ゲスの極み乙女を「解体」、怒涛の20曲連続披露で見せつけた技巧派バンドの10年

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ゲスの極み乙女が6月18日に結成10周年を記念したワンマンライブ「解体」を千葉・幕張イベントホールにて開催した。

“。”を取る川谷絵音(左下)。

“。”を取る川谷絵音(左下)。

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ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」の様子。

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2012年5月に川谷絵音(Vo, G)を中心に結成されたゲスの極み乙女。。2014年4月には川谷がフロントマンを務めるindigo la Endと同時にワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル・unBORDEよりメジャーデビューを果たした。結成10周年を記念して今年5月には初のベストアルバム「丸」をリリース。「丸」は10年の歴史の中から選び抜かれた25曲がマッシュアップとメガミックスの手法で「Best track」という名の約35分のトラックにまとめられた、前代未聞の“1曲入り”ベストアルバムということでも大きな話題を集めた。そんなベストアルバムのリリースを経て行われた結成10周年ライブ「解体」のために4人が用意したのは20曲をノンストップで披露するというセットリスト。スキルフルな演奏で知られる彼らは、これまで磨き上げてきた演奏力を発揮したステージで、結成10年の貫禄とバンドの今を強く印象付けた。

ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」の様子。

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ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」の様子。

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ステージにはおもちゃのようなカラフルなブロックが積み上げられ、左上にはクレーンゲームのアームのようなセットが配置され、両サイドのLEDモニタには謎のカウントダウンタイマーが。観客は、これから何が始まるのか予想もできないセットを前に彼らを待つ。開演時間になると、これまで彼らが発表してきたミュージックビデオが巻き戻っていく様が映し出され、最初期のMVまでたどり着くと、4人は2013年にリリースした1stミニアルバム「ドレスの脱ぎ方」の1曲目「ぶらっくパレード」でライブをスタートさせた。メモリアルライブらしい始まりに観客はさっそく手を挙げクラップで彼らを歓迎。「キラーボールで踊りませんか?」という川谷の呼びかけから「キラーボール」が始まると、バンドのエネルギッシュでカオティックな演奏にオーディエンスのテンションはさらに上昇していった。

ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」の様子。

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さらに川谷は「スレッドダンスでも踊りませんか?」と「スレッドダンス」を投下。休日課長(B)はドライブ感のあるベースラインを奏で、ほな・いこか(Dr)は高速ビートを繰り出す。開放感のあるサビのメロディが、カラフルに照らし出された会場を満たしたあとは、「ユレルカレル」へとシームレスに移行。この曲の聴きどころの1つである川谷といこかによるボーカルの掛け合いも美しく響き、会場からは大きな拍手が沸き上がった。

ほな・いこか(Dr)

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怒涛の勢いでキラーチューンが連投され、ここで一度ブレイクタイムかと思いきや、バンドの演奏は止まらない。冒頭から全力で盛り上がり、少し疲れを見せる観客を挑発するかのようにいこかは笑顔でリズムを刻み、川谷も「幕張盛り上がってますか? さらに盛り上がるために休日課長の今年一番のベースを聴きたくないですか?」とフロアに呼びかける。休日課長のダイナミックなベースソロが終わると、今度は小柄なちゃんMARI(Key)が全身を使って流麗でアグレッシブなピアノソロを奏でる。さらに川谷は「『六本木クラス』っていうドラマに出るらしいんですよ」と女優・さとうほなみとして、韓国ドラマ「梨泰院クラス」のリメイク版「六本木クラス」に出演するいこかを紹介し、ドラムソロへと導く。いこかは豪快なドラミングを披露したあと、「『六本木クラス』7月7日から放送です」とちゃっかり宣伝し、会場を笑わせた。3人の演奏に川谷の軽快なカッティングギターが加わり「パラレルスペック」のパフォーマンスがスタート。曲の最後では川谷の鳴らす歪んだギターサウンドを筆頭に、点滅する照明の中で4人がそれぞれの音をぶつけ合うように熱演した。

