LIVE HAUS通信

LIVE HAUS通信 第2回 [バックナンバー]

コロナ禍に試行錯誤して生まれたホットサンド店

生き残るため、柔軟に変化していく

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2020年8月に東京・下北沢にオープンしたライブハウス / クラブLIVE HAUS。本連載では、店長を務めるスガナミユウを中心としたスタッフたちに協力してもらい、コロナ禍の中でライブハウスを存続させるための取り組みなどを営業日誌形式でドキュメントしていく。第2回はLIVE HAUSが運営するホットサンド店・HauStandの店長であるキムキムに原稿の執筆を依頼。LIVE HAUSが営業自粛期間にあった6月に誕生したHauStandについて、オープンの経緯などをつづってもらった。

/ キムキム ヘッダーイラスト / 古川太一(KONCOS)

スタッフの雇用を守るために

私はLIVE HAUSの店先にあるホットサンド屋さんHauStandの店長・キムキムです。

今年の4月にオープンを予定していたLIVE HAUS。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、開店は先延ばされ、そこで働く予定だった私たちスタッフは、自分たちで考えて行動しなければ、仕事がなくなってしまう状況になりました。
イベントはできないけれど、とにかく場所はある。
幸いにもLIVE HAUSは下北沢南口商店街の中心に位置しており、自粛期間でも人通りは良好。近所の方々が買い物に出たり、犬の散歩をしていたり、“何か”をできる可能性は感じました。
並びの飲食店は続々とテイクアウト販売を始め、出遅れたスタートでしたが、「LIVE HAUSも何か食べ物を作って路面で販売しよう」という話が持ち上がりました。
しかしLIVE HAUSはそもそも飲食店ではないので、バーカウンターもコンパクトに設計されていますし、キッチンにガスは通っていません。その限られた空間で何ができるかを考えて集まったアイデアが、たい焼き、立ち飲み、フレッシュジュース、ジェラート、そしてホットサンド。機材の値段をリサーチしたり、オペレーションの難しさなどをイメージしてみた結果、一番現実的だったのがホットサンド屋さんでした。

そうと決まれば一から機材をそろえて準備開始。試作を何度も何度も繰り返し(当時は「もう当分パンは食べたくない!」と思いました……)、専門外の店の開業には何が必要なのか、たくさん調べ、話し合い……そうして生まれたのがHauStandです。

HauStand(写真提供:LIVE HAUS)

HauStand(写真提供:LIVE HAUS)

ほかのお店では味わえないホットサンド作り

ホットサンド店を志し、勉強し、いろいろなお店へ出向いて調査し……というスタッフが集まって始めたわけではない自分たちのホットサンド屋さん。
素人の私たちが作るホットサンドでどうやってお客さんを満足させようか。
やるからにはほかのお店では味わえない、特別なひと工夫を加えたい。そう模索する中で、スタッフの1人、ロッキーが閃いたのが“フレンチトーストのホットサンド”。
おいしさはもちろん、食べやすさやキャッチーさにもつながり、私たちのホットサンドの一番の特徴になりました。

そしてHauStandの営業を6月5日に始めると、LIVE HAUSを心配し、応援してくださる方々や仲間たち、新しい店ができたと注目してくれる道行く人など、たくさんの人が足を運んでくれました。改めて周りの方々の協力があって、LIVE HAUSは開店を目指しているのだと感じました。

しかしHauStandの売り上げだけではLIVE HAUSで働くスタッフたちの給料をまかなうだけの利益は出せず、なかなか厳しい状況を打開できませんでした。

HauStandのいち押しメニュー「ハウスサンド」。(写真提供:LIVE HAUS)

HauStandのいち押しメニュー「ハウスサンド」。(写真提供:LIVE HAUS)

HOTな夏を乗り切る新商品

そして7月になり街の自粛ムードは薄れ始めましたが、8月になると暑い夏が始まり、それに伴ってホットサンドの売れ行きは落ち込んでいきました。
なぜなら、ホットサンドはHOTなので当然なこと。
そこで、夏場を乗り越えるためのアイデアとして生まれたのが新商品「#フルーツパンチッチ」。
タピオカを持って下北沢の古着屋を散策する若者たちに、次なる提案として、凍らせたフルーツ数種類を氷代わりにし、ゼリーやナタデココを入れ、ピリピリ炭酸のトニックを注いだ、見ても飲んでも楽しいドリンクを開発しました。
そして音楽活動をしている仲間にテーマソング、プロモーションビデオの作成を協力してもらい、Instagramで告知したところ多くの方から反応をいただきました。

夏の新商品「#フルーツパンチッチ」。(写真提供:LIVE HAUS)

夏の新商品「#フルーツパンチッチ」。(写真提供:LIVE HAUS)

生き残るため、柔軟に変化するHauStand

しかし飲食店で利益を出していくことはそんなに簡単なことではない。
感染状況や情勢によって、どんどん変わっていく需要。
8月に入ると店内を利用する人が増えて、テイクアウト需要はほとんどなくなってしまいました。
そして商店街の路面でテイクアウト出店しているのは、HauStandとほかに1店舗のみとなりました。

そのような状況の中で、このまま店を続けることに意味があるのか、収束しない新型コロナウイルス感染拡大……そんな先の見えない暗い状況に悩んでいたところ、希望の光のようにやってきたのが、音楽をしつつ飲食店を経営している友人のキッチンカーの話でした。
キッチンカーの出店は事前申し込みが必要で、今は倍率がかなり高いので先の話にはなりますが、「試行錯誤して作ったHauStandがLIVE HAUSの今後を支える新しいコンテンツとして活躍できるのでは」と可能性を感じました。
その友人に感謝です。

HauStandは今後もさらなる可能性を模索し続け、変わっていく情勢の中でも常に前向きかつ柔軟に変化していきたい。
そして、“生きる家・LIVE HAUS”を支えるポジティブパワーの源になりたいと思っています。

とんだ林蘭が手がけたHauStandのロゴ。

とんだ林蘭が手がけたHauStandのロゴ。

キムキム

2016年より東京のライブハウス・下北沢THREE、下北沢のコーヒースタンドでスタッフとして勤務。2020年からはLIVE HAUSに所属し、現在はコロナ禍にオープンしたホットサンド店・HauStandの店長を務める。またジャポニカソングサンバンチ、OCHA∞MEの一員として音楽活動も行っている。

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