挫・人間、“インターネット上ではできない感動”包んだ渋谷クアトロワンマン

挫・人間が11月10日に東京・渋谷CLUB QUATTROで全国ツアー「挫・人間ツアー2017～集まれ！隅っコ！移動型 在宅バンド 猛レース～」の最終公演を開催した。

このツアーは10月発売の3rdフルアルバム「もょもと」のリリースを記念して行われたもの。最終公演の開演前、場内にはゲームソフト「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」のBGM「Love Song 探して」と共に夏目創太（G, Cho）のアナウンスが流れ始める。レベルアップ音から「テクノ番長」のイントロへとなだれ込むとステージには下川リヲ（Vo, G）、アベマコト（B, Cho）、夏目、そしてサポートドラマーの菅大智（ゴールデンシルバーズ、電化アベジュリー）が姿を見せ、前回の東京ワンマン「挫・人間チンポジウム2017～新曲キボンヌ～」では楽器を持たずにパフォーマンスした同曲をバンド演奏で届けた。夏目のカッティングギターとアベのスラップベースがフロアを魅了した「おしゃれメロス」では、サングラスを付けた下川が観客と「SEX on the beach!」と絶叫。そんなおしゃれな雰囲気をぶった切るように下川の雄叫びと重々しいバンドサウンドが響いた「人類」では夏目の煽りによってオーディエンスが拳を上げ、下川はうれしそうに「バカがいっぱいだー！」と喜んだ。

「こにゃにゃちわー！ ポンポコピー！」と下川が挨拶したあと、4人はヘビーな「人生地獄絵図」を頭を振りながらプレイ。菅のドラムソロから多彩な展開の「セルアウト禅問答」へ勢いよくつなげたのち、初期のナンバー「土曜日の俺はちょっと違う」を遊び心あるフレーズ満載で届けた。アイドルのような自己紹介から入った「☆君☆と☆メ☆タ☆モ☆る☆」でメンバーはサイリウムを天に掲げ、キュートなダンスと歌声を披露。サイリウムと楽器を持ち替えると、空気をガラッと変えて「そばにいられればいいのに」「ココ」「天使と人工衛星」「ゲームボーイズメモリー」をエモーショナルに演奏してオーディエンスを惹き付けた。

MCでツアーを振り返り「たくさん頭のおかしいヤツが来てくれて。ライブハウスがおかしな空気になるのが、だんだん僕らじゃなく皆さんのせいにもなってきた」と話した下川。しかしツアー中にメンバーと共に大浴場に入り互いの好きなところを語り合い、眠りたくないばかりにわざと遠いコンビニまで一緒に歩いたという愛のあふれるエピソードを話すと「俺らが一番頭がおかしい」と再確認していた。そしてメンバーとファンに向けて「俺たちの中の誰かはきっと昔、インターネットで会ってるんだと思うんですよ。俺はその感動をもって、インターネット上ではできない感動を歌にしたんです」と語るとラブソング「チャーハンたべたい」を歌い上げ、フロアをハッピーな空気感で満たした。客席に「AxSxE」コールが上がった「明日、俺はAxSxEになる......」、緩急のあるアンサンブルの「クズとリンゴ」を経て、バンドはラストナンバーとして「絶望シネマで臨死」を熱演。フロアに強烈な余韻を残してステージを降りた。

アンコールは歌詞カードで歌詞が割愛されている「もょもと」収録曲「Tee-Poφwy」でスタート。シャツとサングラス姿の下川、アベ、菅がバックでコーラスとダンスを担当する中、夏目は語るように同曲を延々と歌い上げる。そんな挫・人間流のポエトリーリーディングを終えると彼は観客と大いにサンバを踊り、フロアには謎の感動的なムードが広がった。「本編いい感じでロックバンドぽく終わったと思ったのに」と笑った下川はこの日最後の楽曲「下川最強伝説」へ向け、自身の叶わなかった初恋について語り始める。さらに「お前らも初恋叶ってないだろ！ 俺は知ってるワケよ」とファンに呼びかけ、「手を掲げることはスピリチュアルな行為。思いやりと思いやりのぶつかり稽古」と同曲で恒例の手を挙げる行為“除霊”について述べた。下川による長尺のMCを経ていよいよ「下川最強伝説」に入るとサビでメンバーとオーディエンスは手を掲げ、心に宿る初恋相手の亡霊を“除霊”。曲の最後に下川が演奏を止め「これは俺の特権なんだけど、今日はお前らに譲ってあげよう！」と呼びかけると、オーディエンスのみの「羽ばたきたい」のシンガロングが広がった。演奏後、メンバー4人はステージ前方で手をつないで一礼。「ありがとう！」と観客に感謝しながら笑顔でステージをはけた。