STUTSが成し遂げた初の武道館単独公演、その人柄と才能に多くの仲間たちが集結

16

966

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 111 818
  • 37 シェア

STUTSが自身の誕生日である6月23日に初の東京・日本武道館公演「STUTS “90 Degrees” LIVE at 日本武道館」を開催した。

武道館のステージに立つSTUTS。(撮影:renzo)

武道館のステージに立つSTUTS。(撮影:renzo)

大きなサイズで見る(全70件)

スクリーンに映し出された映像。(撮影:Teppei Kishida)

スクリーンに映し出された映像。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

自身の作品制作やライブ活動に加えて、さまざまなアーティストのプロデュースやテレビ、CMへの楽曲提供により活躍の場を広げてきたSTUTS。これまで数多くのヒップホップアーティストが武道館のステージに立ってきたが、ラッパーではなくトラックメイカー / MPCプレイヤーという肩書きのアーティストが武道館で単独公演を行うのは極めて異例だ。チケットはすぐに完売となり、追加販売された注釈付きチケットまでもがソールドアウトに。当日、武道館に集まった幅広いファン層は、STUTSがヒップホップシーンの枠を超え、多彩なフィールドで活躍してきたことを示していた。

ライブはそんな彼のこれまでの姿を切り取った映像とともに始まり、映像が終わるとピンスポットの中にSTUTSが登場。会場を埋め尽くす観客の視線と歓声を一身に受けながら、MPCをパワフルに叩き、太いビートで武道館を揺らす。そこからライブ定番曲「Renaissance Beat」が始まると、バンドメンバーの岩見継吾(B)、仰木亮彦(G / 在日ファンク)、TAIHEI(Key / Suchmos)、高橋佑成(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax, Flute)、佐瀬悠輔(Tp)も合流。豊かな音色で場内を満たした。

tofubeats(撮影:Teppei Kishida)

tofubeats(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

Daichi Yamamotoと鎮座DOPENESS。(撮影:Teppei Kishida)

Daichi Yamamotoと鎮座DOPENESS。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

STUTSのキャリアの集大成となる本公演には、バンドメンバーに加えて、これまで彼と一緒に楽曲を作ってきた仲間たちが集結した。一番手として登場したtofubeatsは「One」でSTUTSと勢いあふれる掛け合いを繰り広げ、「Mirrors」では照明とスモークが妖しいムードを作り出す中、Daichi Yamamotoと鎮座DOPENESSがスキルフルにラップ。STUTSがDaichi Yamamotoと初めて作った曲「Breeze」もバンドセットで演奏され、涼しげな空気が生まれると、C.O.S.A.とYo-Seaを迎えた「Pretenders」、SIKK-Oと鈴木真海子(chelmico)がゆったりラップする「Summer Situation」と心地よいナンバーが立て続けに披露された。

Kaneee(撮影:cherry chill will.)

Kaneee(撮影:cherry chill will.)[拡大]

「Horizon」で北里彰久が伸びやかな歌声を響かせたあと、STUTSが迎え入れたのはオーディション番組「ラップスタア誕生 2023」にラップ歴半年あまりでエントリーし、視聴者から大きな支持を集めた若手ラッパーのKaneee。ヒップホップフェス「POP YOURS」でもSTUTSのステージに登場した彼は、武道館の舞台でも伸び伸びとパフォーマンスを繰り広げ、確かな才能を示した。STUTSがより幅広い層に知られるきっかけとなったドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌「Presence」では、BAD HOPT-Pablowが登場。複数のバージョンが存在する「Presence」だが、彼を迎えた「Presence V」は今回が初披露となった。

STUTSとKO-ney。(撮影:cherry chill will.)

STUTSとKO-ney。(撮影:cherry chill will.)[拡大]

抱き合うKMCとSTUTS。(撮影:cherry chill will.)

