本作は、葛藤を抱えながら生きる罪なき6人の日常に、香川演じる男がいつの間にか紛れ込む群像劇だ。男は姿、口調、性格や所作までを変えた別人となって彼らの前に現れるが、その異質さに気付く者はいない。やがて6人の人生に“災い”が降りかかる。
監督集団「5月」の
「5月」と香川がタッグを組んだ前作「宮松と山下」は、サン・セバスティアン映画祭において新人監督の登竜門とされるNew Directors部門で上映された。このたび2作連続での正式招待となり、今作はコンペティション部門への出品が実現。香川は「サン・セバスティアンの勇猛果敢さには心底頭が下がる。シーンの順番は滅茶苦茶、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう」と語る。さらに日本での劇場公開に関して「元となったドラマ版をその後でも見ることが出来る我々は、まだ筋の答え合わせをする機会があるだけ恵まれている」と述べつつ、「世界屈指の美食の街サン・セバスティアン。何はともあれ、そこから黒船は出発する。心配である」と心境を伝えた。関、平瀬のコメントは後掲する。
香川照之 コメント
「5月」組の監督たちと初めて組んだ「宮松と山下」も充分に狂った作品だったが、今作「災」は6話連続だった長尺のドラマ版でさえ難解奇妙な物語だったものを、三分の一の尺の2時間の映画に編集し直してさらに混迷を極め、理解不能が大前提のような狂作へとぶっ返り、それを二作連続で自身の映画祭に、しかも今回は猛者たちが群雄割拠するコンペティション部門へ招いたというサン・セバスティアンの勇猛果敢さには心底頭が下がる。シーンの順番は滅茶苦茶、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう。
そして来年、本作は劇場公開されると聞いた。元となったドラマ版をその後でも見ることが出来る我々は、まだ筋の答え合わせをする機会があるだけ恵まれている。
世界屈指の美食の街サン・セバスティアン。何はともあれ、そこから黒船は出発する。心配である。
関友太郎 コメント
ドラマから産声をあげた風変わりな映画が、サン・セバスティアンという世界的な舞台に呼んでもらえたこと、本当に嬉しく思います。8人の男をさも当たり前のように怪演してくださった香川さんをはじめ、「災」の世界を作り上げた俳優・スタッフの全仕事がただただ誇らしいです。映画愛が溢れかえっているあの街で、この得体の知れぬ作品がどう受け止められるのか...。緊張と興奮が渦巻いたまま上映当日を迎えることになりそうです。
平瀬謙太朗 コメント
意味もなく、前触れもなく、慈悲もなく、悪意すらなく私たちの人生を壊すものを、人は「災い」と呼びました。それは、恐ろしいほど乱暴な現象にも関わらず、いざ相対するまで、一体、どこに潜んでいるのか感じ取ることすらできません。その“目に見えぬ恐怖”を“今までにない形”で描こうと試み、この「災」という作品が生まれました。
“今までにない形”ということを大切にしたので、結果、ドラマと映画、それぞれまったく違う作品になりました。映画「災」は、映画にしかできない形で、観る人の胸中に“目に見えぬ恐怖”を静かに呼び起こします。
この試みが世界に届いたことを嬉しく思うのと同時に、世界中から集まった映画を愛する観客が、この映画から何を受け取り、何を感じるのか、すこしだけ緊張しています。
そして、まずは世界に問うことになりましたが、2026年にはこの“恐怖”と“形”を皆様にもお届けします。
tAk @mifu75
香川照之の「災」劇場版が2026年公開、サン・セバスティアン映画祭のコンペ部門に出品(コメントあり) https://t.co/jZRpQ7mnZx