舞台は恐山。イタコ見習いの皆来(みならい)アタイのもとに、小さな箱を抱えた男・monoと、彼より年配の男・楽(たの)がやって来る。彼らは話の途中で、シェイクスピア四大悲劇のセリフを語り始め……。NODA・MAP初参加の高橋は、舞台を縦横無尽に駆け回りながら、影の中に静かな炎をたたえたmonoを、舞台に刻みつけるように演じる。アブラハムの川平と三日坊主の伊原は、軽妙な掛け合いで観客の心を鷲づかみにしつつ、作品に心地良いスピードをもたらす。星の王子様 / 伝説のイタコ / 白い烏の前田は、よく通る声を響かせて3役を巧みに演じ分けた。愛嬌と色っぽさで作品に柔らかみを与えるのは、オタコ姐さんと烏女王役の村岡希美。白石はさすがの存在感でアタイ役を怪演し、物語を力強く牽引した。登場するたび笑いを巻き起こし、物語をかき回すのはシェイクスピアとフェイクスピア役の野田。さらに楽役の橋爪は、軽妙なやり取りから重厚なセリフ回しまで多彩に演じて演技の幅を見せながら、monoとは対照的な温かな炎を内にたぎらせていた。
開幕に際し高橋は、「カーテンコールでたくさんの拍手をいただいて、白石加代子さん、橋爪功さんと手を繋いだ瞬間、温かかったんです。人と人との繋がりの素敵さを改めて実感した気がします」と実感を述べつつ、「ぜひ劇場で、この夢がまた夢に繋がっていくような複層的な不思議な世界を体感していただけたら。できることなら、僕も客席で観たいくらいです。劇場で初めて共有するという本来の楽しみ方で、味わっていただけたらと思います」とコメント。野田は「稽古初日に『演劇の底力を見せてみたい』と言ったんですが、それに近いことがやれたのかなと感じることができました。たぶん、あまり観たことのない芝居だと思うので、SNSの感想をチェックしたりしないで、なるべく無で観てください。できれば、シェイクスピアすら知らずに観に来て欲しい(笑)。演劇の観客は、第三者ではなく当事者です。劇場でお待ちしています」と来場を呼びかけた。
公演は7月11日まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、15日から25日まで大阪・新歌舞伎座にて。上演時間は休憩なしの約2時間5分の予定。
高橋一生コメント
劇場で稽古できる期間が結構しっかりあったこともあって、稽古でやってきたものをブレずにそのまま出すことができたかなと思います。カーテンコールでたくさんの拍手をいただいて、白石加代子さん、橋爪功さんと手を繋いだ瞬間、温かかったんです。人と人との繋がりの素敵さを改めて実感した気がします。劇場でみんなで分かち合うその一体感も、肉体があってこそ。仮想の世界では味わえないものだと思います。ぜひ劇場で、この夢がまた夢に繋がっていくような複層的な不思議な世界を体感していただけたら。できることなら、僕も客席で観たいくらいです。劇場で初めて共有するという本来の楽しみ方で、味わっていただけたらと思います。
野田秀樹コメント
ほっとしたというのが、初日を終えたいちばんの感想です。久しぶりにストーリーを捨て置いたようなところがあるこの芝居がどう受け入れられるのか、いつも以上に全く見当がつかなかったので。お客さんの集中力がどんどん高まっていくのがわかって、非常に嬉しかったですね。一生をはじめ、みんなよくやってくれたので、とても感謝しています。稽古初日に「演劇の底力を見せてみたい」と言ったんですが、それに近いことがやれたのかなと感じることができました。 たぶん、あまり観たことのない芝居だと思うので、SNS の感想をチェックしたりしないで、なるべく無で観てください。できれば、シェイクスピアすら知らずに観に来て欲しい(笑)。演劇の観客は、第三者ではなく当事者です。劇場でお待ちしています。
NODA・MAP 第24回公演「フェイクスピア」
2021年5月24日(月)~7月11日(日)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
2021年7月15日(木)~25日(日)
大阪府 新歌舞伎座
作・演出:
出演:
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