フジファブリックが盟友アジカン&くるり迎えた20周年ライブ、大阪の夜に響いた特別な「若者のすべて」

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フジファブリックが11月10日に大阪・大阪城ホールでデビュー20周年記念ライブの第3弾「ノンフィクション」を行った。本公演にはフジファブリックとゆかりの深いASIAN KUNG-FU GENERATIONくるりがゲスト出演した。

フジファブリックのステージの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

フジファブリックのステージの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

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来年2月をもって活動休止することが決定しているフジファブリック。彼らのデビュー20周年ライブは4月と8月に東京で行われ、この大阪公演で区切りを迎えた。フジファブリック、アジカン、くるりの3組による対バンライブはこれが初。当日は貴重な競演を目に焼き付けるべく、たくさんのファンが大阪城ホールに詰めかけた。なお大阪は山内総一郎(Vo, G / フジファブリック)の故郷。フジファブリックの大阪城ホール公演は、2019年の15周年ライブ以来であった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

後藤正文(Vo, G / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

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伊地知潔(Dr / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

伊地知潔(Dr / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

定刻になると、トップバッターのアジカンがサポートメンバーのAchico(Cho / Ropes)、George(Key / MOP of HEAD)とともにステージに登場。ハイハット音に続いてオルガンが鳴り、それがフジファブリックのスローバラード「茜色の夕日」のカバーだとわかると、観客はどよめき混じりの歓声を上げる。原曲へのリスペクトが感じられる演奏に、場内には静かに興奮が渦巻いた。そんなサプライズに続き、アジカンは「君という花」「リライト」「ソラニン」という代表曲を惜しみなく披露し、イベント冒頭を大いに盛り上げる。「リライト」の最中、後藤正文(Vo, G)は「どうもありがとうございます。ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。今日は呼んでもらえて本当にうれしいです」と挨拶。「素晴らしいバンドが続いていくので皆さんどうか自分らしく楽しんでもらえたら。まあでも、この『リライト』でちょっとくらいエネルギーを使ってもいいんじゃない?」と観客を焚き付け、その後のラストサビで大合唱を巻き起こした。

抱き合う金澤ダイスケ(Key / フジファブリック)と後藤正文(Vo, G / ASIAN KUNG-FU GENERATION)。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

抱き合う金澤ダイスケ(Key / フジファブリック)と後藤正文(Vo, G / ASIAN KUNG-FU GENERATION)。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

山田貴洋(B, Vo / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

山田貴洋(B, Vo / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

喜多建介(G, Vo / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

喜多建介(G, Vo / ASIAN KUNG-FU GENERATION)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

「君の街まで」「荒野を歩け」を軽快に届けたのち、後藤はとある時期を回想。「僕らはメンバー同士の関係がカサカサしていた時期があったんですよ。ヒアルロン酸が足りていないような。そのときに潤いを与えてくれた方をお呼びします」と話し、金澤ダイスケ(Key / フジファブリック)をステージへ呼び込んだ。金澤はアジカンが2010年に行った全国ツアー「VIBRATION OF THE MUSIC」にサポートキーボードとして同行しており、当時のサウンドのプリセットを自身の機材に登録したままにしているという。そんな彼を交えて奏でられたのは「迷子犬と雨のビート」。華やかなシンセが高らかに鳴り響き、楽曲の持つ幸福感を加速させる。ステージの面々はときに視線を合わせ、顔をほころばせながら、ひさびさのライブ共演を楽しんだ。そして金澤をハグやハイタッチで送り出したアジカンは、最後に生命力みなぎる「今を生きて」を演奏。「永遠を このフィーリングをずっと忘れないでいよう」と力強いメッセージを贈り、自分たちのステージを終えた。

