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SPYAIR、ボーカリスト脱退を経て走り出した2023年富士急ライブへの道

バンド最大の危機が浮き彫りにした“SPYAIRの本質”とは

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新体制初ライブはコニファーフォレストで

さらに特筆すべきは、2023年8月11日に富士急コニファーフォレストにて、毎年恒例の野外ワンマンライブ「JUST LIKE THIS 2023」の開催が決定していること。彼らの活動を象徴するステージで行われるこの公演が、新ボーカリストを加えた初ライブとなる。

「コニファーフォレストでライブをやるって決めたのは……勢いかな(笑)。自分たちの逃げ道を絶つ意味合いもあったと思います」(KENTA)

「こういうときだからこそ、目標を決めるのが大事なのかなと。ボーカルも決まってないのにデカい会場を押さえるなんて、自分たちでもどうかしてると思いますけど(笑)」(MOMIKEN)

「オーディションをやると決めてからも、ちょっとモヤモヤしてましたからね。自分たちのケツを叩くためにも“ここまでに”と期限を決めることが必要だったんです。実際、コニファーフォレストでライブをやるって決めたことで『まずはそこまでやろう』と腹を括れましたし。コニファーフォレストのライブがどんな内容になるかはまだわからないけど、もし新しいボーカルが決まってたら、いきなりデカいステージに立つことになる。そこが一般的な新人発掘オーディションとは違うところですね」(UZ)

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またSPYAIRはオーディションと並行し、10月から12月にかけて「スパイエアー、バンカラツアー~と、ボーカル探してます。~」と題したイベントを開催していた。これはメンバーの演奏による“生バンドカラオケ”に乗せて、参加者がSPYAIRの楽曲を歌うという企画。オーディションとは関係なく、あくまでもファンのためのイベントだという。

「IKEが抜けてライブができなくなって、ファンに会える機会がなくなっていたから、何かができないかな?というのが発端でした。メンバーの姿を生で見ることで気持ちが落ち着くファンもいるかもしれないし。以前から、俺とKENTAで“BAND TRIAL”というバンド講座企画をやってたんですよ。実際に楽器に触ってもらって、バンドに興味を持ってもらうための活動なんですけど、その延長線上として『UZを入れて、3人で伴奏するのはどう?』ということですね」(MOMIKEN)

「バンカラツアーを企画した時点では、新ボーカルのオーディションはまだ決まってなかったんです。だから純粋にファンのためのイベントなんですよね。抽選で選ばせてもらった方にSPYAIRの曲をワンコーラス歌ってもらうんだけど、みんなうまいんですよ。最初は緊張していても、いざ始まるとすごく楽しそうに歌ってくれて(笑)」(KENTA)

「人前で演奏する機会を作りたいという気持ちもどこかにあったかもしれないです。3人でスタジオに入ってるときも『やっぱり歌が欲しいね』という話になるので」(UZ)

ファンとの交流の場として行われたバンカラツアーだが、ボーカルオーディションへの影響も生まれているとか。

「歌が特別うまいわけじゃなくても、一緒に演奏するといい雰囲気になる人っているんだなって」(MOMIKEN)

「うん。ボーカルオーディションって“歌がうまくて、見た目がよければOK”と思われがちだけど、それだけじゃなくて。ボーカリストとしての存在感や空気を作る力が大事なんですよね」(UZ)

「あとは俺らに馴染めること(笑)。そのことで歌にグッと入り込めるので」(KENTA)

デカい場所を目指すバンドの真ん中にはカッコいいボーカルを

バンカラツアーの各公演の最後にUZ、MOMIKEN、KENTAの3人で「4 LIFE」(2015年のアルバム「4」収録)を演奏したことも、ファンの間で話題になっている。UZがボーカルを取るこの曲は、2014年にIKEが「SPYAIR辞めます」とツイートしたことを受け、「IKEがまたやる気を取り戻してくれたらいいなと思って作った曲」(MOMIKEN)なのだ。

「スパイエアー、バンカラツアー~と、ボーカル探してます。~」名古屋公演の様子。(Photo by INOKOSHI ZENTA)

「スパイエアー、バンカラツアー~と、ボーカル探してます。~」名古屋公演の様子。(Photo by INOKOSHI ZENTA)


「3人だけで成立する曲は『4 LIFE』しかなくて。その曲を会場に来た人たちに聴いてもらいたかったんですよね」(KENTA)

「バンカラは基本的にファンをもてなす企画なんだけど、最後にミュージシャンとしての姿を見てもらいたくて。『4 LIFE』を歌ってるとどうしてもIKEが脳裏に浮かぶし、気持ちの置きどころが難しい曲ではあるんですけどね」(UZ)

「僕らもアーティストに戻れる瞬間が欲しかったんでしょうね。『4 LIFE』を聴いて泣いていたファンもいたみたいで。喜びの涙だと思いますね、それは」(MOMIKEN)

UZ、MOMIKEN、KENTAはメジャーシーンで10年以上活動してきた経験があり、ミュージシャンとしての技術、センスも向上を続けている。スリーピースバンドとしても十分に魅力的だと思うのだが、“3人だけでバンドを継続する”という選択肢はなかったのだろうか? その答えは、SPYAIRの本質に迫るものだった。

「それはまったく考えなかったです。SPYAIRは結成したときから、常にデカい場所を目指して進んできたバンド。真ん中にカッコいいボーカルがいて、俺は横でギターを弾くというイメージが強くあるし、アリーナやスタジアムが似合うバンドになりたいと思ってやってきたんです。この3人のバンドだと、それが見えないんですよね。やっぱりボーカルが必要だし、デカいところでやりたい。だからコニファーフォレストでやろうとしてるんですよ」(UZ)

新ボーカリストを募集するオーディションのエントリー期間は12月25日まで。その後の審査期間を経て、8月11日の「JUST LIKE THIS 2023」へと向かっていく。日本のメジャーシーンで10年以上のキャリアを持つバンドが新しいボーカルを募集するのは極めて稀。3人の果敢なトライがどんな結果を生み出すのか、ぜひ注目してほしい。

「一緒に演奏してみないとわからないし、意外と時間はなくて。今の時点では、どうなるかまったくわからないですね。ただ、少しずつ希望は感じ始めてるんですよ。最初は『新しいボーカルなんてそんな簡単に見つかるわけねえ』と思ってたけど『意外といるかもな』と」(UZ)

「最初のライブがコニファーフォレストというのはすごいハードルだし、応募してくれる方はハートが強いなと思います。『これだ!』という人が現れるかもしれないし、『やっぱりSPYAIRのボーカルはIKEだね』となるかもしれない。やってみないとわからないですね」(KENTA)

「今はとにかく、気持ちをフラットにしておくのが大事なのかなと。応募してくれる人たちとしっかり向き合って、オーディションを進めていきたいですね」(MOMIKEN)
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