凛として時雨は狂気的な側面がありつつも繊細かつ芸術的な楽曲を多数生み出し、多様なイメージが共存するスリーピースバンド。本書はその楽曲を手がけるフロントマンのTKが“不完全の哲学”を書き表したものだ。「永遠に曲が作れないと思っている状況こそが完成」「完璧主義であるからこそ、満足することはない」「制作における根本は、“見たことない”“触れたことがない”ものを探す」「自分の首を絞めていったときに、呼吸の感覚を思い出す」とつづるように、彼は20年以上のキャリアを重ね、40歳になった今も悩みもがき、苦しみ続けている。作品作りは毎回自分を底の底まで掘り下げ、その先にあるものをつかみ取ってはまた何もない状態に戻る作業の繰り返しであるという。本著では家族や生い立ち、バンド結成からソロ活動に至るまで、ミステリアスな部分の多いTKの人物像が、解き明かされる。
なお書籍の出版を前に、著者コメントのほか、
TK(凛として時雨)コメント
「本を書いてみませんか?」
数多くのミュージシャンがいる中で、なぜか僕にKADOKAWAの編集者から連絡が来た。
“ライターが取材を重ね、それを元に原稿の土台を作る”。著者執筆以外にそんな書き方があるのにも驚いたが、僕は過去に一度だけ本を書こうと思い、書き溜めていたことを思い出した。自分の中にあるものはすべてが普通に見えてしまうので、人に伝えられるものは音楽以外に無いと放置したままだった。だからこそ、そこに第三者が介入してくれることによって、より自分を俯瞰して見られるのではないか。同時に、僕が発する言葉だけを別の人が操ったとして、それが自分の本になるのだろうかと、どこかで半信半疑だった。僕は位一度身を委ねてみることにした。
「僕は騙されたのかもしれない」
上がってきた初稿は、綺麗に美しく僕の輪郭を模った、甘い幻想を打ち砕くには十分のものだった。インタビュー記事ですら自分の言葉がどう伝わるかを気にする僕が、その手法で本を作ることなんて到底出来なかったのだ。ただ、取材を受けて、ライターが抽出した言葉を読む中で感じた、自分には当たり前で見えないものが引き出されていく面白味。僕はその抽出された部分をベースに、すべての章を自ら書き下ろしていくことにした。書き終えるまでは長い月日を要したが、ライター、編集者の方と推敲しながら、見えなかった自分が浮き彫りになってくる様はとても刺激的で、いつか書きかけのままだった自分の続きを見つけることが出来た気がした。途中で全てをひっくり返しても表現を突き詰める様は、まさに自分の音楽人生そのもの。笑ってしまうが、本においても同じだったのだ。
TK著「ゆれる」目次
第1章 衝動を越えて -Active-
第2章 流れのままに -Passive-
第3章 透き通った混沌 -Chaos-
第4章 撃ちこまれた種 -Seed-
各界著名人 コメント
遠野遥(小説家)
違和感を検知する
高感度センサーと執拗な試行。魅力の源を垣間見た。
岩井勇気(ハライチ)
ずっと一人。
だがこの本を出したという事は
理解を求めているのかもしれない……!
まふまふ
天才はその力すら
才能だと気づかないのだなと。
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凛として時雨TK初の書き下ろしエッセイ「ゆれる」刊行決定、まふまふ推薦コメントも https://t.co/V3pYKaDz5C