音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

中島みゆき、ATEEZ、柴田聡子、Dos Monos、吾妻光良&バッパーズ、藤井フミヤ、澤部渡×街裏ぴんく、眉村ちあき、炙りなタウン、RYUTist

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ビッグビューティーなイマジネーション

文 / 石井佑来

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

なんだか今年は、公私ともに“いいツーマンライブ”をたくさん観たような気がします。なのでその中から、特に「2024年に観れてよかった」と思えたライブ3本を選んでみました。そんな中でも一番心に残ったものを選ぶとしたら、そこは迷わず「VALETUDO QUATRO 2024」。スカート澤部渡さんと街裏ぴんくさんによるツーマンライブの第2弾です。“いいツーマンライブ”がどんなものか考えたときに、「その2組だからこそ作り得た時間」だったかどうかというのが重要になってくると思いますが、その点において「VALETUDO QUATRO」を超えるツーマンライブは、世の中にそう多くないのではないでしょうか。

「VALETUDO QUATRO」は、異ジャンルの2組だからこその趣向を凝らした見せ方をしていながらも、あくまでそれぞれのパフォーマンスを楽しめるような構成になっています。公演中にお二人も言っていたように、中身自体はそれぞれの“ベスト盤”のような内容。観客の“観たいもの”が“見たことない形”で繰り出される、このうえなくぜいたくな時間になっているのです。それは、己の身ひとつで最高の演奏と漫談を見せてくれる2人だからこそ、そしてお互いに双方向のリスペクトと信頼があるからこそ、実現し得ることのはず。もはや当たり前になりつつある“音楽×お笑い”の対バンイベントとはまったく異なる、“澤部渡×街裏ぴんく”ならではの熱が、狂気が、快楽が、確かにそこに渦巻いていました。

「VALETUDO QUATRO」では、全編通して「喫茶店で打ち合わせをしている2人の空想が具現化する」という形でパフォーマンスが繰り広げられます。(まるであの名探偵のように)“1の世界と2の世界”を行ったり来たりしながら、現実と虚構の境界を曖昧にしながら、この世に存在しないはずのものを形にしてしまう。それはポップカルチャーの在り方そのもののようでもあるし、いくつもの異物が混ざり合ったりぶつかったりしながら混沌としたままそこにある、この世界の成り立ちそのもののようでもあるかもしれない。……なんて言ったら大げさでしょうか。でも、本気でそんなことを思ってしまうほど、あの日2人のイマジネーションが作り出した世界は、あまりに大きく、そして美しかったのです。

マジで背中が燃えたと思った。爆破ってあんなに熱いんですね

文 / 橋本尚平

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

眉村さんの生誕イベントが行われた栃木県の岩船山採石場跡地は、爆破シーンの撮影地として知られている“特撮の聖地”。爆破を背にしてライブをするという、眉村さんの長年の夢を叶えるのがこの日の主旨です。数年前からニチアサを嗜んでいる身としては、爆破を体験できるまたとない機会と思い、取材に行くことを決意したのでした。この日の眉村さんは、断崖絶壁を駆け上がりながら歌ったり、採石場というロケーションを心から楽しんでいる様子。本人にとってもファンにとっても忘れられない1日になったのではないでしょうか。

ライブ終了後は、来場者全員で特大の爆破を背にしての記念撮影です。もちろん自分もワクワクしながら最後列へ。しかしカメラマンがシャッターを切った瞬間、体験したことのない熱さが背後から襲います。背中に引火したのかと本気で勘違いした僕は、慌ててその場から逃げてしまいました。爆破ってあんなに熱いんですね……。あの日から見る目が変わり、ドラマ「ウイングマン」の岩船山ロケの爆破シーンを観たときも「あんなに熱いのにすごいなあ」という気持ちになってしまいました。カッコいいポーズしてるとか無理。爆破マジヤバいです。もし機会があれば皆さんも一度体験することをオススメします。

ライブレポート

とんねるずのライブは「本編は1曲で終了、アンコール20曲以上」という“らしさ”に尽きるんですけど、音楽ナタリーのレポートに「今とんねるずがライブやるなんてアンコールみたいなもんだろって2人が考えたんだろう」とコメントしてる人を見て、目から鱗が落ちました。1曲目「情けねえ」は「とんねるずのみなさんのおかげでした」最終回のエンディングで披露された曲なので、もし「最後に2人で歌ったシーンを再現して、その後はすべてアンコール」と意図した構成だったと考えると、その説は十分ありえる。この考察、自分で気付いてレポに書きたかったなと悔しいです。

