Suchmosの帰還
2021年2月、「修行の時期を迎えるため」という理由から一時活動休止に入ったSuchmos。同年10月にはHSU(B)の死という衝撃な出来事により深い悲しみに襲われた彼らだったが、それぞれが別バンドやソロプロジェクトの始動、他アーティストのサポートなどを通して表現活動を続け、時折お互いの作品やライブに参加することで、Suchmosの作品の数々を心の支えに復帰を待ち続けるファンたちに、“バンドの火は消えていない”ということを示してきた。そんなファン待望の知らせが届いたのが昨年の10月6日。J-WAVE「TOKIO HOT 100」の中でナビゲーターであるクリス・ペプラーの口から興奮気味に「Suchmosが始動するらしい」と告げられると、翌7日にバンドのオフィシャルサイトで彼らの地元・神奈川にある横浜アリーナで復活ライブが行われることがアナウンスされた。
Suchmosにとって5年8カ月ぶりのワンマンとなった「The Blow Your Mind 2025」は、2公演に対してキャパオーバーの約20万の応募が殺到。そんなプラチナチケットを勝ち取り、会場に詰めかけた人々は老若男女さまざまで、Suchmosの再始動を心待ちにしていた長年のファンはもちろん、空白の期間に彼らの音楽に魅せられたライブ初参戦のリスナーも多かったはずだ。そんな高揚したミュージックラバーたちが今か今かと開演を待ち構える中、ふと客電が落ちると幻想的なオープニングSEをバックに、Suchmosがサポートベーシストの山本連を迎えた6人編成で姿を見せる。彼らはTAIHEI(Key)の穏やかなキーボードの音色で演奏を開始し、初期のナンバー「Pacific」で地元・茅ヶ崎の風景を場内に浮かび上がらせたかと思うと、ノスタルジーに浸る暇も与えないまま7月2日発売の新作EP「Sunburst」から新曲「Eye to Eye」をプレイ。YONCE(Vo)の艶やかな歌声と楽器隊が紡ぐ盤石のグルーヴで、現在進行系のバンドの姿をオーディエンスに見せつけた。
新旧織り交ぜた楽曲にファン熱狂
山本が刻むメロディアスなリフが印象的な「DUMBO」で演奏のギアを一段階引き上げたSuchmos。OK(Dr)のタイトなドラムとKaiki Ohara(DJ)の鋭いスクラッチを合図にキラーチューン「STAY TUNE」を繰り出して爆発的な熱狂を生み出すと、TAIKING(G)の軽妙なカッティングに思わずハンドクラップが沸き起こった「808」へとシームレスにつなぐ。曲中にはYONCEが「Ladies and Gentlemen! 紹介します。On Bass 山本連!」と、この特別な1日を作り上げるのに必要不可欠な存在であり、新作EPのレコーディングにも参加した山本を超満員のオーディエンスに紹介する場面も。そして演奏後にYONCEが「ひさしぶり」と呟くと、そのひと言に場内は割れんばかりの歓声に包まれる。彼は客席を見渡しながら「帰ってきたと言うべきか、また新しく始まったと言うべきかわかりませんが、今日この場所に来てくれてありがとう」と感慨深そうに語った。
盛大なコール&レスポンスで会場をひとつにした「Alright」を経てライブは中盤へ。YONCEが「今日は夏至なんですよ。“夏に至る”と書いて夏至なんですけどね、昼間が一番長い日。だから普段いないやつも来てるんじゃない? わかんないけど、そんな気がする」と告げて披露されたのは、仲間への思いをつづったミディアムナンバー「MINT」。これまで幾多のステージでハイライトを生み出してきた同楽曲だが、この日は会場に漂うどこか感傷的なムードと相まって「周波数を合わせて調子はどうだい? 兄弟、徘徊しないかい? 空白の何分かだってその苦悩や苦労を Blowして踊りたい」というフレーズが、天国へと旅立ったHSUへのメッセージのようにも感じられ、観客は6人の演奏にじっくりと耳を傾けていた。
休止期間を経て気付かされたファンという存在の大きさ