抱き合うKMCとSTUTS。(撮影:cherry chill will.)[拡大]

トラックメイカーであり、MPCプレイヤーでもあるSTUTS。ライブの中盤にはMPCプレイヤーとしてのスキルを存分に見せるコーナーも設けられた。彼を世に知らしめたアメリカ・ニューヨークでの路上ライブの映像が流れたあと、STUTSは高校1年生のときに買ったというMPC1000を使ってライブ。MPCが壊れるほどの激しいパフォーマンスを繰り広げ、同じMPCプレイヤーであるKO-neyを迎えたセッションで会場をさらに沸かせた。その後STUTSはKO-neyと出会うきっかけを作った盟友KMCを呼び込むと「KING」「Rock The Bells」の2曲でコラボ。エネルギッシュなパフォーマンスが魅力のKMCだが、彼の助言により、体を大きく使ってMPCを叩くSTUTSの現在のスタイルが生まれたという。

左からBIM、STUTS、RYO-Z(RIP SLYME)。(撮影:cherry chill will.)

左からBIM、STUTS、RYO-Z(RIP SLYME)。(撮影:cherry chill will.)[拡大]

ライブ後半もステージにはSTUTSの仲間たちが次々に現れ、「Ride」ではアメリカ・ノースカロライナ出身の日系アメリカ人ラッパーG YAMAZAWAが仙人掌とともに登場。「Ride」は2018年に発表されたSTUTSのライブ定番曲だが、G YAMAZAWAと仙人掌がステージにそろうのはこれが初となった。鎮座DOPENESSとCampanellaが酩酊感のあるビートを乗りこなす「Sticky Step」に続いては、BIMとRYO-Z(RIP SLYME)が「マジックアワー」で軽快にラップし、BIMはSTUTSと作った新曲「ひとつのいのち」も初披露した。続けてSTUTSとBIMが「Voyage」のパフォーマンスを開始すると、6年ぶりのアルバム「MAKTUB」で話題を集めるJJJが登場。彼のアルバムからSTUTSプロデュース曲「心」も披露され、客演を務めるOMSBが力強い歌声とラップを響かせた。

Awichを迎えたパフォーマンスの様子。(撮影:Teppei Kishida)

Awichを迎えたパフォーマンスの様子。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

銀テープが舞う日本武道館。(撮影:Teppei Kishida)

銀テープが舞う日本武道館。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

STUTSとJJJによる「Changes」がバンドセットで演奏され、クライマックスのムードが高まる中、シークレットゲストとして呼び込まれ、大きなどよめきを起こしたのはAwich。STUTSの3rdアルバム「Orbit」に参加している彼女だが、今回は武道館のステージにふさわしい楽曲として、リリースされていないメロウな新曲を歌い上げた。そしてDaichi Yamamoto、Campanella、Ryugo Ishida、北里彰久、SANTAWORLDVIEW、NENE、仙人掌、鎮座DOPENESSの8人が次々に現れ、爆発的な盛り上がりを生み出した「Expressions」、PUNPEEとコラボした代表曲「夜を使いはたして」でライブ本編は終了。ミュージックビデオに登場する未来の姿を再現して登場したPUNPEEが「夜を使いはたそう 銀テープが武道館を埋め尽くすその前に」と歌うと、ステージから銀テープが勢いよく放たれた。

STUTS(撮影:renzo)

STUTS(撮影:renzo)[拡大]

ここでSTUTSは、彼を武道館に導いた客演陣やバンドメンバーに改めて感謝。ライブ中盤のMPC1000を駆使したパフォーマンスに触れつつ、「昔の自分も大事にしながら前向いて行けたらいいなっていうことで、こういうセットリストになりました」とライブに込めた思いを説明し、温かい拍手に包まれる。すると、どこからか「STUTSさん、後ろ!」という声が。STUTSが振り返るとスクリーンに映し出されていたのは「大豆田とわ子と三人の元夫」の主題歌「Presence」で彼とコラボした松たか子だ。別仕事のため出演が叶わなかった彼女は「Presence」について「不安でいっぱいだったんですが、STUTSさんの人柄、才能に集まった人たちとともに我々出演者もそこに混ぜてもらって、とても幸せなお仕事ができたと思っております」と振り返り、「ハッピーバースデートゥーユー」と歌ってSTUTSの誕生日を祝った。