くるり

岸田繁(Vo, G / くるり)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

岸田繁(Vo, G / くるり)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

佐藤征史(B / くるり)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

佐藤征史(B / くるり)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

岸田繁(Vo, G)の挨拶で和やかに始まったくるりのステージ。ピンスポットを浴びた岸田が鳴らしたのはデビュー曲「東京」のギターリフだ。観客は口ずさんだり、体を揺らしたりしながら色褪せないキラーチューンを味わった。壮大なスケールの「潮風のアリア」で清々しい風を吹かせたのち、くるりはドラマチックな展開の「Morning Paper」を演奏。佐藤征史(B)のうねるようなベースラインが観客の視線を釘付けにし、岸田がステージ前方でパッションを弾けさせた。岸田はサポートメンバーの松本大樹(G)、石若駿(Dr)、野崎泰弘(Key)を紹介。「改めてフジファブリック、呼んでくれてありがとうございます。アジカンともご一緒できることを楽しみにしてました。最後まで楽しんでください」と語った。その後「ブレーメン」「Time」といったナンバーを、クラシックギターやピアノの音色を取り入れながら芳醇なサウンドで演奏し、観客を魅了したくるり。人気曲「琥珀色の街、上海蟹の朝」では妖しいライトに照らされた岸田がゆるやかなステップを踏み、続く代表曲「ばらの花」ではホールに高揚感が充満した。

指と指を合わせる山内総一郎(Vo, G / フジファブリック)と岸田繁(Vo, G / くるり)。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

指と指を合わせる山内総一郎(Vo, G / フジファブリック)と岸田繁(Vo, G / くるり)。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

くるり「ロックンロール」パフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

くるり「ロックンロール」パフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

活動休止するフジファブリックへ「皆さんそれぞれの活躍をご期待して、これからもお付き合いしていきたいと思っています」とメッセージを送った岸田。2009年にこの世を去ったボーカルギターの志村正彦を含め、フジファブリックを“盟友”と語った彼は、かつてくるりのライブにサポートで参加していた山内をステージに迎えた。そして岸田が「『リライト』以上の盛り上がりを」と宣言し、くるりが山内を交えて演奏したのは人気ナンバーの1つ「ロックンロール」。山内と岸田は声を合わせて美しいハーモニーを響かせ、アウトロではギターフレーズをぶつけ合う熱いセッションで大歓声を浴びた。そしてくるりは最後に異国情緒あふれる最新曲「La Palummella」を奏で、フジファブリックへとバトンを渡した。

フジファブリック

山内総一郎(Vo, G / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

山内総一郎(Vo, G / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

いよいよ登場したフジファブリックは最新アルバムよりタイトル曲「Portrait」でライブを開始。バンドに対する思いをつづった歌詞と、伊藤大地(Dr)、森瑞希(Perc)のサポートメンバーを交えたスケール感のあるサウンドがホールいっぱいに響き渡る。「破顏」の衝動的な演奏で観客を圧倒したのち、「LIFE」では山内が「『ノンフィクション』へようこそ!」と朗らかに挨拶。笑顔あふれるパフォーマンスで陽気な雰囲気に拍車をかけた。「我々、デビュー20周年を迎えました!」という山内の言葉に、観客から長く大きな拍手が送られる。「魂のライブを見せてくださったASIAN KUNG-FU GENERATIONの皆さんと、くるりの皆さん、そして会場の皆さんと一緒にフジファブリックの20周年を祝えると思うと、本当に本当に幸せでたまりません」と彼は気持ちをあふれさせ、何度も感謝の言葉を口にした。

金澤ダイスケ(Key / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

金澤ダイスケ(Key / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

続いてアジカンの楽曲「ループ&ループ」のカバーが披露され、客席に喜びと驚きが広がる。この選曲をしたという金澤は「バンドが止まっているときにゴッチが誘ってくれて、70公演のツアーを一緒に回って。当時かなりの曲数を演奏したんですけど、その中でも楽しかった思い出が最も残っている曲です」と思いを語った。「今こうしてステージに立てているのは、2組のおかげと言っても過言ではない」と改めてゲストへの敬意を表した山内は、次に演奏する楽曲の選曲理由について「『出会ったことが全て』というメッセージが強烈に残っている」と説明。そしてくるりの楽曲「魔法のじゅうたん」のカバーによって、ホールがハートウォーミングな空気に包まれた。演奏後、加藤慎一(B)は「20年前、僕らがデビューした頃、ゲストの2組は……言い方がアレですけど、売れていた。そしてかけがえのない存在になり、こうやってライブができていること、本当に素晴らしいと思います」と胸の内を語った。

