斉藤和義がデビュー30周年ライブで軌跡を総ざらい 最後はヨロチクビーム発射

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斉藤和義にデビュー30周年記念ツアー「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」が、9月22日に東京・東京国際フォーラム ホールAにて千秋楽を迎えた

「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」東京国際フォーラム ホールA公演の様子。(撮影:宮家和也)

「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」東京国際フォーラム ホールA公演の様子。(撮影:宮家和也)

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30年の軌跡を視覚化した幕開

1993年8月25日にシングル「僕の見たビートルズはTVの中」でデビューし、1994年に「ポンキッキーズ」のオープニングテーマとして提供した「歩いて帰ろう」でブレイクした斉藤。以降、長年にわたってヒット曲を生み出し続け、そのキャッチーなサウンドと、飄々としながらもチャーミングなキャラクターで老若男女に愛されている。そんな彼のアニバーサリーライブは、スクリーンに投影される歓楽街の映像でスタートした。その歓楽街を彩るのは、斉藤が30年にわたって世に届けてきた楽曲のタイトルをかたどったネオンサインの数々。徐々に映像は街の上方に移動していき、歴代作品のジャケットアートワークの数々がビルボードとして立ち並ぶ景色が広がっていく。最後に、ビル群を見守るように、斉藤がしばしば楽曲のモチーフとする月が夜空にぽっかりと浮かび上がった。

斉藤和義(撮影:宮家和也)

斉藤和義(撮影:宮家和也)[拡大]

斉藤和義というアーティストの歴史を視覚的に見せるオープニング映像を経て、バンドメンバーの真壁陽平(G)、山口寛雄(B)、河村吉宏(Dr)、松本ジュン(Key)がスタンバイ。景気のいいスタジアムライトが点滅する映像を背に斉藤が姿を見せ、主役の登場に満員のホールは歓喜に包まれる。そこから始まったのは、景気のいい演出にぴったりな「COME ON!」。河村が刻む力強い四つ打ちのビートに乗せて、斉藤は伸びやかな歌声を重ね、オーディエンスの体を心地よく揺らした。

「なんかお祝いしている感じなんですかね? お祭りですからね。カメラが入ってるんで必要以上に盛り上がってください」と淡々とした調子で語る斉藤だが、歌声やギターをストロークする手には気合いがにじむ。「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」「ずっと好きだった」「底無しビューティー」といった陽気なロックンロールチューンを味わいのある映像演出とともに次々と届け、ホール内の熱気をグイグイと上昇させる。

歌うたいの真髄を見せた後半戦

バンドと一丸となったステージにも定評のある斉藤だが、弾き語りで何度も全国ツアーを行うほど、ギター1本でのパフォーマンスも折り紙付き。ライブの中盤では30年以上前に使っていたというYAMAHAのアコースティックギターを抱え、「かすみ草」とデビュー曲である「僕の見たビートルズはTVの中」の2曲を滋味のある声で弾き語る。「僕の見たビートルズはTVの中」を歌う前にはデビュー前に有楽町で朝から晩まで働いていた日々を回顧。当時の湾岸戦争や、ベルリンの壁の崩壊といった世界情勢の変化にモヤモヤしていた心境が曲が誕生するきっかけであったことも明かした。

斉藤和義(撮影:宮家和也)

斉藤和義(撮影:宮家和也)[拡大]

弾き語りアーティストとしての真髄を覗かせたあとは、再びバンド編成でのパフォーマンスへ。斉藤は代表曲の「歌うたいのバラッド」で感動的な空気を紡いだかと思えば、自身の顔を合成したダンサーがキレキレに踊るコミカルな映像を背に「問題ない」を小気味よく披露して、そのギャップで観客をノックアウト。またバンドメンバーに好きなドレッシングを質問するという展開から、マヨネーズ嫌いの山口と、マヨネーズを愛してやまない河村による一触即発のトークやりとりからなだれ込んだ「ポストにマヨネーズ」を機に、豪胆なロックンローラーとしての顔をあらわに。中でも斉藤が映画「フィッシュストーリー」のために書き下ろしたパンクチューン「FISH STORY」や「Mojo Life」では、攻撃性をむき出しにした斉藤のボーカルと、息をもつかせぬタイトでスリリングなアンサンブルがホールにヒリヒリとした空気をもたらした。

