフォーマンスして新旧のファンを楽しませた。
マツコ・デラックスにリクエストされた楽曲とは?
ミディアムバラード「象牙海岸」を歌い終えた竹内は、MCで再び観客とのコミュニケーションを楽しむ。「私のライブに初めて来たという人はいますか?」という自らの問いかけに多くの観客が手を挙げると「めっちゃ多い!」と驚きの表情を浮かべ、会場のあちこちから寄せられる「最高!」「待ってたよ!」「かわいい!」といった熱狂的な声援に手を振りながら「ありがとね」と笑顔で応える。MCで、先行きの見えない不安な時代について触れた彼女は、「こういう暗い時代だからこそ、せめて歌の中では皆さんを元気にしたいなと思っています」とシンガーとしての真摯な思いを口にし、続けて「日本のみなさん、おつかれ生です(笑)」とチャーミングにほほえみ、「元気を出して」を優しく歌い届けた。
寂しげな電話のベルの音で幕を開ける「告白」では、憂いに満ちた竹内の歌声がメランコリックなムードを作り上げる。「火曜サスペンス劇場」の主題歌として1990年9月にシングルリリースされた「告白」。この曲は今までライブで演奏されることはほとんどなかったが、初めて
自分の音楽を待ってくださっている人たちに会ってみたくてライブをやっている
身の回りにいる“隠れたレジェンド”に捧げるメッセージソング「静かな伝説」の演奏が終わると、ステージ後方のスクリーンに、竹内がこれまでの歩みを振り返る映像が投影される。当時のスタッフに「思い出作りのために」と説得されて作った1stアルバム、理想と現実の間で思い悩むことが多かったというデビュー後の活動、公私ともにパートナーになる山下達郎との出会い、2000年に日本武道館で18年ぶりに行ったワンマンライブで実感したファンの温かさなど、これまでの紆余曲折を慈しむようにして語る竹内。「今まで、あまりライブをやってこなかったんですが」と前置きして、「私は(ほかのアーティストとは)逆で、自分の音楽を届けたいんじゃなくて、自分の音楽を待ってくださっている人がどこかにいるんだということを信じて、その人たちに会ってみたくてライブをやっているんです」と語る竹内の姿を静かに見つめる観客たち。それに続く、「まだまだがんばりたいです」という彼女の力強い言葉に万雷の拍手が響きわたった。
どんな年齢になっても、前向きに進んで行こう
ライブ後半は、
世界的なシティポップブームが巻き起こるきっかけとなった楽曲「プラスティック・ラヴ」では、バンドが繰り出すグルーヴィな演奏が会場を揺らす。サビの一節を山下が歌唱して喝采を浴びる一幕もあった。さる3月に70歳の誕生日を迎えたと竹内が語り始めると、客席から拍手が寄せられる。続けて彼女は「どんな年齢になったとしても、その年齢を生きることを面白がって前向きに進んで行こうと。そして、どんな状況に陥ったとしても希望だけは捨てないでいようと。その考え方だけは、この曲を書いた18年前とずっと変わらずにいます」と告げてから、「人生の扉」を1つひとつの言葉を噛みしめるようにして歌唱。観客たちも、それぞれの人生を歌詞に重ね合わせるように、彼女の歌声にじっくりと聴き入っていた。「声が続く限り歌い続けたいと思いますので今後ともよろしくお願いします」という言葉から本編最後に届けられたのは1986年に
アンコールで夫婦デュエット披露
盛大な拍手に応えてステージに再び登場した竹内は、最新アルバムに収録されたThe Everly Brothersのカバー「All I Have To Do Is Dream」を山下との夫婦デュエットで披露。みずみずしいサウンドに乗せて美しいハーモニーを響かせた。「20代の頃の曲を聴いてください」という言葉でスタートしたのは1979年発表の3rdシングル「SEPTEMBER」。スクリーンには、この曲を歌唱する20代の頃の竹内が、今現在の彼女とシンクロするように映し出された。続けて届けられたのは、こちらも初期曲である、1980年発表の4thシングル「不思議なピーチパイ」。ウキウキするような軽快なサウンドに観客たちもクラップで応え、ハッピーな雰囲気がアリーナ全体に広がった。バンドメンバーを送り出した竹内は最後に「いのちの歌」を歌唱。「皆さんどうぞお元気で。またいつかお会いしましょう」と客席に手を振り、再び一礼してからステージを後にした。
なお各音楽ストリーミングサービスでは、この公演のセットリストで構成されたプレイリストを公開中。
セットリスト
竹内まりや「souvenir2025 mariya takeuchi live」 2025年6月4日 横浜アリーナ
01. アンフィシアターの夜
02. 家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)
03. マージ―ビートで唄わせて
04. Forever Friends
05. 歌を贈ろう
06. 五線紙
07. リンダ
08. ブルー・ホライズン
09. 象牙海岸
10. 元気を出して
11. 告白
12. 静かな伝説
13. カムフラージュ
14. 幸せのものさし
15. J-Boy
16. プラスティック・ラヴ
17. 人生の扉
18. 駅
<アンコール>
19. All I Have To Do Is Dream
20. SEPTEMBER
21. 不思議なピーチパイ
22. いのちの歌
う こ つ い @新潟市内でなんとなく生存中 @Niigata06406444
【ライブレポート】竹内まりや、11年ぶりの全国ツアー閉幕「声が続く限り歌い続けたいと思います」 https://t.co/LyARV4eyuX