加藤慎一(B / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

加藤慎一(B / フジファブリック)(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

その後「ショウ・タイム」でライブ後半の狼煙を上げると、「銀河」「ミラクルレボリューション No.9」と場内の一体感を高める楽曲を畳みかけたフジファブリック。お祭りナンバー「Feverman」では「大阪! 最高だぜー!」「もっとひとつになろうぜ!」と山内が煽り、観客をヒートアップさせた。いよいよライブ最終盤という場面で、山内はちょうど20年前、2004年11月10日にデビューアルバム「フジファブリック」をリリースしたことに触れ、「昨日1人で20年の歩みを考えていた」と話す。そしてフジファブリックはラストナンバーとして、山内が大阪を思って作ったという「手紙」を演奏。感動的なムードの中でステージをあとにした。

特別な「若者のすべて」

フジファブリック「若者のすべて」コラボパフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

フジファブリック「若者のすべて」コラボパフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

フジファブリック「若者のすべて」コラボパフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

フジファブリック「若者のすべて」コラボパフォーマンスの様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

アンコールではフジファブリックに続いて、くるりの2人と、アジカンより後藤がステージに登場。そして代表曲「若者のすべて」のコラボパフォーマンスが披露された。リレーのように歌いつなぐボーカリスト3人の、趣のある穏やかな歌声が聴く者の胸に染み渡る。この日ならではの特別なひとときがエンディングを迎えると、場内は歓声と万雷の拍手で満たされた。

「フジファブリック20th anniversary 3マンSPECIAL LIVE at OSAKA-JO HALL 2024『ノンフィクション』」の様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])

「フジファブリック20th anniversary 3マンSPECIAL LIVE at OSAKA-JO HALL 2024『ノンフィクション』」の様子。(撮影:渡邉一生[SLOT PHOTOGRAPHIC])[拡大]

山内は来たる活動休止に対する思いを話す最中、観客の大きな拍手に感極まってしまい、しばし無言で笑顔を客席に向ける。「フジファブリックはなくなりませんし、ダイちゃんも加藤さんも俺も(サポートの)大地くんも森ちゃんも、心ときめく音楽をまた作って、いろんな場所でライブをやります」「これからの歩みは不確かではありますが、相変わらず音楽やってるなと思ったら、また会いに来てください」という彼の言葉に続き、フジファブリックは近年を代表するライブチューン「SUPER!!」を演奏。疾走感あふれるリズムに未来への希望を乗せ、晴れやかな表情で20周年ライブを締めくくった。

セットリスト

「フジファブリック20th anniversary 3マンSPECIAL LIVE at OSAKA-JO HALL 2024『ノンフィクション』」2024年11月10日 大阪城ホール

ASIAN KUNG-FU GENERATION

01. 茜色の夕日(オリジナル:フジファブリック)
02. 君という花
03. リライト
04. ソラニン
05. 君の街まで
06. 荒野を歩け
07. 迷子犬と雨のビート(w / 金澤ダイスケ[フジファブリック])
08. 今を生きて

くるり

01. 東京
02. 潮風のアリア
03. Morning Paper
04. ブレーメン
05. Time
06. 琥珀色の街、上海蟹の朝
07. ばらの花
08. ロックンロール(w / 山内総一郎[フジファブリック])
09. La Palummella

フジファブリック

01. Portrait
02. 破顏
03. LIFE
04. ループ&ループ(オリジナル:ASIAN KUNG-FU GENERATION)
05. 魔法のじゅうたん(オリジナル:くるり)
06. ショウ・タイム
07. 銀河
08. ミラクルレボリューション No.9
09. Feverman
10. 手紙
<アンコール>
11. 若者のすべて(w / くるり、後藤正文[ASIAN KUNG-FU GENERATION])
12. SUPER!!

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