「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」東京国際フォーラム ホールA公演の様子。(撮影:宮家和也)

「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」東京国際フォーラム ホールA公演の様子。(撮影:宮家和也)[拡大]

本編のラストナンバーとして斉藤が届けたのは、2012年リリースの「月光」。ブルースハープの渋みのある音色と、アコースティックギターをかき鳴らす音が耳に飛び込んでくると同時に、観客は「わあっ!」と歓声を上げる。斉藤は「愛してるよと言えなくて ひとり歌を唄う あなたとともに唄えたなら とてもうれしい」と目の前の観客1人ひとりに訴えかけるように歌い、今も昔も変わらない“歌うたい”としてのスタイルをステージに刻み付ける。その背後には、まるで斉藤のこの先の道を照らすように、巨大な満月が柔らかな光を放っていた。

“これからもヨロチクビーム”発射

斉藤和義(撮影:宮家和也)

斉藤和義(撮影:宮家和也)[拡大]

その後、アンコールが始まると、斉藤はステージの中央に用意されたキーボードの前へ。そして軽やかに鍵盤を叩きながら、約30年前にリリースしたシングル「君の顔が好きだ」を朗々と歌い上げる。ここまでですでに2時間半以上が経過していたが、斉藤の声も楽器を繰る手も微塵も衰えることなく、まだまだ観客を楽しませる余力は十分。ノスタルジーを誘う「月影」を情感たっぷりに披露したあと、斉藤は「30周年だからと振り返るつもりはなかったんだけど」とうそぶきながらも、「これからもまだまだやっていくつもりなので。30年経って、こんなに(ライブに)来てくれてうれしいです」とはにかみ、「歩いて帰ろう」を観客とともに楽しげに歌った。

味わいのある歌声とバンドメンバーとのがっぷり四つの骨太なアンサンブル、曲の世界観に合わせた映像と照明演出というてらいのないステージで3時間のライブを駆け抜けた斉藤。最後はTシャツをたくしあげ、乳首を指先で指しながら“これからもヨロチクビーム”をオーディエンスに放つという、実に斉藤らしい、ほんのりエッチでチャーミングな仕草でライブに幕を下ろした。

なおこの日のライブの模様は、11月26日20:00からWOWOWライブで放送、WOWOWオンデマンドで配信される。

セットリスト

「KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」2023年9月22日 東京国際フォーラム ホールA

01. COME ON!
02. ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー
03. Baby I Love You
04. ずっと好きだった
05. 傷口
06. 底無しビューティー
07. やぁ無情
08. かすみ草
09. 僕の見たビートルズはTVの中
10. 例えば君のこと
11. オートリバース
12. 歌うたいのバラッド
13. 問題ない
14. ポストにマヨネーズ
15. 幸福な朝食 退屈な夕食
16. Are you ready?
17. FISH STORY
18. Mojo Life
19. カーラジオ
20. ベリーベリーストロング
21. 明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ
22. 月光
<アンコール>
23. 君の顔が好きだ
24. 月影
25. 歩いて帰ろう

放送情報

WOWOWライブ / WOWOWオンデマンド「斉藤和義 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 ~これからもヨロチクビーム~」

2023年11月26日(日)20:00~

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読者の反応

yasuko omiya @LuckYasuko

攻撃性をむき出しにしたボーカルと、飄々とした語り口。3時間のステージに「斉藤和義」がぎゅっと詰まっていたのでした。ツアー終わって完璧なロス状態だったから、何回も読み返してしまった。
#斉藤和義 https://t.co/gKAxbUrkeS

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