音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ
中島みゆき、ATEEZ、柴田聡子、Dos Monos、吾妻光良&バッパーズ、藤井フミヤ、澤部渡×街裏ぴんく、眉村ちあき、炙りなタウン、RYUTist
2024年12月30日 12:30 42
ビッグビューティーなイマジネーション
文 / 石井佑来
印象に残っているライブ3本
片想い×山二つ「片想い × 山二つ」3月27日 東京・WWW - 澤部渡(スカート)×街裏ぴんく「VALETUDO QUATRO 2024」東京公演 8月5日 東京・渋谷CLUB QUATTRO
柴田聡子× Summer Eye「ヨカノスゴシカタ 6」8月13日 東京・東京キネマ倶楽部
なんだか今年は、公私ともに“いいツーマンライブ”をたくさん観たような気がします。なのでその中から、特に「2024年に観れてよかった」と思えたライブ3本を選んでみました。そんな中でも一番心に残ったものを選ぶとしたら、そこは迷わず「VALETUDO QUATRO 2024」。
「VALETUDO QUATRO」は、異ジャンルの2組だからこその趣向を凝らした見せ方をしていながらも、あくまでそれぞれのパフォーマンスを楽しめるような構成になっています。公演中にお二人も言っていたように、中身自体はそれぞれの“ベスト盤”のような内容。観客の“観たいもの”が“見たことない形”で繰り出される、このうえなくぜいたくな時間になっているのです。それは、己の身ひとつで最高の演奏と漫談を見せてくれる2人だからこそ、そしてお互いに双方向のリスペクトと信頼があるからこそ、実現し得ることのはず。もはや当たり前になりつつある“音楽×お笑い”の対バンイベントとはまったく異なる、“澤部渡×街裏ぴんく”ならではの熱が、狂気が、快楽が、確かにそこに渦巻いていました。
「VALETUDO QUATRO」では、全編通して「喫茶店で打ち合わせをしている2人の空想が具現化する」という形でパフォーマンスが繰り広げられます。(まるであの名探偵のように)“1の世界と2の世界”を行ったり来たりしながら、現実と虚構の境界を曖昧にしながら、この世に存在しないはずのものを形にしてしまう。それはポップカルチャーの在り方そのもののようでもあるし、いくつもの異物が混ざり合ったりぶつかったりしながら混沌としたままそこにある、この世界の成り立ちそのもののようでもあるかもしれない。……なんて言ったら大げさでしょうか。でも、本気でそんなことを思ってしまうほど、あの日2人のイマジネーションが作り出した世界は、あまりに大きく、そして美しかったのです。
マジで背中が燃えたと思った。爆破ってあんなに熱いんですね
文 / 橋本尚平
印象に残っているライブ3本
- 「眉村ちあき 爆パお誕生日会! ~遂に夢を叶えます!私が花火だ!~」9月15日 栃木・岩船山採石場跡地
- 「ZAZEN BOYS MATSURI SESSION」10月27日 東京・日本武道館
- 「とんねるず THE LIVE」11月8、9日 東京・日本武道館
眉村さんの生誕イベントが行われた栃木県の岩船山採石場跡地は、爆破シーンの撮影地として知られている“特撮の聖地”。爆破を背にしてライブをするという、眉村さんの長年の夢を叶えるのがこの日の主旨です。数年前からニチアサを嗜んでいる身としては、爆破を体験できるまたとない機会と思い、取材に行くことを決意したのでした。この日の眉村さんは、断崖絶壁を駆け上がりながら歌ったり、採石場というロケーションを心から楽しんでいる様子。本人にとってもファンにとっても忘れられない1日になったのではないでしょうか。
ライブ終了後は、来場者全員で特大の爆破を背にしての記念撮影です。もちろん自分もワクワクしながら最後列へ。しかしカメラマンがシャッターを切った瞬間、体験したことのない熱さが背後から襲います。背中に引火したのかと本気で勘違いした僕は、慌ててその場から逃げてしまいました。爆破ってあんなに熱いんですね……。あの日から見る目が変わり、ドラマ「ウイングマン」の岩船山ロケの爆破シーンを観たときも「あんなに熱いのにすごいなあ」という気持ちになってしまいました。カッコいいポーズしてるとか無理。爆破マジヤバいです。もし機会があれば皆さんも一度体験することをオススメします。
たった30分のために
文 / 田中和宏
印象に残っているライブ3本
炙りなタウン「いい加減にしろ!ツアー」9月17日 大阪・心斎橋BRONZE Tyrkouaz「Now2」9月20日 東京・下北沢近道 - BiS「WACK in the U.K. Vol.3」8月28日 イギリス・ロンドン The Underworld
炙りなタウン「いい加減にしろ!ツアー」大阪編を観に行った。この日の大阪は暑かった。9月中旬にして34℃超え。炙りなタウンのライブは、真夏だろうが真冬だろうが、いつだって猛暑日のようにアツい。胸が高鳴り、汗が滴り、音楽が全身を貫くようなヒリヒリとした感覚を覚える。
あれは3年前、ガラガラのフロアで彼女たちのライブを観たことがある。そのときも彼女たちのエネルギーに圧倒された。「この人たちはたとえ客が0人だったとしても全力のライブをやってるんだな」と感じ、もう目が離せない存在になった。
大阪のライブでは、ゆきなり(Vo, G)がこんなことを言っていた。
「わしらは──女の子が涙を流して失恋ソングを歌って、それが30秒の短い動画になって数字が増えて──それが美しいとされている時代をぶっ壊しにきました」
人と人をつなげる音楽、人と人が向き合うライブを大切にしているからこそ、こういう言葉が出るんだろう。
対バンライブの持ち時間は、1組あたり30分から45分。たったそれだけの短い時間に何を求めるかは人それぞれ。思えば小学生の頃は10分だか20分の短い時間でも校庭に繰り出して遊び、チャイムが鳴ったら急いで教室に戻ったものだ。社会人になってからの10分休憩は、スマホをいじりながらタバコを吸ったら終わり。時間の密度は大人になるにつれて薄まる、というのも現実である。
そんな中、炙りなタウンのライブで過ごすたった30分は、子供の頃のような時間軸で過ごせるひとときとも言える。普段そんなことまで考えてライブを観ていないけど、忘れかけていた感情がよみがえるような感覚を覚えるということだ。
炙りなタウンのライブを観ていると、いつだってついついステージの近くに行ってしまう。2025年もその先も、このバンドがどんな景色を見せてくれるか、ワクワクしている。またツアーをやるときは、どうかチケットが取れますように。
RYUTistの13年間の“奇跡”に感謝
文 / 近藤隼人
印象に残っているライブ3本
- RYUTist「RYUTist LAST HOME LIVE ありがとね、ほんとにね。」12月1日 東京・渋谷CLUB QUATTRO
- ブギ連「ブギ連LIVE『第2回 ブギる心』」10月11日 東京・東京キネマ倶楽部
超ときめき♡宣伝部「行くぜ!超ときめき♡宣伝部 at さいたまスーパーアリーナ ~超ときめきクリスマス~」12月28日 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
澤部渡 / スカート @skirt_oh_skirt
ナタリーさんが街裏ぴんくさんとのツーマンを振り返ってくれている……これはうれしい。来年もやれたらいいな〜 #ぴんくスカート https://t.co/g6Qz9KLeap