Mirage Collectiveのパフォーマンスの様子。(撮影:Teppei Kishida)

Mirage Collectiveのパフォーマンスの様子。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

さらにアンコールでは、STUTSがプロデュースする音楽集団Mirage Collectiveが登場し、ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」の主題歌「Mirage」をライブ初パフォーマンス。ボーカルを務めるYONCE(Suchmos)とbutajiがハマ・オカモト(B / OKAMOTO'S)や荒田洸(Dr / WONK)らバンドメンバーの演奏に乗せて艶やかな歌声を響かせ、butajiはその後に披露された「Presence」のリミックスバージョンでも松に代わってフックを歌い上げた。

セッションの様子。(撮影:Teppei Kishida)

セッションの様子。(撮影:Teppei Kishida)[拡大]

これ以上ない豪華出演者が集まった本公演のハイライトとなったのが、C.O.S.A.、JJJ、Campanella、PUNPEE、Ryugo Ishida、NENE、BIM、KMC、OMSB、SANTAWORLDVIEW、G YAMAZAWA、STUTS、仙人掌、Kaneee、T-Pablow、tofubeats、鎮座DOPENESSがマイクをつないだフリースタイルセッションだ。この日限りのマイクリレーに観客は熱狂し、STUTSは「まだまだ満場一致でヒップホップが大好き」とスピットした。最後にSTUTSは自身がラップする「Seasons Pass」を披露し、大きな拍手に包まれながら退場。この日のために制作されたビートが流れ、会場に幸福な余韻が残る中、スクリーンにはこのライブを作り上げた彼と仲間たちの名前が映し出された。

ステージを去るSTUTS。(撮影:renzo)

ステージを去るSTUTS。(撮影:renzo)[拡大]

なおSTUTSは11月に東名阪ツアー「“90 Degrees” TOUR 2023」を開催。このツアーにはバンドメンバーに加えて、JJJ、C.O.S.A.、Kaneee、Daichi Yamamoto、KID FRESINO、BIMといったゲストが参加する。イープラスではチケットの先行予約を受付中。

この記事の画像(全70件)

「STUTS “90 Degrees” LIVE at 日本武道館」2023年6月23日 日本武道館 セットリスト

01. Budokan Intro
02. Renaissance Beat
03. One w/ tofubeats
04. Mirrors w/ Daichi Yamamoto & 鎮座DOPENESS
05. Breeze w/ Daichi Yamamoto
06. Pretenders w/ C.O.S.A & Yo-Sea
07. Summer Situation w/ SIKK-O & 鈴木真海子
08. Conflicted
09. Horizon w/ 北里彰久
10. Canvas w/ Kaneee
11. Presence V w/ T-Pablow
12. MPC Routine Saturday
13. MPC Session w/ KO-ney
14. KING w/ KMC
15. Rock the Bells w/ KMC
16. Ride w/ G YAMAZAWA & 仙人掌
17. Never Been
18. Sticky Step w/ Campanella & 鎮座DOPENESS
19. マジックアワー w/ BIM & RYO-Z
20. ひとつのいのち w/ BIM
21. Voyage w/ JJJ & BIM
22. 心 w/ JJJ & OMSB
23. Changes w/ JJJ
24. 新曲 w/ Awich
25. Expressions w/ 8 MCs
26. 夜を使いはたして w/PUNPEE
<アンコール>
27. Mirage - Mirage Collective -
28. Presence Remix w/ BIM, Daichi Yamamoto, T-Pablow, NENE, butaji
29. Session
30. Seasons Pass

全文を表示

読者の反応

KO-ney(コーニー) @KO_ney1986

俺の顔よ https://t.co/w7g1AO20UP

コメントを読む(16件)

リンク

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 STUTS / 在日ファンク / Suchmos / tofubeats / Daichi Yamamoto / C.O.S.A. / chelmico / 北里彰久 / Kaneee / BAD HOP の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。