彼らが日本でライブを行うのは、2009年5月の東京ドーム公演以来約15カ月ぶり。開催2日前に行われた記者会見では元メンバーのTAIJIがゲスト出演することも発表され、大きな注目を集めるライブとなった。
この日会場に集まったのは約6万5000人(主催者発表)。定刻より約25分遅れの17:55、会場に流れていたSEが止むと場内からは早くも大歓声が沸き起こる。YOSHIKI、PATA、HEATH、SUGIZOが順番に姿を現し、一人ひとりが巨大ビジョンに映し出されるたびに拍手と名前を叫ぶ声が響き渡る。最後にToshIが登場し、1曲目「JADE」が始まった。
イントロではライブの幕開けを飾る号砲のごとく赤い火柱が上がり、YOSHIKIの踏む迫力あるバスドラムが地面を揺らす。久しぶりの国内でのライブとあって、ToshIは「会いたかったぜ日本! 今日は強行突破で行くぜ!」と早くもテンションを上げてファンをあおっていく。続いて「Rusty Nail」のシンセサイザーのイントロが流れると、観客は絶叫。サビではToshIの煽りに応え、オーディエンスが大合唱していた。さらにアウトロからそのままPATAとSUGIZOによるギターソロの応酬が始まる。ブルージーな雰囲気を漂わせるフレーズや得意の速弾きで観客を圧倒したPATA、アームを多用したメタルテイストのプレイを聴かせたSUGIZO、それぞれの個性が存分に楽しめるひとときとなった。
そしてToshIが1人でステージに登場し、オーディエンスに語りかける。「日本に久々に帰ってきたぜ! やっぱり日本はいいな」と国内のファンを喜ばせつつ、HEATHとPATA、SUGIZOを呼び込み「珍しいカルテットX JAPANです(笑)」と紹介してアコースティックバージョンの「SAY ANYTHING」が始まる。SUGIZOの美しいバイオリンの音色とToshIの伸びやかなボーカルにオーディエンスが聴き入ったあとは、YOSHIKIのソロパートへ。1人でピアノに向かったYOSHIKIは、祈りをささげるかのように何度も天を仰いでから、力強い音を鳴らし始めた。即興的に続いたイントロはやがて「Tears」のメロディになり、場内からはため息と歓声が沸き起こる。YOSHIKIのピアノにあわせてオーディエンスが口ずさむ声は、いつしか全員による大合唱となった。
一旦会場が静寂に包まれた後、「紅」のイントロのストリングスが流れ始める。ビジョンにはピックをくわえたHIDEの映像が映し出され、観客からは悲鳴が起こる。ToshIの「紅だぁーっ!」という絶叫と同時にアリーナ席には大量の銀テープが舞い、間奏ではPATA、HEATH、SUGIZOが前に出てきてオーディエンスをあおる。熱狂的な盛り上がりのうちに「紅」が終わると、YOSHIKIは「暑くない? ここ。こんなに暑いと思ってなかった。シャワーどころの熱さじゃないよ(笑)」と笑わせる。それに対しToshIは「YOSHIKIは長いことロスに住んでるから、身体がロス仕様になってるんだな(笑)。湿気に弱いんだね」と返していた。
「こうしてメンバー一同で日本に帰ってこられてうれしいです。また海外にも出発していくんで、みんな応援してくれよ!」とToshIが挨拶し、「次で最後の曲だぜ!」と叫ぶと会場からは「ええっ!?」という驚きの声が上がる。そんな中披露された本編最後の曲は新曲「Born To Be Free」。哀愁漂うYOSHIKIのピアノから始まり、曲調は一転してハードなギターロックに。PATAとSUGIZOのヘビーなギターと、ステージ上方から吊るされた檻に入った3人のダンサーが、楽曲の持つメッセージを伝える。彼らの新境地を見せるナンバーで、本編は熱く締めくくられた。
アンコールを待つ間、スタンド席全体を巻き込んだウェーブが起こり、場内を拍手が包む。そんな中、アリーナ後方に突如ピラミッド型のサブステージが現れ、後方のオーディエンスを中心に大きなどよめきが起こった。ピラミッドの頂上部分にはピアノが置かれ、YOSHIKIとToshIが登場。おなじみの柔らかなピアノの音色から「Forever Love」が始まり、2人のハーモニーが会場中に響き渡った。
そのあとYOSHIKIが弾き始めたのは「I.V.」のイントロ。「お前たちの声を聞かせてくれ!」というToshIのリクエストに応え、オーディエンスが合唱する中2人はサブステージを下りアリーナの通路を歩いてメインステージへ向かっていく。途中ではファンとハイタッチし、アリーナ席は軽いパニック状態に。2人がステージに着くと待ちかまえていたPATA、HEATH、SUGIZOが「I.V.」を弾き始める。ステージの屋根からは見たこともないような巨大な火柱が上がり、会場中に熱を伝える。HEATHの鳴らすベースラインとエフェクトがかかったToshIのボーカルが、スタジアムに不穏かつダークな空気を充満させた。
「ラストナンバー行くぞ! そしてここでスペシャルゲストが来てるぞ!」というToshIの紹介で、いよいよTAIJIが登場。「On Bass, TAIJI! On Bass, HEATH!」と紹介され、2人はステージでがっちりと握手。ToshIはHIDEを含む7人の名前を連呼し「7人のXで行くぜ! エーックス!」と絶叫。アンコールラストの「X」が始まった。
ToshIはTAIJIと肩を組んで歌い、HEATHもTAIJIと向かい合わせで力強いベースラインを鳴らす。まるで彼らの音とオーディエンスの激しいXジャンプが雨雲を呼んだかのように上空からは雨粒も落ち、ブレイクではHIDEの映像が「飛べ飛べ飛べ!」と観客を煽る。花火や火柱が上がる中、YOSHIKIはドラムセットごと高くリフトアップ。この日一番の盛り上がりの中でアンコールが終了した。
まだ帰ろうとしない観客に向けて始まったダブルアンコールで、ToshIは「今日は旧友もベースを弾きにきてくれた、そしてHIDEちゃんも」と空を仰ぎ「お前たちに会えて本当にうれしかったぜ、ありがとう」と挨拶。YOSHIKIは「これだけドラマがあったのにファンのみんながいてくれるバンドって、世界で1つしかないよね」と話しながら声を詰まらせた。ダブルアンコールとして披露されたのは「ENDLESS RAIN」。メンバーそれぞれが思いを込めて奏でる音、歌う声に、観客も合唱しながら思いを重ねていた。
メンバーが両手を挙げて最後の挨拶をする中、ステージ上方からは花火が打ち上げられる。「再会の夜」を飾る美しい景色とメンバーの笑顔に、オーディエンスもじっくりと見入っていた。
X JAPAN WORLD TOUR Live in YOKOHAMA
超強行突破 七転八起 ~世界に向かって~ 再会の夜
2010年8月14日 日産スタジアム セットリスト
01.JADE
02.Rusty Nail
03.SAY ANYTHING
04.Tears
05.紅
06.Born To Be Free
EN-01.Forever Love
EN-02.I.V.
EN-03.X
EN-04.ENDLESS RAIN
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Masaki Ito @niyalist
今思うと、X Japanのライブで、HEATHとTAIJIの二人のベースが見れたのも幻みたいな記憶だよなあ。
X JAPAN「再会の夜」にTAIJI含む“7人のX”集結 https://t.co/yGwndU44F8