撤去されていくブロック。

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ゲスの極み乙女。のライブにはえつこ(katyusha、DADARAY)、ささみおのコーラスも欠かせない。彼女たちの「みんなノーマル」という力強いコーラスから「ノーマルアタマ」が始まると、オールブラックの衣装のダンサーがステージに現れ、MVでメンバーも踊っているダンスでパフォーマンスを華やかに盛り上げた。「猟奇的なキスを私にして」「ラスカ」「crying march」と2014年に発表したメジャー1stフルアルバム「魅力がすごいよ」の楽曲を披露したあと、ゲスの極み乙女。は超絶技巧なインタールードからコカ・コーラのCMソングとして注目され、「NHK紅白歌合戦」出場時にもパフォーマンスした代表曲「私以外私じゃないの」をプレイ。MVが能楽堂で撮影されたことから和のイメージがあるこの楽曲では、和装のダンサーが登場し、その後ろで作業員たちがブロックを次々と撤去していった。

センターステージに向かって走るほな・いこか、川谷絵音。

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スリリングな雰囲気のインタールードからゲスの極み乙女。は「ロマンスがありあまる」を披露。曲が終わると同時にブロックはすべて撤去され、その後ろに隠されていた「ゲスの極み乙女。」のロゴがあらわになった。控えめな照明の中で届けられた「オトナチック」では、川谷のギターがうねりをあげ、ほかの3人も巧みな演奏で観客を圧倒。ストイックな演奏に拍車をかけるように「サイデンティティ」をスピーディにプレイしたあとは、川谷といこかがセンタースタージで「シアワセ林檎」を歌い、いこかに代わってindigo la Endの佐藤栄太郎(Dr)がドラムを叩いた。

川谷絵音(Vo, G)

川谷絵音(Vo, G)[拡大]

「オンナは変わる」「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」でゲスの極み乙女。のディープな世界観に観客を引き込んだあと、バンドは川谷といこかがスタンドマイクで歌う「秘めない私」をパフォーマンス。役者としても活躍するいこかの表情豊かなボーカルが光った。「人生の針」では男女のペアダンサーが楽曲の世界観を表現。新曲「青い裸」では、真っ青なライティングの中で、バンドがドラマチックな演奏を繰り広げた。カウントダウンタイマーが残り5分を切る中で、これまでのゲスの極み乙女。の活動の中で撮影されたオフショットが次々とLEDモニタに映し出される。場内がざわつく中で4人は、川谷のアコースティックギターのストロークから1stフルアルバム「魅力がすごいよ」のラストを飾るナンバー「bye-bye 999」を披露。会場はエモーショナルな空気に包まれた。

ゲスの極み乙女。“解体”の様子。

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曲が終わり、カウントダウンタイマーが0になると、川谷は「ゲスの極み乙女。は解体しまーす!」と明るく宣言。いこかが「ちょっと待って」と観客の気持ちを代弁する中で川谷は「だってステージも解体されていったでしょ?」と謎のコントローラーを操って開演前からステージに上部にあったクレーンを移動させる。ちゃんMARIと休日課長のサポートを受けながら川谷が持ち上げたのはゲスの極み乙女。ロゴの“。”。「というわけで解体が終わったと……名前が変わって“。”が取れます。終わりが来るという意味がある“。”を取って、これからも続けていくよという。残り時間が減っていく中で20曲MCなしでやって、俺らのストイックモードがいつ終わるんだと思ったでしょ? 途中からみんな(顔が)死にそうだったよ。『私以外』の前のつなぎとか、俺はもう気が狂いそうだった」と川谷は笑い、「最後の『999』をやるときに昔の映像が流れていたでしょ? あれを本編中にずっと流そうと思ったんですけど、それだとさすがに解散するみたいだったので時間だけ出すようにしました」と演出の意図を説明した。

休日課長(B)

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ちゃんMARI(Key)

