映画「
インディーゲームクリエイター・KOTAKE CREATEが2023年に発表したゲームをもとにした本作。地下鉄の改札を出た白い地下通路を舞台に、そこに閉じ込められた主人公が次々と現れる不可解な“異変”を見つけ、絶望的にループする無限回廊からの脱出を試みるさまが描かれる。
川村は2023年に原作のゲームと出会ったそうで「白くてプレーンな空間に一目惚れして、すぐに映画にしたいと思ったんですが、いろいろな人に『どうやるの?』と不思議な顔をされました(笑)」と述懐。2022年公開の監督作「
さらに川村は、ゲーム「8番出口」に物語が設けられていないことに触れ「異変があったら引き返し、何もなければ前に進むという2択がループしていきます。自分は小説を書いてきた経験もあるので、設定に対してオリジナルな物語を作ることができるのではと。自分の得意技を詰め込んで、もう1回リベンジしたいと思って作ったのがこの映画なんです」と製作経緯を伝えた。
そういった川村の思いを、脚本として具現化していったのが平瀬。彼は「同じ空間をぐるぐる回るので、まずは『飽きないように見せるには』がテーマ」と前置きし、「ハードルは高かったですが、作り始めると面白くて、こんな経験はできないなと。現場に入っても脚本を直すし、撮影が終わったあとの編集時にも物語を修正し続ける。同じ場所をループする設定だからこそ、ブロックのようにシーンを組み替えることができました」と充実感をのぞかせる。川村は平瀬らと2018年に短編「どちらを」を製作したと明かし、「そのときにやっていたのは、“映画の作り方を発明して映画そのものをリニューアルしていく”という試みでした。その魂を『8番出口』にも引き継いだ部分があります」と打ち明けた。
二宮は主演のみならず“脚本協力”としても参加した。平瀬は彼と何度も脚本の打ち合わせを重ねたと話し、「通常、俳優さんたちは完成後の試写にのみ来場されるんですが、二宮さんは途中の試写にも来てくれて意見交換をしたり、かなり制作に関わってくださった印象があります」と回想。二宮は自らを「テストプレイヤー」と表現していたそうで、川村は彼に感謝しつつ「自分が編集したものを平瀬くんとニノと観て、『うまくいってないね』となったら夜に脚本を書き直して朝に再度打ち合わせし、リテイクする。ひたすら二宮くんをゲームの“デモプレイヤー”みたいに使い、正解を見出すような作り方をしていました」と思い返した。
続けて、本作が出品された第78回カンヌ国際映画祭の話題に。平瀬が現地の観客から「チャレンジングでいいね」と評価を受けたと言うと、川村は「フランスのメディアから取材を受けましたが、映画内に作っていた仕掛けに対して『この空間は……』と、説明をせずともいろいろなレイヤーでこの映画を解釈してくれたんです」と笑顔に。続けて「『ループしていて面白い』『あのおじさん怖い』などポップなレイヤーで観る人と、ものすごく深読みをする人の両方が映画館に共存していた。その空間を作ることが目標だったので、達成感がありました」とも語った。
最後に川村は、中田ヤスタカが手がけた音楽をポイントに掲げ「“キーンコーン”という、皆さんが耳にタコができるほど聞いた地下鉄のジングルが鳴るんです。だから観客が映画館を出て電車に乗るときにあの音楽を再び聴くことで、現実と映画の境界があいまいになる。『まだ映画が続いているんじゃないのか?』というこの奇妙な体験は、TikTokやNetflixでは得られない“映画館ならでは”なことだと思います」とアピールした。
「8番出口」は、8月29日より全国でロードショー。
映画「8番出口」予告編
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「二宮は自らを『テストプレイヤー』と表現していた」「自分が編集したものを平瀬くんとニノと観て『うまくいってないね』となったら夜に脚本を書き直して朝に再度打ち合わせし、リテイクする」「二宮くんをゲームの“デモプレイヤー”みたいに使い、正解を見出すような作り方をしていました」#8番出口 https://t.co/fvNMNmVRGt