超特急の決意表明
「『EVE』。これが、ユーキをはじめとする僕たち超特急の決意表明です!」。ライブ演出を手がけるユーキの名前を出し、ツアーの中でタクヤが叫んでいた言葉。この「決意表明」という強い言葉に違わぬ超特急の“生き様”を、9人は全36曲、約3時間におよぶ濃密なステージで8号車に示してみせた。
開演時刻を迎えステージ上のビジョンに映し出されたのは、風や砂漠、海に雷……と、世界を構成するあらゆる自然の要素の前に佇むメンバーの姿。壮大なストーリーの始まりを観る者に期待させる中、神話の中の戦士たちのような衣装をまとって8号車の前に現れた9人は、ツアーのテーマ曲の新曲「EVE」でライブの幕を開ける。シンフォニックな導入から豊かなサウンドスケープを描くこの曲で、ボーカルのタカシとシューヤは痛みや悲しみを伴っても一歩踏み出し、希望を胸に進んでいくことの喜びや美しさを歌い上げた。2曲目の「Steal a Kiss」が始まると、ステージからは何本ものスパークラーが吹き上がり、カラフルなサーチライトが広大な空間を忙しなく舞う。9人は獲物を狙うような鋭い視線を満員の8号車に向けながらシャープに舞い、ユーキは7日公演では「好きすぎてたまらねえ」、8日公演では「好きだよ、バーカ」と自身のセリフを言い換えて悲鳴のような歓声を誘ってみせた。続く「Re-Booster」は1桁号車の5人から2桁号車の4人へ、9人全員がボーカルをつなぐ楽曲。タブロイド紙風の「Who’s that?」という文字を背にした鮮烈な登場シーンと、メインステージで歌い踊っていた1桁がセンターステージの2桁に合流する演出は、メンバー全員そろっての完走が叶わなかった前ツアー「Joker」からの踏襲を感じさせるもので、彼らは過去を超えるリベンジとばかりに熱の入ったパフォーマンスを8号車に叩き付けた。
カイの不敵な笑みにクローズアップするカメラワークからなだれ込んだのは「Kura☆Kura」。現体制での披露は今ツアーが初めてとなったこの曲では、9人構成ならではのダイナミックなラインダンスや思い切りがなりを効かせたシューヤのボーカルがオーディエンスの熱い声を誘う。そこから流れるように展開した「What's up!?」も、9人では初披露となったパーティチューン。これまでのムードから一転、コロコロと表情を変えコミカルに楽曲を体現するメンバーに呼応するように、客席中からは自然発生的に「Hey!」というかけ声が沸き上がり、ライブ冒頭にして場内の熱気は急上昇。そんな熱い空気感を加速させるべく、ハルは「皆さん声出していきましょ~!」と煽り、「Everybody Hands Up!」の大合唱を巻き起こす。コロナ禍のライブで披露されたときには叶わなかった8号車の全力コールによってこの楽曲に芽生えた新たな息吹を、9人は満面の笑みで受け止めた。
グループの“始まり”をたどって
ビジョンの中で9つの光が集まり扉の形を成し、その扉の奥に現れたのは神聖な空中庭園のような美しい光景。青空が夜空に変わり星が輝くと、9人はここで“禁断の愛”を歌う「Lesson II」を披露した。美しいジャケットプレイを見せたタクヤを筆頭に、しなやかなボディコントロールで聴衆を神秘的な世界観へと誘うメンバーたち。間奏にはダンスブレイクの特別なアレンジが差し込まれ、9人が見せた妖艶なフロア技には客席から感嘆の声が漏れる。しかしながら、続く「Cead Mile Failte」で彼らの背後の様子は一変し、庭園は業火に包まれた。「Lesson II」とは対照的な猛々しい群舞と激しいダンスステップは緊迫したムードを募らせ、タカシとシューヤによる熱のこもったボーカルアレンジも鮮烈にオーディエンスの耳を奪う。まるで神に捧げる儀式のようなミステリアスなムード漂う楽曲のリレーを結んだのは「Feel the light」。背景を宇宙空間へと変えて歌い踊る彼らは、光るボールを自在に操りながら幻想的な世界観を創出する。そんな中、曲のラストで1人スペースシップの頂点に立ち、上から差し込む光を求めて手を伸ばしたのはユーキ。その手は光をつかむことができず、彼は闇の中に倒れ落ちて姿を消してしまう。