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休日課長が「なぜか『999』やってるときうるっと来て解散しちゃうんじゃないかと思った」と言うと、川谷は「だから重たくならないように『解体しまーす!』って言ったのに(笑)。お客さんもよくわからないテンションになっちゃってる」と弁明し、「では、“。”が取れた“ゲスの極み乙女”で3曲連続やりたいと思います」とスタンバイ。ゲスの極み乙女。改めゲスの極み乙女として4人は初期ナンバーの「ホワイトワルツ」を披露した。続く「餅ガール」では、でか美ちゃんが登場し、メンバーと一緒にステージを盛り上げ、最後はキャノン砲で餅を撒いた。休日課長のリードで始まった「ドレスを脱げ」にはでか美ちゃんに加え、「シアワセ林檎」ではドラムを叩いていた佐藤もギターで参加。休日課長と観客は「ドレスを」「脱げ」のコール&レスポンスを掛け声と手拍子で行い、川谷は佐藤と向き合ってギターをかき鳴らして盛り上がり、本編を終えた。

ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」の様子。

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ゲスの極み乙女

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アンコールでゲスの極み乙女は新曲「スローに踊るだけ」をパフォーマンス。歌い終えた川谷は「10年やっているので、短いようで長いし、長いようで短い」と10周年を迎えた思いを語り出す。「35分で1曲のベストアルバムを出すようなことができるのは、このバンドだけだと思っているし、10年やってきたことが間違いじゃなかったなと思えたんです。ファンのみんなが10周年をいろんな思いで受け止めてくれてたなって。バンドを続けるのはすごく大変なこと。僕は何個もやっているけど、赤の他人が集まって作った音楽が一生残っていく。それによって縛られることもあるけれど、音楽を背負ってやっていかなければならない。10年を思い返せば大変なことばかりだったけれど、10周年ライブをやってお客さんが喜んでいる姿を見たり、でか美ちゃんや栄太郎が楽しんでいるのを見てやってきてよかったなと思いました。たくさんの人がアリーナに来てくれて、まだ続けていこうと思えたし、“。”を取ったのもこれから続いていくという意思表示。これからもいろんな音楽を作りながらライブをやっていくので、また15周年、20周年の節目にこういうライブができたらと思います」と万感の表情で述べた。そしてゲスの極み乙女は、メンバー全員が大好きで大切な楽曲だという「もう切ないとは言わせない」を最後に披露。「もうほとんどこの歌詞に言いたいことは書いてある。メンバーにもファンにも宛てて書いた曲だからこの曲で10周年を終わりたい」という川谷の言葉を添えて渾身の演奏でライブを締めくくり、晴れやかな表情でステージを降りた。

この日ゲスの極み乙女は11月13日よりワンマンツアー「文化再考」を開催することを発表。川谷主催の舞台「独特な人」が9月2~4日に東京・大手町三井ホールで行われることもアナウンスした。

ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」2022年6月18日 幕張イベントホール セットリスト

01. ぶらっくパレード
02. キラーボール
03. スレッドダンス
04. ユレルカレル
05. パラレルスペック
06. ノーマルアタマ
07. 猟奇的なキスを私にして
08. ラスカ
09. crying march
10. 私以外私じゃないの
11. ロマンスがありあまる
12. オトナチック
13. サイデンティティ
14. シアワセ林檎
15. オンナは変わる
16. はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
17. 秘めない私
18. 人生の針
19. 青い裸
20. bye-bye 999
21. ホワイトワルツ
22. 餅ガール
23. ドレスを脱げ
<アンコール>
24. スローに踊るだけ(新曲)
25. もう切ないとは言わせない

ゲスの極み乙女 ワンマンツアー 2022「文化再考」

2022年11月13日(日)北海道 カナモトホール
2022年11月18日(金)群馬県 高崎芸術劇場
2022年11月22日(火)福岡県 福岡市民会館
2022年11月23日(水・祝)大阪府 グランキューブ大阪
2022年11月26日(土)宮城県 仙台GIGS
2022年12月3日(土)東京都 国際フォーラム ホールA
2022年12月10日(土)岡山県 岡山市民文化ホール
2022年12月18日(日)愛知県 名古屋市公会堂

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撮影:鳥居洋介 / 横山マサト

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