音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

中島みゆき、ATEEZ、柴田聡子、Dos Monos、吾妻光良&バッパーズ、藤井フミヤ、澤部渡×街裏ぴんく、眉村ちあき、炙りなタウン、RYUTist

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起立 2024

文 / 鈴木身和

印象に残っているライブ3本

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2024年、SNSを通じた販促で見事にライブチケットを完売させた岡崎体育さんもこう言っていた。

イスありますよ

普段好んで聴いている音楽の傾向もあって、私は直近10年、ほぼ着席型のライブしか観ていない。さらにさかのぼり、お笑いや演劇を中心に観ていた時期を含めると着席歴は20年以上になる。

ライブに参加する際、椅子の有無は年々気になってくる。椅子があれば疲れたときに座れるし、ちょっとした荷物も置ける。だから開演前にグッズも買える。何より自分の居場所が確保されているのは、開場時間から開演時間まで立ち尽くさなくて済むというメリットがあり、1人参加者にとってとてもありがたい。

それが今年覆った。きっかけはDos Monosの「Dos Atomos」リリースパーティ。会場はLIQUIDROOM。当然椅子もないし、Dos Monosのライブには初参加だったので、初心者らしく後方に立っていた。「まあ、なんとなく見えればいいか」とゆるく構えていたが、いざライブが始まってみると周囲は男性ばかりで視界がふさがれ、上を飛び交うレーザーしか見えない。こんな状況はかなりひさしぶりのことだった。その後1段上に移動してなんとか観ることができたパフォーマンス、そしてフロアに上がる無数の手、歓声、熱気はすさまじいもので、自分の中に大きな衝撃を残した。

今年観た印象的なライブを振り返ってみると、八丈島で「マイム・マイム」をぐるぐる回ったり、イサム・ノグチの作品である石庭を歩き回ったりと、これまでの反動かのように動き回るものが多かったように感じる。椅子の安心感も魅力的だが、スタンディングの刺激に再びハマりそうだ。

吾妻さんだったらこんな気分をどんなふうに歌うだろう

文 / 望月哲

印象に残っているライブ3本

特集記事

「こんな大人になりたい」オブ・ザ・イヤーを僕の中で毎年受賞している吾妻光良さん率いる“バッパーズ”こと吾妻光良 & The Swinging Boppersが今年、ニューアルバム「Scheduled by the Budget」をリリースした。結成から45年、メンバー各自が仕事を持ちながらマイペースに音楽活動を続けてきたバッパーズ。それゆえライブの本数は限られていて、渋谷CLUB QUATTROで春に開催されるライブは僕にとって恒例行事と化している。高校時代からの親友Wくんと毎年足を運んでいる。ライブの前に吉祥寺のいせやで一杯ひっかけてから会場に向かう。ここから楽しみは始まっている。新曲をいち早く聴けたりするのもクアトロライブでの楽しみの1つだ。ニューアルバムに入っている「誰もいないのか」も、クアトロで初めて聴いた。ロボット店員やモバイルオーダーが当たり前になり、人と人とのコミュニケーションが希薄になりつつある現代社会を歌ったナンバー。「問題提起」みたいな重苦しい感じではなく、あくまでもユーモア交じりなところが吾妻さんの吾妻さんたるゆえん。この軽妙洒脱な感じがカッコいい。ライブが終わるとツレと飲み屋に向かう。これも毎年のルーティン。20代の頃はお互いの彼女の話や最近聴いてよかったアルバムの話などをしていたが、イイ歳こいた最近は、もっぱら仕事や家庭の話がメイン。ともすれば体調の話なんかもするようになって、しっかり自分がオヤジになったことを痛感する。「次は何を飲もう」なんてメニューを眺めながら、酔いの回った頭で「こんな気分を吾妻さんだったら、どんなふうに歌うだろう?」と考える。ライブが終わったあとのこんな時間も何気に楽しい。

戻りたい、戻れない……2024年6月9日の武道館(「藤井フミヤ『40th Anniversary FINAL in 日本武道館』」に寄せて)

文 / 中野明子

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

ライブはナマモノ。その瞬間にしか味わえない体験があり、再現は絶対にできない──。それはもちろんわかっているし、納得してはいるが、もう一度あの時間に戻りたいと切望するライブが時としてある。2024年を振り返り、そんな気持ちに駆られたライブを思い返した際に一番に浮かんだのが、藤井フミヤさんの111回目の武道館公演だった。

1983年にチェッカーズとしてデビューしているフミヤさんのキャリアは40年超。ちなみにフミヤさんは若い頃「50歳には引退する」と明言していたが、50を過ぎてもステージに立ち続け、さらには自身の還暦を超満員の武道館で迎えている。大きなターニングポイントを経てひと区切りと思いきや、翌2023年からはキャリア初の47都道府県ツアーを開催。その“長旅”の終着駅が今年の武道館公演であった。

まあ、これがとにかくオープニングから痺れっぱなし。全方位を観客に囲まれた死角なしのセンターステージで、熱すぎるほどの視線を浴びながら、あれほどカッコよく登場できる人はいるのか(いやいない)。と、思わず反語を使いたくなるような演出をはじめ、「40年分歌います。覚悟してください」という宣言通り、長年にわたって鍛え上げ、熟成させた声で全キャリアを網羅する楽曲を歌い上げるエネルギー。その歌声が描き出す物語やメッセージは、時としてティーンエイジャーの初々しい恋模様であり、時として人生の折り返し地点を迎えた老獪からのエールであり……と、書き出すとキリがない。

以前、インタビューで「歌は3分から5分の世界で完結してて、しかもリスナーはリピートして聴いてくれて、それで青春時代を思い出したり、いろんな感情を抱いたりしてくれる。人を幸せにもできる」と、歌手として活動し年齢を重ねる中で実感したことを話してくれたフミヤさん。その歌声に自分の記憶を重ね、“まあまあ”の紆余曲折の日々を回顧しつつ、この文章を書きながら「年を重ねるのも悪くないかも」と呟く年の瀬。同時にあの血湧き肉躍る2時間半をもう一度味わいたい、タイムマシーンに乗って戻りたいと願う自分もいる。それほどまでに濃密で充足した空気が、2024年6月9日の武道館には流れていた。

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澤部渡×街裏ぴんく、眉村ちあき、炙りなタウン、RYUTistのライブを振り返る

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澤部渡 / スカート @skirt_oh_skirt

ナタリーさんが街裏ぴんくさんとのツーマンを振り返ってくれている……これはうれしい。来年もやれたらいいな〜 #ぴんくスカート https://t.co/g6Qz9KLeap

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