ビジョンに映し出された映像の中で、深い水の底へとゆっくり沈んでいったユーキは、無機質な白の空間で目を覚ます。そんな彼を囲んだ8人のメンバーは散り散りに別の方向へと進み、ユーキの前から姿を消した。意味深長なメッセージの余韻に浸る間もなく、明転したステージには無垢な純白の衣装に身を包んだ9人の姿が。彼らがここで披露したのは超特急の最初のオリジナル曲である「No More Cry」だった。自由に伸びやかに歌声を重ねるボーカル陣、美しくシンクロするダンスを踊るダンサーのバックには、星間を駆ける電車の車窓。ここから彼らは、超特急というグループの“歴史の始まり”をファンの前で描き記すように、活動初期のディスコグラフィを順にたどっていく。
振り子時計の音色に反射的に歓喜の声が沸いたのはリョウガがセンターを取る4thシングル表題曲の「Bloody Night」だ。9人はオリジナルパフォーマンスに忠実にドラキュラのマントを身に付け、それを自在に翻しながら怪しげに舞い踊る。8号車も熱のこもったコールを送る中、タカシが「You are my vampire?」とリリース当時から格段に進化したパワーボーカルで歌い上げると、リョウガも「ずっと、ずっと君だけを」という決めゼリフをクールに言い放った。マントを脱ぎ去ったユーキがセンターに立った5thシングル曲「Kiss Me Baby」はこれまでに数えきれぬほど8号車の心を熱くさせてきたライブ鉄板曲とあって、客席中から贈られるメンバーコールも完璧。ユーキは冒頭「まだまだ声足りねえんじゃねえの!?」と荒々しく8号車に求めるも、曲中では「Kiss me baby?」とキュートな表情を浮かべる。持ち前のギャップで8号車の歓声をほしいままにする。すると、ここで9人の中心に躍り出たアロハが「ここからは、ここにいる皆さんと僕たちで、“一揆”を起こしたいと思います」と宣言した。
次の展開を予想した客席が驚き混じりにざわめく中、彼が「いくぜ!」と号令をかけると、続く8人は「はっ!」と声をそろえ、衣装をメンバーカラーの着物風スタイルに早替え。続く6thシングル曲「ikki!!!!!i!!」は、アロハをセンターに据える形で新体制初お披露目となった。9人の筆頭に立つアロハは、表情豊かに艶やかな傾奇者のような仕草で堂々と花道を闊歩。センターステージへとたどり着くと、9人は扇子を手にして晴々しく舞い「もっともっと!」と聴衆を煽る。そしてクライマックスには、「六騎、七騎、八騎!」のカウントアップに合わせてアロハとハルが見得を切る姿にカメラがクローズアップ。楽曲に宿った“新たな色”を鮮烈に印象付けた。14年前に産声を上げたグループの歩みを9人が大切にプレイバックしたパートを締めくくったのは7thシングル表題曲の「Believe×Believe」。「ガーリガリ!」の声を一身に集めたセンターのリョウガはきれいな白目の“感電ポーズ”で8人と8号車を牽引し、「お楽しみはこれからだ!」と人差し指を天空に突き上げてみせた。
さいスパ、たまアリ、SSA、さスア…
13曲を終え、この日最初のMCタイムでは、グループ史上最も広い客席の光景に思い思いの表情を見せた9人。7日の公演ではタクヤが「幸せな“困ったこと”言っていい? ペンライトがきれいすぎて、カメラさんがどこかわかんない!」と笑いながら困惑。8日にはリョウガの「景色がすごいのよ。何かできないかな?」という声にユーキの提案でウェーブを作ることになり、8号車が作り上げた色鮮やかな波のうねりを目の当たりにした9人は「すごい!」「きれいすぎて、この海潜りたい!」と思い思いに感動を口にする。また、7日公演でさいたまスーパーアリーナの略称について、メンバーが「さいスパ」「たまアリ」「SSA」「さスア」など思い思いの呼び名を付けて盛り上がっていたことを受け、ユーキは8日に「正式な略称、知ってる? この施設の人に聞いたんだよ」と、施設スタッフの推奨する略称が「さいアリ」であることをメンバーと8号車に伝え、感嘆の声を誘っていた。