たった30分のために

文 / 田中和宏

印象に残っているライブ3本

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炙りなタウン「いい加減にしろ!ツアー」大阪編を観に行った。この日の大阪は暑かった。9月中旬にして34℃超え。炙りなタウンのライブは、真夏だろうが真冬だろうが、いつだって猛暑日のようにアツい。胸が高鳴り、汗が滴り、音楽が全身を貫くようなヒリヒリとした感覚を覚える。

あれは3年前、ガラガラのフロアで彼女たちのライブを観たことがある。そのときも彼女たちのエネルギーに圧倒された。「この人たちはたとえ客が0人だったとしても全力のライブをやってるんだな」と感じ、もう目が離せない存在になった。

大阪のライブでは、ゆきなり(Vo, G)がこんなことを言っていた。

「わしらは──女の子が涙を流して失恋ソングを歌って、それが30秒の短い動画になって数字が増えて──それが美しいとされている時代をぶっ壊しにきました」

人と人をつなげる音楽、人と人が向き合うライブを大切にしているからこそ、こういう言葉が出るんだろう。

対バンライブの持ち時間は、1組あたり30分から45分。たったそれだけの短い時間に何を求めるかは人それぞれ。思えば小学生の頃は10分だか20分の短い時間でも校庭に繰り出して遊び、チャイムが鳴ったら急いで教室に戻ったものだ。社会人になってからの10分休憩は、スマホをいじりながらタバコを吸ったら終わり。時間の密度は大人になるにつれて薄まる、というのも現実である。

そんな中、炙りなタウンのライブで過ごすたった30分は、子供の頃のような時間軸で過ごせるひとときとも言える。普段そんなことまで考えてライブを観ていないけど、忘れかけていた感情がよみがえるような感覚を覚えるということだ。

炙りなタウンのライブを観ていると、いつだってついついステージの近くに行ってしまう。2025年もその先も、このバンドがどんな景色を見せてくれるか、ワクワクしている。またツアーをやるときは、どうかチケットが取れますように。

RYUTistの13年間の“奇跡”に感謝

文 / 近藤隼人

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

RYUTistが終わってしまった──12月はそのことばかり考えながら彼女たちの楽曲を聴いていた。2011年に新潟市中央区古町で結成されたアイドルグループRYUTistは今月、メンバーの全員卒業に伴い無期限で活動を休止。9月にその決断について発表されたとき、RYUTistファンは漏れなくショックを受けただろうし、活休を惜しむ声が多く上がった。もちろん自分も同じように感じたが、13年もの間、ローカルアイドルとしてこれだけクオリティの高い楽曲とライブを届け続けてくれたことが奇跡のような話で、正直に言うとどこかすんなりと受け入れられたところもある。そして“ありがとねほんとにねSEASON”と題した卒業までの3カ月は、RYUTistの道のりにおける伏線回収と恩返しを丁寧に進めていくような期間だった。12月1日に渋谷CLUB QUATTROで「RYUTist LAST HOME LIVE ありがとね、ほんとにね。」が開催されたのち、翌週に地元・新潟でFCライブが行われ、RYUTistとしての最後のメディア出演となったのは12月15日放送のBSN新潟放送「スーパー・ササダンゴ・マシンのチェ・ジバラ」。この3カ月間、RYUTistのライブを多く取材させてもらったが、勝手ながら一緒に駆け抜けているような気持ちにもなりつつ、とても美しい幕引きだったと感じた。「LAST HOME LIVE」は純粋に過去一番素晴らしいライブで、13年間の集大成となるこのステージを文字と写真で記録するのって責任重大なヤバい仕事なのではと、気付くのが遅すぎるがライブ中に震えてしまった。あと少し泣いた。

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澤部渡 / スカート @skirt_oh_skirt

ナタリーさんが街裏ぴんくさんとのツーマンを振り返ってくれている……これはうれしい。来年もやれたらいいな〜 #ぴんくスカート https://t.co/g6Qz9KLeap

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