Veats Shibuyaのオープニングイベントのラストを飾る本公演は「PREMIUM SEATED」のイベント名の通り客席が設置され、追加された立見席も含めフロアには満員の観客が集まった。開演時刻を迎え、ステージに先に姿を見せたのは手嶌。静かな笑みをたたえながら客席を見つめた彼女は、「虹」でライブの幕を開けた。
手嶌はこの日、オオニシユウスケ(G)、大坂孝之介(Key)との3人編成でパフォーマンスを披露。2曲目には大貫妙子が作曲し、自身が初めて作詞をした「ちょっとしたもの」が届けられる。この曲をきっかけに作詞の楽しさを知ったという彼女は、優しく弾むような歌声で日常にあるちょっとした幸せを歌い紡ぎ「私はコーヒーにハーゲンダッツのアイスを入れるのが好きです」と無邪気に笑った。中盤にはカバーソングのコーナーも用意され、手嶌は大好きな楽曲だという映画「リトル・マーメイド」の「Kiss The Girl」、ルイ・アームストロングも歌ったジャズナンバー「C'est si bon」を歌う。サッチモの歌声について「しわがれた声ですが、私にはとても温かく聞こえて」と敬愛の思いを口にしていた手嶌。彼女の静かでたおやかな声で彩られた名曲たちはまた新しい響きを持って聴衆のもとへ届き、オーディエンスはじっくりと3人の演奏に聴き入っていた。
大坂の演奏するピアニカの響きも印象的なバラード「想秋ノート」、ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主題歌としてオンエアされた「明日への手紙」を続け、言葉の1つひとつに思いを込めるような細やかで美しいボーカルで独自の世界観を一層深めると、MCでは手嶌が今年すでに6回も中国でライブをしていることが語られ「たくさんの方に愛を告白してもらえるのでうれしいなと思います。うれしいこと、楽しいことが増えてきたので、Instagramを始めてみました」という報告も。そして手嶌は「私もハナレグミさんのライブを楽しみにしています」と語り、最後にマリリン・モンロー「I Wanna Be Loved By You」をカバー。ピンク色の光に染め上げられたステージの上、スイートなラブソングを可憐に歌い上げてオーディエンスを魅了した彼女は、丁寧なお辞儀をしてステージを去り、ハナレグミへとバトンをつないだ。
ハナレグミ・永積崇はステージに姿を見せるなり「(Veats Shibuyaは)できたばっかりだから緊張感ありますよね」とフランクに観客に話しかける。そして「大丈夫ですよ」と続けると、そのままの自然な流れの中で1曲目の「ハンキーパンキー」を歌い届けた。この日の彼のパフォーマンスは鈴木正人(B, Key)、芳垣安洋(Dr)とのトリオ編成で披露され、続く「360°」では永積のさわやかなハミングに観客の体も自然と揺れ始める。「家族の風景」がしっとりと演奏されたのちにプレイされたマイケル・ジャクソン「Human Nature」のカバーは、手嶌がライブでマイケルの歌をカバーしていたことに影響されてセットリストに選んだという楽曲。アコースティックギターをシェイカーに持ち替えた永積は、右手でリズムを刻みながら巧みなボーカルでこの曲を歌い上げた。そして、このあとのMCで彼はVeats Shibuyaの立地について触れる。自身が学生だった頃、この周囲にはHMVやタワーレコードがあったことを懐古し「ライブハウスができるべき場所なんですよ」と語った永積。「対面して(聴き手と)ユナイトできる、そういう場をレーベルが率先して作ってくれてうれしい」と思いを語った。
懐かしい思い出と共にプレイされたのはオマー「There's Nothing Like This」のカバーで、永積はこの曲でアシッドジャズに新鮮に魅了されていた過去の自分に思いをはせた。「音タイム」が届けられるとライブも終盤。客席を2つに分けた永積はそれぞれにコーラスをレクチャーしてフロアにハーモニーを作り出し、その上に自らの歌声を重ねて大きな一体感を作り出した。ハナレグミのライブの定番曲「明日天気になれ」では「Veatsオープンおめでとう!」と歌い替え、このアレンジには観客も大盛り上がり。会場には大きなクラップの音が響き、熱気は最高潮へと達した。本編ラストにプレイされたのは「きみはぼくのともだち」。永積はこの曲に刻まれた温かく優しいメッセージをまっすぐにオーディエンスへと伝え、自身のライブを終えた。
観客がアンコールを求めるとハナレグミのトリオが登場し、永積が大好きな曲とその素晴らしさを熱っぽく語ったポール・サイモン「Still Crazy After All Years」を情感豊かなボーカルでカバーした。そして永積は最後にもう一度手嶌をステージに迎え、2人はキャロル・キング「You've Got a Friend」をデュエットする。永積は手嶌の歌声について「か弱いというイメージがあるかもしれないけれど、“声の帯”みたいなものがグワーッとやってきて、本当にすごい声」と評し、手嶌も永積の声について「私もすぐ横で聴くことができてうれしかったです」と思いを伝えた。無二の歌声を持つ2人が織りなすハーモニーは豊かな響きをたたえ、聴衆の心を震わせる。とびきりの歌声と共にVeats Shibuyaのオープニングイベントはフィナーレを迎え、永積と手嶌は大きな喝采の中でステージをあとにした。
「PREMIUM SEATED ハナレグミ&手嶌葵」2019年9月27日 Veats Shibuya セットリスト
手嶌葵
01. 虹
02. ちょっとしたもの
03. Kiss The Girl
04. C'est si bon
05. 想秋ノート
06. 明日への手紙
07. I Wanna Be Loved By You
ハナレグミ
01. ハンキーパンキー
02. 360°
03. 家族の風景
04. Human Nature
05. There's Nothing Like This
06. 音タイム
07. 明日天気になれ
08. きみはぼくのともだち
<アンコール>
09. Still Crazy After All Years
10. You've Got a Friend w/手嶌葵
関連する特集・インタビュー
リンク
- Veats SHIBUYA | ライブ&カフェ・スペース
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
Luna Otohara 音原瑠菜👩🦯 @applemango
【ライブレポート】ハナレグミ×手嶌葵がツーマン開催、Veats Shibuyaに響かせた無二のハーモニー - 音楽ナタリー #SmartNews https://t.co/hHPpSg4H9S