新潟の地で常に進化を続けてきたRYUTist
RYUTistは2011年に結成され、新潟市中央区古町を拠点に全国でライブ活動を行ってきたアイドルグループ。RYUTistというグループ名は新潟市を表す「柳都(りゅうと)」という言葉と「アーティスト」を掛け合わせたもので、「新潟のアーティスト」という意味が込められている。真摯かつストイックな姿勢で臨んできたライブパフォーマンス、多彩なアーティストから提供を受け、綿密かつ丁寧に作り込まれたポップソングの数々、メンバーの穏やかで素朴なキャラクター……この13年間、彼女たちは新潟の地から唯一無二の魅力を放ち、常に進化を続けてきた。決して活動の規模は大きく派手なものではなかったが、日本全国に数多くのローカルアイドルが存在する中、誰も模倣できない道を歩んできたのがRYUTistだ。
2023年春から現在の3人体制で活動してきた彼女たちだが、メンバー個人での活動の幅も広がり、それぞれが今後の人生について考え始める中で話し合いを重ねた結果、メンバー全員卒業という決断に至った。今年9月に報じられたこのニュースは多くのアイドルファンや音楽リスナーに驚きを与えたが、メンバーはこれまでグループを支えてくれたファンと“笑顔でサヨナラ”すべく、卒業までの3カ月間を“ありがとねほんとにねSEASON”と名付けてそれまで以上に精力的に活動を展開。宮城、新潟、大阪を回るツアーや楽曲提供アーティストとのツーマン、メンバーのプロデュース公演など多くのライブを重ね、感謝の思いを込めた歌声を一途にファンへ届けてきた。そしてその終着点である卒業公演の舞台となったのが、結成8周年ライブが開催された思い出の場所・渋谷CLUB QUATTRO。チケットが完売し超満員となった会場で大勢の観客が見守る中、3人がステージで見せたのは13年をかけてたどり着いたRYUTistというアイドルグループの到達点と集大成、そして幸せに満ちたパフォーマンスだった。
ライブの幕開けを飾ったのは
ロビーに過去衣装が展示され、フロア頭上に多数のフラッグが飾られるなど、3人の歩みを振り返りつつ旅立ちを祝う特別なムードが開演前の会場に漂う。このフラッグは本公演のキービジュアルを手がけるなどRYUTistと縁の深いマンガ家・ナカGがデザインしたもので、「卒業公演をメンバーフラッグでいっぱいに!プロジェクト」に申し込んだファンの名前がRYUTistメンバーによる直筆で書かれた。活動休止前ラストライブという大きな意味を持つ公演ながら、RYUTistらしい温かな空気が会場に充満していた。そしていよいよ開演時刻を迎えると、初期から使われてきたおなじみの出囃子「RYUTiswing」の新録バージョン「RYUTiswing LAST LIVE」が軽快に鳴り響き、フロアでクラップが発生する。このライブのために用意された純白の衣装に身を包み、ステージに姿を見せたRYUTistが1曲目に披露したのはデビュー曲「RYUTist! ~新しいHOME~」。グループの始まりの曲を晴れやかに歌うメンバーと息をそろえてコールを叫ぶファンの気持ちが重なり、開演早々に会場が一体感で包まれた。
さらに清涼感あふれるポップチューン「日曜日のサマートレイン」、今年リリースされたばかりの楽曲ながら盛大なコールが入るライブ鉄板曲へと成長した「WOOT!」、デビュー8周年のタイミングで制作された恋愛ソング「Majimeに恋して」と続き、はつらつとした高揚感があふれていく。MCに入るとメンバーは「ついにって感じするねー」「でもまだ実感が湧いてない」といつもの調子でトーク。いい意味で緊張感のない3人の姿にフロアのファンもにこやかな表情を浮かべていた。次のブロックでは昨年4月にグループを卒業した佐藤乃々子を含む4人体制最後の楽曲「ターミナル」や、グループの代表曲と言える柴田聡子の提供ナンバー「ナイスポーズ」が披露され、RYUTistの楽曲がいかに粒ぞろいで、いかにポップセンスにあふれているかを観客に改めて実感させるようなセットリストとなった。
「春⾵烈歌」で巻き起こった盛大なシンガロング
続いてRYUTistはこれまでに担当してきたCMソングをメドレー形式で披露。グループの歴史を総括するようなライブ構成、普段の公演では聴く機会の少ないレアなナンバーを詰め込んだ選曲でファンを喜ばせつつ、新潟県民にはおなじみの楽曲の数々で地元への愛と感謝の気持ちを表明した。このメドレーを含めるとすでに15曲を披露しているRYUTistだが、「みんなお腹いっぱいかもしれないけど、まだまだだからね」「今日は長いからね」と観客の期待を煽ると、「青空シグナル」「センシティブサイン」「黄昏のダイアリー」を駆け抜けるようにして連続でパフォーマンス。歌とダンスで場内に清爽な空気を生み出したかと思えば、昨年発表の最新アルバム「(エン)」より「PASSPort」「水硝子」も披露し、繊細な歌声、静と動の緩急が効いた振付で観客の視線を釘付けにした。
五十嵐が自身と同じくRYUTistのオリジナルメンバーである宇野に向かって「(最後まで活動を続けるのが)この2人になるとは思わなかったね」と笑いながら語るなど、MCに入るたびに和やかなムードが流れるが、横山の「私たちは卒業してしまいますが、RYUTistの楽曲はいつでもみんなのそばにあります」という言葉で場内に緊張感とセンチメンタルな空気が生まれる。横山が「月日が流れて季節が巡って、私たちが大人になってまたいつか出会えるその日まで今日という日を忘れないように、今日という日が消えないように皆さんがずっとこの曲を聴いてくれたらいいなと思います」と言葉を紡いだのち、3人は「春にゆびきり」を歌唱。曲前の横山の語りとリンクする「いつか僕らがまた出会うその日に 消えないよう 忘れないよう ほら ゆびきりしよう」という歌詞が観客の胸にじんわりと染み渡った。
さらに数々のライブを温かく彩ってきた「⼝笛吹いて」が響き渡ると、次第に会場全体に得も言われぬ情感が広がっていく。そこから「Blue」「神話」と流れるように楽曲が畳みかけられ、観客は幻想的に歌い踊る3人の一挙一動を目に焼き付けるべく、ステージ上の光景を息を凝らして見つめる。続いて披露された曽我部恵一の提供曲「春⾵烈歌」では、横山の「クアトロ歌えー!」という叫びに呼応して盛大なシンガロングが巻き起こり、その声を浴びたメンバーは思わず目から涙をあふれさせた。
3人が語るメンバーとファンへの感謝の思い
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【ライブレポート】RYUTist「ありがとね、ほんとにね。」3人の卒業公演で見せた集大成、感謝の思いを込め“笑顔でサヨナラ”(写真111枚) https://t.co/zuoU8dRkr7