次の準備のためにメンバーが順に舞台裏へとはける中、最後までステージに残っていたリョウガとハルがわちゃわちゃと戯れながら姿を消すと、まるで“9人組メインダンサー&バックボーカルグループ“の彼らとは異なる世界線にあるような、3つのユニットに分かれてのパフォーマンスがスタート。場内に響く雨音に誘われるように姿を見せたタカシ、シューヤ、タクヤ、ユーキはバラードナンバー「霖雨」を4人で披露。オールホワイトの衣装をまとったタカシのパートを同じく白衣装のタクヤが、オールブラックの衣装をまとったシューヤのパートを同じく黒衣装のユーキがダンスで雄弁に物語るという“一心同体“のパフォーマンスは静かな熱気を誘い、彼らがスモークの中で感情表現豊かに浮かび上がらせる切なさを8号車は息をのむように見つめる。2番パートでは、4人が十字に寝そべり踊る中でタカシとシューヤがサビを豊かに歌い上げるという“離れ業”を見せ、持ち前のポテンシャルを遺憾なく発揮していた。
連れてくぜD・O・M・E
4人が醸成した空気を切り裂くように、アリーナの客席通路に登場して驚きをさらったのはカイ、マサヒロ、アロハの3人。投下されたのは「Turn Up」をアップデートした「Re-Turn Up」で、彼らはこの曲をダンサーとしてではなく3MCのスタイルで表現してみせた。それぞれの個性がにじむB-BOYのスタイリングで8号車の目前を進みながら、巧みなフロウをつないでいく3人。センターステージにそろった彼らはビートレスでラップを叩き付ける渾身のリレーの中で切なる思いをマイクに乗せる。「打ちのめされても俺たちは必死に這い上がってきたんだ」と振り返るマサヒロ、「決して忘れたことない俺たちの原点」と宣言するアロハに続き、カイは「力に変わる1人ひとりの声 繋げる夢見たあの場所へ 8号車、Are you ready?」と告げると「連れてくぜD・O・M・E!」と、夢の場所を指す4文字に言葉にありったけの力を込めて会場中の喝采をさらった。
パフォーマンスリレーの最後に登場したリョウガとハルが見せたのは、奇想天外な言動や自由自在な変顔で常に周囲を楽しませる2人らしい、エンタテインメント性に満ちたステージ。「STYLE」をスタンドマイクでユニゾンするツインボーカルで8号車を歓喜させた彼らは、立て続けに人気のバラードナンバー「Snow break」を用意して聴衆の期待感を高める。これまでの公演では、リョウガのマイクパフォーマンスをお膳立てしたハルがボーカルの見せ場を奪ってひと悶着……という流れが定番化していたが、7日公演では2人の立場が逆転。リョウガがハルの見せ場をことごとく奪いながら“おふざけなし”でストレートに曲を歌い上げる展開に、客席は騒然とした空気に包まれた。予測不能なムードの中迎えた8日公演のステージでは、序盤こそリョウガがハルにパートを奪われるも、最終的には互いに向き合ったり、背中を合わせたりしながら声を重ねてみせた2人。円満的解決策で曲を歌い上げた彼らがその場に倒れ込むと、ステージ奥からはなぜかタカシが現れ、前日のMCでメンバーが「似てる!」と盛り上がった、オレンジ髪の黒崎一護ならぬ“黒崎やで護”の決めポーズで締めくくるという、カオス極まるエンドを導いた。
超特急の“太陽”と“月”
「8号車のみんな、愛してるぜ~!」。タクヤがそう呼びかけると、ステージには再び勢ぞろいした9人の姿。最新EPのリード曲「キャラメルハート」で柔らかな笑みを浮かべ、甘い高揚感の中でとろけるような恋心を歌い踊った彼らは、続く「My Buddy」でセンターステージへと進み、「さいアリ!」のコール&レスポンスや “いきものダンス”でステージと客席との距離感をさらに縮めていく。ステージに上がった生カメラへの9人のアピールも8号車をときめかせたこの曲からシームレスに突入したのは、ひさびさのパフォーマンスとなった「Jesus」。現体制でも初披露のこの曲ではステージ中央がせり上がり、1桁号車が上段、2桁号車が下段で楽しげに飛び跳ねる。リョウガを先頭に据えた9人が鮮やかなフォーメーションチェンジを繰り出しながら花道をウォーキングする演出にも、楽曲のエキセントリックな世界観が色濃く醸し出されていた。
