「あんまと泥棒」に市川中車「今回初めて試される」、尾上松緑のおちゃめなエピソードも

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「七月大歌舞伎」に出演する市川中車の取材会が、本日6月8日に東京都内で行われた。

市川中車

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中車は「七月大歌舞伎」第1部で、「あんまと泥棒」「蜘蛛の絲宿直噺」の2演目に出演。「あんまと泥棒」では2018年の「十二月大歌舞伎」に続き、中車があんま秀の市役、尾上松緑が泥棒権太郎役を勤める。

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中車は前回の「あんまと泥棒」を振り返り、秀の市が湯のみに入ったお酒を吹き出す場面での裏話を披露。「今年はコロナ対策で演出が変わりますが、前回までは本当に水が入っていたんです。でも千秋楽だけ松緑さんのイタズラで、湯のみにビールが入っていて。飲んだ瞬間『……ビールじゃね!?』と(笑)。舞台上でお酒を飲むと、普段より酔うのが7倍くらい早い気がします」と松緑のおちゃめなエピソードを明かし、記者たちの笑いを誘った。

中車は松緑の印象について「もちろん厳しさもあると思いますが、僕からするとすごく良い人!という感じ」と話し、「この作品では約45分間ずっと目を閉じていて耳に頼るしかないので、聴覚の感度が高くなる。もう1度秀の市として、松緑さんが内面に持つ人の良さや“心の息遣い”を感じられたらと思います」と抱負を述べた。

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自身の「あんまと泥棒」出演映像を観返して「課題を感じた」と言う中車は、初めて観た「あんまと泥棒」での中村嘉葎雄の演技に触れながら「あまり笑いに持って行こうとせず、作品の面白みを素直に出せたら。嘉葎雄さんの秀の市をお手本に、リアルな動きを勉強し直して臨みたい」と目標を掲げる。また「2016年にこんぴら歌舞伎で上演したときは、コンパクトな会場で何をやっても笑ってくださる雰囲気でした。2018年の歌舞伎座では張り詰めた『壇浦兜軍記 阿古屋』のあとで、僕たちの『あんまと泥棒』が笑いのパートをすべて背負っているような感じで……下駄を履かされていましたね(笑)。歌舞伎座でこの作品をどのように届けられるか、今回初めて試されると思います」と言葉に力を込めた。

市川猿之助が女郎蜘蛛の精を演じる「蜘蛛の絲宿直噺」で中車は、渡辺綱を初役で勤める。これについて中車は「四代目(猿之助)とは今年『猿翁十種の内 小鍛冶』でもご一緒し、その流れで声をかけていただいたのかなと。ほかの四天王を演じる方々は、みんなお若い。一門のお弟子さんに比べると僕は飛び抜けて年長です。四代目の息遣いを感じながら、この演目に挑みたい」と意気込んだ。

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2012年、46歳のときに歌舞伎界に足を踏み入れた中車は、歌舞伎の面白さを問われると「個人的には、生きている実感があること」と答え、歌舞伎の初舞台となった「小栗栖の長兵衛」での経験を語る。中車は「す巻きにされて、仰向けのまま10分くらい倒れている場面があって。すると『長兵衛』のあとは口上だったので、舞台の幕の上に曽祖父と祖父の写真が用意されているのが見えたんです。2人の写真を眺めながら生まれて初めて、芝居をしているときに『生きている』と思った」と感慨深げな表情を浮かべる。続けて「『映像作品のほうが形に残る』と言う人は多い。でも僕は、形に残らないはずの舞台のほうがのちのちに残っていく気がする。それは僕の中に、歌舞伎俳優の血が流れているということなのかなと思います」と思いを述べ、取材会を締めくくった。

「七月大歌舞伎」の第1部と第2部は7月4日から29日まで、第3部は4日から16日まで東京・歌舞伎座にて。なお第2部では「新古演劇十種の内 身替座禅」「御存 鈴ヶ森」、第3部では「通し狂言 雷神不動北山櫻」が上演される。チケット販売は6月14日10:00にスタート。

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「七月大歌舞伎」

第1部・第2部

2021年7月4日(日)~29日(木)
東京都 歌舞伎座

第3部

2021年7月4日(日)~16日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「あんまと泥棒」

作・演出:村上元三
演出:石川耕士

出演
あんま秀の市:市川中車
泥棒権太郎:尾上松緑

二、「蜘蛛の絲宿直噺」

出演
女童熨斗美、小姓澤瀉、番新八重里、太鼓持彦平、傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精:市川猿之助

平井保昌:尾上松緑
坂田金時:坂東亀蔵
碓井貞光:中村福之助
卜部季武:市川弘太郎
金時女房八重菊:市川笑三郎
貞光女房桐の谷:市川笑也
渡辺綱:市川中車
源頼光:中村梅玉

※澤瀉の「瀉」のつくりは、わかんむりが正式表記。

第2部

一、「新古演劇十種の内 身替座禅」

作:岡村柿紅

出演
山蔭右京:松本白鸚
侍女千枝:中村米吉
侍女小枝:中村莟玉
太郎冠者:中村橋之助
奥方玉の井:中村芝翫

二、「御存 鈴ヶ森」

作:四世鶴屋南北

出演
幡随院長兵衛:中村錦之助
東海の勘蔵:河原崎権十郎
飛脚早助:中村吉之丞
北海の熊六:坂東彦三郎
白井権八:尾上菊之助

第3部

「通し狂言 雷神不動北山櫻」

作:安田蛙文、中田万助
演出:奈河彰輔
演出・振付:藤間勘十郎

出演
鳴神上人、粂寺弾正、早雲王子、安倍清行、不動明王:市川海老蔵

雲の絶間姫:中村児太郎
八剣玄蕃:市川右團次
腰元巻絹:中村雀右衛門

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読者の反応

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香川照之(市川中車)の言葉/他 @KotobaTeruyuki

中車】初舞台『小栗栖の長兵衛』>す巻きにされて仰向けのまま10分くらい倒れている場面[略]舞台の幕の上に曽祖父と祖父の写真が用意されているのが見えたんです。2人の写真を眺めながら生まれて初めて、芝居をしているときに『生きている』と思った
★2021七月大歌舞伎会見 https://t.co/kEOndilIAc

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