ライブハウスができるまで 第3回 [バックナンバー]

イニシャルコストは5000万円以上

防音設備や感染症対策……膨大なお金が必要な理由

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クラウドファンディングの手応え

スガナミたちがCAMPFIREでのクラウドファンディングのプロジェクトをスタートさせているのは、本連載でも触れてきた通り。この企画では、イニシャルコスト全体の5分の1にあたる1000万円の支援を求めている。リターンとして用意されているのは、店で使用できるドリンクバッジや店のロゴがあしらわれたTシャツ、年間パス、ホールレンタルパスなど。2月下旬にスタートしたこのプロジェクトには3月27日の現時点で447人の支援者が賛同しており、支援総額は700万に届こうとしている。

「CAMPFIREのページを作る際、どういった見せ方にすべきか悩みました。結果として新型コロナウイルスの問題もあるのでお祭り感は出さず、店のステイトメントとして掲げているような、“独立してやりたいことの根幹”を表現するべきじゃないかと考えました。目標金額はCAMPFIREの担当者と相談して決めたのですが、一般的にお店を作る際は高くても500万円くらいなんだそうです。ただ僕らの場合、満足のいく設備をそろえるためにはどうしても1000万円が必要でした。そこで妥協しないことが、最終的にはお客さんや出演者の満足度につながると信じています。やっぱり、支援してくださる人が増える度に身が引き締まりますね。数千円だって大切なお金ですし、新型コロナウイルスの影響で皆さんの生活も大変なことになっていると思うんです。その状況で僕らに期待を込めて支援してくださっているわけですから、しっかりといいお店を作りたいと思ってます」

LIVE HAUSのフロア。写真奥にはバーカウンターが設置される。

LIVE HAUSのフロア。写真奥にはバーカウンターが設置される。

返済プラン

ここまでの通り、スガナミたちはオープン直前の現在も資金繰りを続けている。途方もない金額ゆえに集めるだけでも驚かされるが、これらのお金は当然“借金”。返済プランも気がかりだ。

「5年ですべてを返済できるようプランニングしていて、毎月の返済額はだいたい85万円です。個人で融資してくださった人たちには金利を上げてお返しするのですが、その分もこの返済額に含まれています。滞りなく返済してくためにも毎月の店の売り上げは最低475万円は確保したいと思っていて、最終的には550万円まで伸ばせられたらなと。ランニングコストを計算してみたんですけど、家賃、人件費、光熱費、機材のメンテナス費、ドリンク類の仕入れ費用なんかを合わせるとだいたい390万円はかかる。これに返済分の85万を合わせると総額475万円になるんです。それに店をオープンして半年後にはアルバイトを含めた従業員たちの有給休暇の付与が始まりますし、新規開業に伴う消費税免除の期間があと1年半ほどで終了するんです。つまり、それまでにしっかりと稼いでおかないと店は傾いてしまう。だから無事にオープンできても、借金を完済するまでの5年間は気が休まらないですね。LIVE HAUS設立は、僕たちがこれまで出会ってきたすべての人たちから力をお借りしているプロジェクトだと思っていて。加えてクラウドファンディングでもたくさんの人たちに支援していただいているので、その期待と責任を感じながら店を盛り上げていきたいです」

スガナミユウ

スガナミユウ

写真で追うLIVE HAUSができるまで 2020年3月18日

ステージ側からみたフロア。フロアに段差を作るため工事が進められている。写真左にはバーカウンター、右にはPAブースが設置される。

ステージ側からみたフロア。フロアに段差を作るため工事が進められている。写真左にはバーカウンター、右にはPAブースが設置される。

天井。吸音工事が施されたのち、照明や音響機器などが取り付けられる。

天井。吸音工事が施されたのち、照明や音響機器などが取り付けられる。

ステージ側から見たLIVE HAUSの店内の様子。壁の表面を滑らかかつ平らにするための下地処理も終了し、塗装をする準備が整えられていた。なおLIVE HAUSのキャパシティは150人を想定していたが、これらの工事が進む中で120人に変更された。

ステージ側から見たLIVE HAUSの店内の様子。壁の表面を滑らかかつ平らにするための下地処理も終了し、塗装をする準備が整えられていた。なおLIVE HAUSのキャパシティは150人を想定していたが、これらの工事が進む中で120人に変更された。

2020年1月の取材時点のLIVE HAUS。

2020年1月の取材時点のLIVE HAUS。

スガナミユウ

自身のバンドGORO GOLOでボーカリストを務める傍ら、レコードディレクターやイベントの企画などを行い2014年より東京のライブハウス下北沢THREEに在籍。2016年に店長に就任すると、チケットノルマ制の廃止、入場無料イベントの定期開催など独自運営方針で店を切り盛りしていく。2019年12月末にTHREEを退職。現在は自身が発起人の1人であるライブハウス / クラブ・LIVE HAUSのオープンに向けて準備に勤しんでいる。

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読者の反応

デ ミ さ ん @Takenoco0803

興味深い話ばかり。第1回・2回も是非。

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