ここで映し出された映像は、現代の日本で超特急とは異なる道を歩んでいる9人それぞれの姿だった。自動車整備士のユーキとハルは、ミスで落ち込む仲間のシューヤを「後悔なんていつでもできんじゃん」「俺らもいるし」と励まし、彼の仕事をフォロー。理不尽な周囲の評価を「こんなにがんばっているのに報われない」と嘆くのはビジネスマンのタクヤとタカシで、そんな2人の愚痴を受け止める喫茶店マスターのリョウガは「コーヒーも、最初はただの豆なんだよ。苦くても焦がしてもうまくいかなくても、育つには時間がいる」という持論で2人を前向きに送り出す。交通整理のバイトをしながらバンドマンとしての成功を夢見るのはカイ、マサヒロ、アロハ。ドライバーに叱られて「向いてない、やめたい」と肩を落とすマサヒロに、カイは「お前らのゴールはここじゃないだろ?」と声をかけ、3人は「いつか絶対一緒に音楽やろう」と約束した。
映像の中でも“異なる世界線”を生きる9人の姿が想起されたところで、ライブは「a kind of love」から後半戦へと進んでいく。カジュアルな衣装に着替えたメンバーがこの曲で伝えたのは、自分のそばにいてくれる“君”という存在の得難さと温かな愛。リョウガ、ユーキ、タクヤの3人がステージの真ん中でふざけあったり、じゃれ合ったりしながら楽曲の優しいメッセージを表現する彼らからにじむ気の置けない関係性は、8号車を自然と笑顔にする。続く「EBiDAY EBiNAI」はボーカル2人のみで披露され、タカシとシューヤはリフトアップしたメインステージで朗々と歌声を響かせる。ライブの中で、タカシのことを“太陽”、シューヤのことを“月”に形容し「いつも僕らダンサーを支え、明るく照らしてくれている」と表現したのはユーキ。その言葉通り、豊かな広がりを湛えるタカシの朗らかなボーカルと、三日月のようにシャープに澄み渡るシューヤのボーカルは美しい響きとなって広大なアリーナ空間で混じり合い、オーディエンスの心を震わせた。2人の歌声にダンサーが1人ずつ合流していったのは「君と、奏で」。ダンサーの7人は全身で雄弁にメッセージを伝えるダンスリレーに出会いの尊さを投影し、“君”と出会えた喜びを歌う人生讃歌を描き出す。1列に並んだ9人の動きに8号車もハンドウェーブを重ね、温かな一体感に包まれたハイライト。客席から大きなシンガロンングの声が上がると、シューヤは「8号車の声、ホントに素敵でした。ありがとう!」と破顔しながら感謝を伝えた。
温かなメッセージソングに乗せ、9人と8号車が笑顔を共有した時間を経て再び映し出された映像では、9人が居酒屋に集い語り合う姿が描かれた。タクヤが「それぞれの場所で、いろんなことと戦ってるんだね」と8人に語りかけると、アロハは「離れ離れでも、みんながいるからがんばれるんだなって」と続く。ユーキが「ここからだな、マジで」と言葉に力を込めたのを聞いたハルとシューヤは「長かった日常からようやくたどり着いたこの場所に」「どんなときもつながってた最高の仲間に、乾杯!」と声を上げる。すると、無機質な“異空間”に佇んでいた9人も同じ方向を向いて立ち並び、新たな1歩を踏み出した。
全速前進、加速する超特急
その瞬間、ステージの奥から響いてきたのは「埼玉ー! ラストスパート、まだまだいけるよなあ!?」という咆哮。9色のメンバーカラーが鮮やかに映える衣装でステージに戻った9人は、音玉の爆音を合図に「超えてアバンチュール」でクライマックスを駆け抜けていく。5台のトロッコに分乗して8号車の待つ光の海へと進んでいくと、リョウガは「頭振れ~!」と叫び声を上げてオーディエンスを熱く煽り立てた。続く「SAY NO」ではセンターのタクヤの雄叫びが大空間に響き渡り、シューヤも「埼玉ブチ上がれー!」と高らかにシャウトを響かせる。ハルが「8号車! 大好き!」と、ユーキが「8号車! ありがとう!」とコール&レスポンスに乗せたラブコールをするシーンも。その後も「ジュブナイラー」に「Secret Express」と、8号車の熱いコールが不可欠な楽曲を容赦なく畳みかけながら客席通路を進む超特急。彼らの“狙い”を完璧に汲み取る8号車もまた、メンバーの気合いに負けない大声量を広大なアリーナ空間に響き渡らせた。
