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かみじょうちひろ

愛する楽器 第12回 バックナンバー

かみじょうちひろのアクリル変型シェルドラム

音質を捨て見た目にこだわり発光させた

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アーティストがお気に入りの楽器を紹介する本企画。今回は、9mm Parabellum Bulletのかみじょうちひろ(Dr)が昨年手に入れたという“光る球体ドラム”について、その魅力を熱く語ってくれた。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 阪本勇

DIYで仕込んだLED

そもそもこれは一体なんなのかっていうと……なんなんでしょうね、これ(笑)。バスドラ、タム、フロアタムがアクリルでできている変型ドラムで、Molecules Drumという今はもうないアメリカのメーカーの製品です。内部にLEDが仕込んであって……というか私がDIYで仕込んだんですが、ご覧の通り光ります。もともとは光るものとして流通してはいなかったんですけど、当時メーカーのWebサイトを見たらだいたい光ってたんですよね。だからメーカー的には光らせるつもりで作ったんじゃないですか? 球体でクリスタル系という時点で、まあ光ったほうがキレイだろ的な発想ではあったと思いますよ。中二病的な(笑)。

2016年に滝くん(善充 / G)が左腕の不調でライブの活動を一時休養したときに、残りの3人でアコースティック編成のバンドをやることになったんですよ。AC 9mmという名前で。それにあたって、周りがアコースティックギターとかになるのに俺だけいつも通りのツーバスセットじゃ雰囲気が合わないなと思って、じゃあ新調するかと。でも、ただ単にワンバスにして組むだけじゃ面白くないから、何か奇をてらったドラムはないかなと探した結果、行き着いたのがこれです。

ただそのときには生産がとっくに終わっていたし、メーカーがもう存在しなかったんです。ですけど、社長だったロブのFacebookの古い投稿に「俺んとこに3台ぶんだけキットが残ってるから、欲しいドラマーがいたら言ってくれ」と書いているのを見つけたんです。それで英語の堪能な友人にコンタクトを取ってもらったら、「本当はもう作らないつもりだったけど、日本のプロドラマーが言うなら」って、作ってもらえることになったんですね。でも生産していた当時のラインはもう潰しちゃっていたもんだから、球体を作るのが難しくて「別のラインで作ったらクソみてーなもんができちまった。使い物にならないからもう少し待ってくれ」と言われて。それでさらに待ったんですけど、今度は「悪い、自分らでやったらもっとクソになった」みたいな(笑)。結局、ロブが「俺が1セット持ってるから、それを譲るよ」ということになって、ようやく手に入ったんです。

サービス精神で選んだ

ギタリストとかも、音うんぬんの前に見た目でギターを選んだりすると思うんですけど、そのドラム版ですね。高見沢俊彦さん(THE ALFEE)のエンジェルギターなんかと発想は一緒です。9mm本体で使ってるドラムはYAMAHAのフラッグシップモデルで、それは完全に最高の音を追求したものだから、こっちは真逆のベクトルに振り切ろうかなって。音質は度外視で。これ、電源ケーブルを通すために仕方なくヘッドのところに穴を開けてるんですけど、そもそも振動して鳴る楽器に穴を開けている時点で、音は捨ててるってことです(笑)。

デビューして10数年も経っているので、目立ちたいというよりは視覚的に楽しませてあげたい的な、まあサービス精神ですね。一撃で、バカでもわかるくらい派手なものを選んだほうが面白いだろうと。ライブでは最初から光らせるんじゃなくて、後半の曲で盛り上げるときに光るとか、光らせてても最初は青1色とかにしといて最後の曲でストロボにするとか、そんな使い方をしてます。

メンバーの反応は良好でしたよ。ライブ中にアクシデントがあると面白いって感じるような人種が集まっているんです。俺がこれ買うとなったときは「何これ、おもしれーじゃん」っていうリアクションでしたね。大人が本気でふざけたら副産物でお金が付いてきた、みたいな感じが一番面白いと思ってるんですよね。せっかくミュージシャンになったんだし、童心を忘れないようにしたいなって。

ワインとシャム猫が似合う

光の制御は、リモコンでできます。色を変えたり、色が変化する周期を変えたり、点けたり消したりは全部リモコンで、スタッフと協力してます。たまにバグるんですけど、まあ機械のやることですからね。青が好きなんで、基本的には青1色を光らせっぱなしにしていることが多いです。この状態だと意外に落ち着いた印象になるでしょ? バカでかいシーリングライトみたいで、コンテンポラリー感もある。スタイリッシュな夜景の見える部屋なんかにも似合うと思ってるんですよね。このセットに座ってワインをくゆらせたり、シャム猫なでたりするのもいいなあと。半分本気で言ってますからね(笑)。

メタルバンドなんかがよく使うドラムトリガーという機材があるんですけど、叩いた振動を拾って生音では出せない音を鳴らすことができるものなんですね。生ドラムで電子ドラムの音色を使えるというか。その仕組みを使えば、タン、タン、タン、って叩いた楽器だけ1個ずつ色を変えるとかもできるようになると思いますよ。現状のこいつでも周期を自分で変えられるんで、すごいスピードで色を変えたりもできます。ただチカチカするので見た目がクソうるさくなりますけど。こうなってくると、今度はスネアとかシンバルとかも光らせたい気持ちにはなりますね。でもシンバル光らせるのって、どうやったらいいんだろう(笑)。

壊れやすいけど見てほしい

たぶんこれ、日本に10台もないと思います。さっきも言いましたけどメーカーがもうないですし、社長のロブですらもう作れないという状況なので、壊れたらメンテナンスはできないんですよ。アクリルの部分がめちゃくちゃ割れやすいんですけどね。実際、JPC(ジャパン・パーカッション・センター)がこれを取り扱ったときに買おうかと思ってダメ元で電話したことがあるんですけど、「店頭に置いてたら割れちゃって、もう売り物にならなくなりました」って。かと言って、後生大事に持ってるだけじゃ意味がないんで、ライブで使ったり展示に出したりするのは全然怖くないですね。むしろ見てもらえるほうがずっといい。「かわいいだろこれ! 近未来だろ?」って自慢したいじゃないですか。壊れたらそのときはそのときです。形あるものはいつか滅びるんで。

もしこれと同じドラムを欲しがる人がいたとしても、初心者には薦められないですね。ぜんっぜん薦めない。こんな形してるからタムも本来の位置に置けないし、チューニングの方法も特殊すぎて普通のドラムにまったく応用できないし。こんなにストレートな音の出ない楽器を初めから扱ってたら、バカになりますよ(笑)。

かみじょうちひろ

長野県出身。9mm Parabellum Bulletのドラマーを担当するほか、さまざまなアーティストの作品やライブに参加するなどサポートドラマーとしての活動も行う。現在、音楽メディア「Skream!」で「帰ってきた☆かみじょう ちひろのこの木なんの木 発情期☆」を連載している。

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