Suchmosはその後、美しいピアノの響きと洗練されたバンドサウンドが光る「Whole of Flower」や、“愛すること”や“自分らしくあること”をストレートに歌う「Marry」など新作EPの収録曲を次々と披露。6人の強烈な個性が詰め込まれたSuchmos流のラテンナンバー「Latin」では、手練れたちによるテクニカルな演奏によって深度を増していくカオティックな音世界の中、YONCEは会場の誰よりも楽しそうにデタラメなダンスで感情の昂りを表現した。ライブが終盤に差しかかると、Suchmosはダンサブルな「GAGA」や焦燥感漂う「VOLT-AGE」で再び会場の熱気を高めていき、最後は「YMM」を軽やかにパフォーマンス。横浜アリーナにグルーヴの渦を生み出した。
アンコールでは、YONCEが「ライブが始まるまでヘラヘラしていて、ステージに立った瞬間に自分の愚かさに気付きました。こんなに大事な人たちを待たせたり、観る機会がないままに何年もの歳月が経っていたという事実を1曲目のド頭から痛感して」と、バンドの復帰を辛抱強く待ち続けていたファンへ思いを届けた。そして彼は「俺たちのとっても近くにいたヤツがいなくなりました。きっと皆さんの中にも、近しい人を失った人もいれば、新しい命を育んでいる真っ最中の人もいると思います。目を瞑ってしまいがちだけど、世の中では人を殺したり、殺されたりってことが実際に起きてる。アーティストがこういうことに口を挟むと冷めるって人もいると思うけど、やっぱり命は大事」「失ったものは帰ってこない、絶対に。だからずっと覚えていたいし、思っていたい」と仲間の死を経た自身の死生観をまっすぐに伝えたのち、「深呼吸しません?」と提案してオーディエンスとともに呼吸を整えた。
SuchmosはYONCEの「クソ馬鹿な友達に贈ります」という言葉をきっかけに、どこかノスタルジックなロックンロールナンバー「Stand By Mirror」をじっくりとプレイ。そしてTAIHEIの流麗かつ繊細なピアノの音色に残る4人の楽器隊が少しずつ演奏を重ねていき、彼らが活動初期から長年プレイしてきたスローナンバー「Life Easy」へと突入する。YONCEは客席を眺めながら「またやろうね」と語りかけてファンとの再会を約束すると、メロウな音の波に体を委ねながら曲中に「新しいこと、もう戻れないこと、変わってしまったこと。なんでもいいよ。今、楽しい、うれしい、かなしいけど、新しい場所へ行きたいんだ。生きていたんだ」とアドリブを入れて、Suchmosの新たな船出を力強く宣言した。すべてを出し切った6人は横並びになって一礼し、温かな拍手と歓声の中、充実した表情でステージをあとにした。
Apple Music、Spotify、Amazon Music、LINE MUSIC、YouTube Musicでは「The Blow Your Mind 2025」のセットリストで構成したプレイリストを公開中。Suchmosは7月2日の新作EP「Sunburst」のリリース後、10月より海外と国内の13都市を巡るアジアツアー「Suchmos Asia Tour Sunburst 2025」を開催する。国内公演のチケットは明日6月23日12:00に先行受付がスタート。海外公演のチケットに関する情報は、Suchmosのオフィシャルサイトで確認を。
セットリスト
Suchmos「The Blow Your Mind 2025」2025年6月21日 横浜アリーナ
01. Pacific
02. Eye to Eye
03. DUMBO
04. STAY TUNE
05. 808
06. PINKVIBES
07. Burn
08. Alright
09. MINT
10. Whole of Flower
11. Marry
12. OVERSTAND
13. To You
14. Latin
15. GAGA
16. VOLT-AGE
17. YMM
<アンコール>
18. Stand By Mirror
19. Life Easy
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#Suchmos #SCM_BYM
Suchmos is Back!
6/21初日のライブレポ
最高な日を共にできて嬉しいよ https://t.co/ZW1DoYLEL3