「AwA AwA」でステージに戻った9人は、流れるように最新のパーティチューン「メタルなかよし」をフルサイズで投下。轟くメタルサウンドに“頭空っぽ”で身を任せ、ヘッドバンギングにリョウガの鮮やかなハイキックで完全燃焼……と思いきや、超特急はここからさらにギアを上げ加速していく。現体制では初披露となった「Drawイッパツ!」のイントロに9人がセンターステージへと駆け出したその瞬間、8号車はまるで待ち望んでいたかのように、ユーキが考案したコールを息ぴったりに叫んだ。「かっとばせー超特急! 勝つぞ勝つぞ超特急!」。9人を力強く鼓舞する3万人の声を受けてセンターに躍り出たのは元野球部のマサヒロで、彼はパワフルに頼もしくステージを牽引してみせる。超特急と8号車によるハイエナジーすぎる愛の交歓はステージ上の勢いを確かに加速させ、タクヤが花道で往復ダッシュをしたり、ハルが舞台に頭だけで突き刺さる“一点倒立”を見せたりとメンバーはそれぞれ自由に大暴れ。圧倒的な熱狂空間の中で「どんな壁も壊し乗り越え夢のドームへ連れてって!」と声を上げた8号車の願いを受け止めた。
「たまアリの皆さん! 僕らの名前を呼んでー!」というハルの声に8号車がメンバーコールで応じたのは「Burn!」。ステージのあちこちに大きく広がった9人が両腕をクロスさせる“バッテンダンス”を見せ、カイが「さいたまスーパーアリーナ、ひとつになりましょう!」と叫ぶと、客席の最前列から最後列まで、波打つように“バッテン”が伝播していく壮観が広がった。毎回日替わりで歌唱担当が変わる落ちメロパートに差しかかると、8日公演ではユーキが「全員で歌いましょう!」と呼びかけ、9人はがっちりと肩を組んで声を張り上げる。夢中で腕を振り、声を上げ、メンバーもファンも同じ熱量で“この瞬間”に没頭してひとつになる──超特急の真骨頂とも言える熱い一体感に会場中が包まれる中、ユーキは改めて8号車と向き合い、本編ラストの曲を前に口を開いた。
「みんな、いろんな状況下でこのライブを観に来てくれていると思います。こうして一緒に同じ時間を過ごすって、どれだけ奇跡的なことなのか。ここにいるみんなと同じ時間を過ごしている、この景色は本当に奇跡なんです。僕たちはいつ死ぬかわからないし、いつまでグループが続くかだってわからない。でも、僕らはずっとドームを目指して、この夢を1回もあきらめたことはありません。そうしたら、こうやって素晴らしい景色を、今見れているんです。みんなと夢を誓い合ってきたからこそ見れている景色が、ここにあるんです。本当に、あきらめなかったら夢は叶うんです。こんな奇跡を見せてくれてありがとう。まだまだ終わりじゃない、もっと素晴らしい景色を絶対に見せます。僕らがずっと大事にしてきた近い距離感を大事しながら、誰1人置いていくことなく、みんなと生涯笑っていたいなと思います。そんな思いを込めて、最後にこの曲を披露したいと思います」。
「なんの言葉も出てこない。それくらい最高でした!」
“生命の誕生”という根源的なテーマと向き合い、「超特急」という個性の創生、巡り合えたことの奇跡、ともに声を上げることで感じられる“共存”とその尊さ……と、今の超特急の輝きを成す大切な要素を壮大なストーリーの中で紡ぎ上げた「EVE」を総括するように届けられたのは「Billion Beats」。“一生分(20億回)の鼓動”をどれだけ君と共有できるだろう、と切なる願いを歌うこの愛の歌で、9人は柔らかな表情を浮かべながら衣装の左胸を波打たせる。すると、客席を満たす無数のペンライトの光も鼓動のようにリズミカルなビートを刻んで9人とシンクロ。まるで「20億分の1のかけがえないこのトキメキ」という歌詞を具現化したような刹那のきらめきがメンバーの眼前に広がった。万感の空気の中、アウトロで挨拶を担ったのはタクヤ。7日の公演では「これが超特急です! みんな今日いくつか“ときめき”があったと思うけど、次会ったときにはそのときめき、超えてやるから。また絶対に会いに来いよ!」と8号車に力強く語りかけた彼だったが、8日公演では「最終日、収録もあるのになんの言葉も出てこない。それくらい最高でした!」と言って、涙で言葉を詰まらせる。顔をくしゃくしゃにする彼をすぐ隣のメンバーたちが気遣う中、タクヤは「また会いましょう!」と力強く叫んで舞台奥へと姿を消した。
