ここが旅と歴史のはじまり、THE SPELLBOUNDの最初で最後のコーストワンマン

BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之とTHE NOVEMBERSの小林祐介によるバンド、THE SPELLBOUNDのワンマンライブ「A DEDICATED CHAPTER TO STUDIO COAST AND YOU」が12月18日に東京・USEN STUDIO COASTで開催された。

今年は5曲の配信シングルをリリースしたあと、7月に東京・LIQUIDROOMで初ライブ「THE SECOND CHAPTER」を行ったほか、8月にはロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL '21」への出演を果たしたTHE SPELLBOUND。2度目のワンマンは中野、小林ともに数多くのライブを繰り広げてきたUSEN STUDIO COASTが舞台となった。開演前にはフロアでDJ MATSUNAMIがパフォーマンスを行い、ロビーのバーカウンター付近にはこれまでに公開されたミュージックビデオを投影。クラブイベントさながらの様相で集まったオーディエンスを歓迎した。

今回のライブは過去2回の公演と同じく中野と小林に加え、サポートドラマーとして福田洋子と大井一彌（yahyel、DATS）が参加。ステージ後方には巨大な3面スクリーンが設置され、イメージ映像やワイヤーフレームのビジュアルでバンドの演奏を盛り上げた。まず最初に披露された新曲「SAYONARA」では、福田と大井の奏でるパワフルなドラミングに、小林が伸びやかな歌声を重ね合わせていく。大型会場ならではの包み込むような音像を存分に生かし、スケール感あふれるサウンドを作り出した。

グリッチを効かせた中野の打ち込みや複雑なドラムパターンが特徴的な「名前を呼んで」、小林の「わたしを みつけて」というシャウトが突き抜けるような開放感を表現した「なにもかも」を経て、THE SPELLBOUNDのデビュー曲「はじまり」では宇宙空間を彷彿とさせる映像が後方スクリーンに映し出される。その映像とリンクするように、中野が奏でるきらびやかなシンセの音色、小林が弾くメロディアスなギターフレーズが絶妙に絡み合い、心地よいトリップ感が生み出された。

後半に入ると、THE SPELLBOUNDは定期的に実施しているインスタライブでも公開された「Music」をはじめ、新曲を立て続けにプレイ。「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」では「フジロック」出演時と同じく、カットアップされた歌詞のテキストが楽曲展開に合わせてクローズアップされるムービーを用意し、ラップのように歌われるリリックを視覚演出にも反映した。軽快なビートでオーディエンスを踊らせた「FLOWER」を挟み、「おやすみ」では美しいピアノ調の音色、穏やかな小林のボーカルによって、ライブ終盤が壮大に彩られた。

この日唯一のMCコーナーでは、中野が「コロナ禍で思うような活動ができない中、3回のライブを行うことができ、こんなにたくさんの人に迎えられて幸せです」とこの1年の活動を振り返りつつ、「小林くんがものすごいプレッシャーの中、一緒に音楽を作り、寄り添ってくれて本当に感謝しています」とコメント。BOOM BOOM SATELLITESで幾度もステージに立ってきたUSEN STUDIO COASTの閉館についても触れ、「THE SPELLBOUNDでのライブは最初で最後になってしまい寂しいですが、素敵なファンと一緒にお別れができて、とてもいい日になりました」と自身の思いを告げた。さらに「生まれたばかりのバンドなので、これから長い旅が始まって、少しずつ育てていって、いい歴史を作れたらいいなと思います」と今後の意気込みを語ったあとには、この日が小林の誕生日であることも話題に挙げる。そのサプライズとしてバースデーケーキがステージに運び込まれると、観客たちも拍手で小林の誕生日を祝福した。

そしてMCを終えると、THE SPELLBOUNDは小林のお気に入りの楽曲の1つであるというBOOM BOOM SATELLITES「MORNING AFTER」をカバー。途中で中野は、2016年に亡くなった川島道行（BOOM BOOM SATELLITES）も愛用していたフライングVのギターを手にし、ステージ前方へと移動。小林と一緒に並んで演奏を行い、オーディエンスを大いに沸かせた。

なお「A DEDICATED CHAPTER TO STUDIO COAST AND YOU」の模様は12月25日21:00からYouTubeで配信されることが決まった。さらにTHE SPELLBOUNDは2月23日に1stアルバム「THE SPELLBOUND」をリリース。2月26日には東京・Spotify O-EASTにてレコ発ライブを行う。