佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 8回目 前編 [バックナンバー]
AKB48向井地美音とアイドルの再ブレイクを考える
「根も葉もRumor」がもたらした大きな変化
2021年12月20日 19:00 17
構成
コロナ禍で考えたグループの存在価値
南波一海 今日はお時間いただきありがとうございます。まず、お話を伺ってみたかった理由としては、佐々木さんがある日突然「根も葉もRumor」(2021年9月発表の58thシングル表題曲)に激しく反応されたという流れがあったからなんです。
向井地美音(AKB48) ええ、すごい!(笑) ありがとうございます。
佐々木敦 AKB48さんのことはもちろん結成時から知っていましたが、正直に言うと最近の活動はあまりチェックできていなかったんです。ところが、あの曲のミュージックビデオをたまたま公開まもなく観て、虚を突かれたというか、すごく感動してしまったんです。冒頭でセンターの
南波 なんて言ったらいいんだろう。あの作品自体がすごく外に向いていた印象があります。動画のサムネイルから説明文の隅々まで気合いを感じました。
向井地 そうですね。実際「根も葉もRumor」は、今までのシングル曲とは明らかに周りの反応が違うなと感じていて。アイドルファンじゃない方からもリアクションをいただいたり、曲中でロックダンスに挑戦しているのでダンスをやっている方やプロの方が聴いてくださったりするんです。
南波 どうしてそんなふうになったのか、向井地さんやAKB48の皆さんがどう思っているのかなと。
向井地 今グループには、私を含め、過去にAKB48の握手会や劇場にファンとして通っていたメンバーがたくさんいるんですけど、先輩たちの存在があまりにも偉大すぎて「本当の意味での世代交代はいつできるんだろう?」「私たちにできるのかな?」という空気がずっと漂っていたんです。そういうふうに数年間溜めてきた熱意みたいなものが、ひさしぶりのシングル発売というタイミングで爆発したのかなと思います(※「根も葉もRumor」は前作「失恋、ありがとう」から約1年半ぶりのシングル作品)。
南波 向井地さんは2013年1月にAKB48第15期生オーディションを経て加入されていますが、当時はグループとしてのテレビ露出もかなり多い時期でしたよね。
向井地 そうですね。一番端っこで見ていました。
南波 そういう中で、AKB48を取り巻く環境が徐々に変化しているなと感じる瞬間はありましたか?
向井地 全盛期に比べてということですよね? それは、だいぶ序盤から感じていました(笑)。私が加入したのがちょうど「恋するフォーチュンクッキー」(2013年8月発表)のリリース直前だったので、その頃の世間的な盛り上がりは相当なものでした。私自身のデビューも日本武道館だったし、その3日後には東京ドームに立たせてもらったり、本当に恵まれているなと思っていたんですけど、前田敦子さんをはじめ大島優子さん、たかみなさん(高橋みなみ)のような最前線に立っていた先輩方が1人ずつ卒業していくたびに、メンバーもだんだん不安を募らせていきました。
南波 そんな中、どうやってモチベーションを保っていたんですか?
向井地 ゆきりんさん(
佐々木 向井地さんは2019年4月に
向井地 そもそも私が総監督を引き継いだときって、2代目総監督の横山さんが「今のAKB48でこんなことをしたい」と蒔いてくださった種がちょうど芽吹き始めていた時期だったんです。具体的には4年ぶりの全国ツアーが決まったり(参照:AKB48、全10箇所回る4年ぶり全国ツアー決定)、ライブのセットリストにメンバーの意見が反映されたりとか。与えられたことをやるだけではなくて、メンバー発信で、自分たちをプロデュースしていくことが増えてきて。
佐々木 そうなると個人に責任が生じるけど、その分やりがいも感じますよね。
向井地 はい。「自分はこの曲を絶対にこの衣装で歌いたい!」とか、みんなそれぞれにモチベーションを高めていました。でも、コロナ禍の影響を受け始めてからは劇場公演も握手会も思うようにできなくなって。みんな、「自分は本当にアイドルなのかな?」「AKB48の存在価値って?」と考えるようになってしまって……。やっぱり劇場公演や握手会があってこそのAKB48だし、ファンの方に直接会って熱意を伝えられるのがAKB48のよさだと思っていたので、そういうことが一切できなくなったのは、私自身にとっても大きな衝撃でしたね。
どんどんAKB48になっていく感覚
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吉田光雄 @WORLDJAPAN
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