3万人の8号車たちの大きな「超特急!」コールを受けてスタートしたアンコールでは、1曲目に最新EP「Why don't you 超特急?」収録の「踊ライナー」が披露された。ライブ本編で32曲を歌い上げたあとにもかかわらず、底なしのスタミナで遊び心たっぷりに曲を歌い上げるボーカルの2人。シューヤはマイクを逆手に歌声を響かせるパフォーマンスでも8号車の歓声を誘ってみせた。そして曲を終えると、9人はここで1人ずつファンに挨拶をし、それぞれの思いを伝えていく。加入から3年が経ったことに言及したシューヤは「一度は夢をあきらめた僕ですが、『この人だ』と思う人を見つけて支えようと胸に誓ったら、こんなに素晴らしい奇跡が起こりました。俺はこの先もタカシくんとメンバーのために、そしてここにいる8号車のみんな、今日来られなかった8号車のみんなのために歌い続けるので」と改めて約束。普段のMCではあまり自分自身のことを語らないカイも「あんまり弱いところを見せないように、自分の中で見せたい部分だけを見せたいなと思う人間なんですけど、これからは強がらず、自分らしい姿をみんなに届けられたらいいなと思います」と、偽らざる本心を8号車に向けて吐露する。そしてユーキは「誰1人欠けずに9人全員で成功できたこと、完走できたことを本当にうれしく思います」と、今回のツアーの成功を喜び「呪縛が解けましたね!」と笑顔を見せた。
「あきらめなかったから僕たちは今ここにいる」
「僕らは(1桁号車の)5人の歴史に参加させていただいた側なんですけど、本当にこの歴史に名を刻めたことがうれしいなって思ってます」とまっすぐに目を輝かせたハルに続き、「この景色を見られていることに僕は感動を覚えています」と、噛み締めるように広い客席を見渡したのはタカシ。「一時期ね、『この人たちはドーム立たれへんのちゃうか』とか、『超特急終わったんちゃう』みたいなことをすごく言われる時期があって」と苦い過去を振り返った彼は「でも、こんなにも素敵な8号車の姿を見てたらね。絶対に俺、あきらめることできひんなって思ったんです。『見たか』って思います。あきらめなかったから僕たちは今ここにいるんですよ!」と言葉に力を込め「僕はここで宣言します。絶対に超特急はドームに立ちます!」と続けた。穏やかなタカシの内面で燃え続ける強い信念があらわになった挨拶を経て、最後にマイクを握ったのはリーダーのリョウガ。「8号車の日ということでですね、本当に言いたいことはたくさんあるんですよ。思うこともたくさんあって」と切り出した彼は「皆さんに対してはね。拡散力とかマナーのよさ。愛の強さなどなど、いっぱいあります。本当に、日々同じメンバーとして、皆さんを尊敬、リスペクトしています。本当にありがとう」と、まっすぐに8号車へ向けた感謝を口にした。
7日公演には「Summer love」、8日公演には8号車の日のアニバーサリーを祝う「MEMORIAる」で8号車の笑顔を誘うパフォーマンスを見せた9人は、「走れ!!!!超特急」で晴れやかにライブを締めくくる。しかしながら8号車が超特急を呼ぶ熱い声は止まず、8日公演ではダブルアンコールが実施された。9人がステージに並んだところで曲振りを担うはずのユーキだったが、彼は突如メンバーのほうを向いて「お前たちがいるから俺はライブを作れるし、本当にありがとう!」とあふれ出す思いを伝え、8人を順に力強くハグ。そして「今本当に楽しい日々を過ごせているのはメンバー、9号車(スタッフ)、そして何より8号車の存在があるから。明るい未来を切り拓くことができています」と切り出すと「ドームがゴールじゃないから。ドームドームって言ってるけど、もっと大切なものがあるんです。まだいろいろできてないことあるでしょう? しっかり夢の先まで叶えていきましょう」と、8号車に“夢の先にある景色”を約束した。輝く未来へ向け、9人が大きな一歩を力強く踏み出した「EVE」ツアーのラストを飾ったのは、現体制の“始まりの曲”である「gr8est journey」。2年前よりも1年前よりも頼もしい佇まいで、強い絆で歌い踊るメンバーの瞳には涙が光る。曲を終えると、リョウガは「これからも、この最高のメンバーで、死ぬまで! 笑顔でいましょう」と、3万人の8号車に語りかけた。
メンバー挨拶全文・セットリスト
はつか @hatsuka0820
1枚目のリョウガさんが歯を見せて笑ってるのほんとに嬉しい可愛い https://t.co/YpH78SQND0